姪と甥

「この方が、伯父様?」


セレーネの記憶の中にある伯父はとても綺麗な人だった。



まさに本の中から飛び出したとしか思えなかった。

かっこいい王子様で、正直父のティタンとは比べ物にならないくらいの美形。


綺麗な髪に、かっこいい顔。


動作も優雅で、セレーネにもいつも優しくしてくれた。


憧れを持っていた。


伯母のレナンと相まって美男美女の理想の夫婦の姿であった。





そんな記憶の中の伯父とは違い、目の前にいるのは自分と同じ年頃の少年だ。



見目麗しい金髪と翠眼にあの頃の面影はあるが、話に聞いて、実際に会ってみても信じられない気持ちだ。


「驚かせてしまってすまない。セレーネと会うのは久しぶりだ、大きくなったね」

優しい微笑みにドキリとする。


自分の周りの少年とはまるで違う。

見た目こそ幼いが、大人の余裕が感じられた。



「伯父様は変わりありませんね、優しくて綺麗なままです」

少し顔を赤くし、セレーネが小さな声でそう云う。


伯父と呼ぶのもすごく違和感を感じた。


「セレーネはとても可愛くなったよ。泣いてティタンに肩車してもらってた頃が懐かしいね」


昔の思い出まで出されて、ますますセレーネは顔が赤くなった。


「そ、そんなの凄く小さい時の話しじゃないですか!今はお母様より大きくなりましたもの」


背丈で言えばセレーネはミューズを越えている。

薄紫の髪はティタン譲りで、金の瞳はミューズ譲りだ。

顔立ちもミューズに似て可愛らしい。


「もう、私の話はしなくていいのです!ほら、ヘリオスも挨拶して!」


唐突に引っ張り出されたのはティタンの息子だ。


「あの、初めまして。ヘリオスです」

薄紫の髪と、黄緑の目をした男の子だ。


背丈は多分同年代の子よりも高いだろう。

年下のはずなのにエリックと同じくらいだ。


こちらもミューズに似ていて可愛らしい顔立ちをしている。


「ヘリオスか。これからよろしくな」

「よろしくお願いします」

姪と甥の戸惑いは仕方ない。


それよりも会えて良かった。


これから皆の成長を見ていければいいのだと、未来への希望に胸が躍る。






やがて夜も更け、就寝することとなった。


少しだけミューズへの通信石を通してレナンの声が聞けた。

会いたい気持ちが高鳴り、眠れないかもしれない。


レナンの声は記憶通り、きれいな声をしていた。


若干涙声だったので

早く顔を見せて安心させたい。

会うことに不安を感じていたのがウソみたいに、今は会う事しか考えられない。


エリックは早々にベッドに入る。



明日にはレナンに会えるのだ。

寝れないかもしれないが、寝なくてはならない。

そうでなければ時間の進みがゆっくり過ぎて、ここを飛び出してしまうかもしれないからだ。

無理やり体を抑え、目を閉じる。

「会いに行くよ…」


レナンを想い、会えなかった時を埋めるため、たくさん愛を伝えようと眠りについた。



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