05

 この世の真実を知った俺は、完全にやる気をなくしていた。

 はあ……つまり努力をしても結局、女には勝てない。一生女の尻に敷かれた生活をするのか。


 心のどこかで、そんな生活もいいかと思いつつ。あんな暴力女の尻に敷かれるなんて我慢できないと思いもある。

 ふと、前世の最期を思い出す。


(でももし、女が強い世の中であんな暴力女と結婚したら、前世よりひどい死に方をするんじゃないか……)


 前世のトラウマが蘇る。前世の嫁は別に暴力的ではなかったけど、最後は包丁を取り出して俺を刺してきた。

 今世では母が、剣を持って外に行くのをみたことがある。もしその剣がこちらに向けられたとき、俺は対処できるのか。


 いや、できない。少なくとも今の思い通りに動かない体じゃあ論外だ。


「父さん! この世界の女性の平均レベルってどれくらいなの?」


「ん、難しい質問だね」


 うーん、と少し考える父。


「魔力量の平均は一般人で20~30くらいかな。魔力操作レベルが中央の7だとしたら、大体140~210レベルくらいかな」


「200……」


 つまり俺は魔力量を40レベルくらいまで上げれば、なんとか一般レベルの女性より強くなれるのか……果てしなく遠いな。


「ああでもこれは、あくまで戦闘をメインにする仕事をしてる一般人だから、それ以外の仕事をしている人は10~20くらいだよ」


 それだと大体70レベルくらいか、100レベルになるには魔力量は25あればいい。これくらいなら頑張れるかもしれない。


 決めた! 俺は強くなって、か弱い女の子と結婚をする!


「父さん! 俺を鍛えて欲しい!」


「……そうか、シューベルトもその道をいくのか」

 

 あれ、なんか重い雰囲気だ。ここで自分より弱い女の子と結婚するためなんて言ったら怒られそうな雰囲気だ。


「それはとても茨の道だよ。誰しも夢見て、誰しもが諦める。シューベルトはそれを耐えられるかい」


「う、うん」


「分かった。じゃあ僕も心を鬼にして君を育てるよ」


 まあ、挑戦するだけしてみよう。

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