花束

花束


「いつも、支えてくれてありがとう」


 そう言って、今日で結婚して三年目になる夫から渡された赤薔薇の花束。綺麗に包装紙で包まれている。結び目にピンクのリボンが施されていた。


「わぁ……とっても素敵ね」


 私はそれを喜んで受け取った。真っ赤な花びらに顔を近づけると花粉の匂いと、蜜の香りが鼻に通る。ちらりと見やると、夫は緊張してるのか顔が真っ赤になっている。


 赤い薔薇みたいね。私の顔もほんのり熱くなった。


「私たち、これからもずっと一緒よ」

「あぁ……。そう、だな」


 夫はぎこちなさそうに歯に噛む。夫は控えめな性格でどちらかと言えば慎重的。だが、このような情熱なサプライズをされるとは思っても居なかった。


「な、なんか照れるよ。そんなに嬉しそうにされると」

「そうかしら? ふふ」


 私が微笑むと、夫の唇もつられて弧を描く。


 いつも働き詰めで、夜中に帰ってくる夫。家に帰ってくるととても疲れたような顔をしている。

 気にしないで。と言われるも、体が火照り、額に汗もかいている。

 夫の首に傷ができていた時は、流石に心配になったが夫は平気と言うばかり。


 サラリーマンってとても大変なのね。私はパートだからそこまでではないけれど。家事もあるからね。


 そんなこと思っていると、夫の携帯が鳴り出す。夫は電話の相手の名前を見て目を見開かせていた。


「職場の人?」

「最近入ってきた女性社員だよ。僕、その人の補佐役になったんだ。結構大変なんだよね」

「そうなのね。なら、行った方が良いんじゃないかしら? きっと助かるわよ」

「なら、行こうかな。その方が仕事もマシになるだろうし」


 夫は電話を軽く済ませ再び、仕事に行く準備を始めた。時刻は夜の七時。やっぱり、サラリーマンの人って大変なのね。その女性社員の方も忙しそう。


「じゃあ、行ってくるよ。きっと深夜になるだろうから先寝てて」

「分かったわ。行ってらっしゃい」


 夫が行った後、私は貰った花束を真新しい花瓶に移した。


「ふふ。素敵ね。私は幸せ者ね」


 綺麗な花瓶には、夫から貰った十五本の赤薔薇が凛と差し込まれていた。

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