クラスの中でハーレムを作っていたイケメンな俺様が馬糞に転生した女神の悪戯は、俺の事が好きだって言う証拠だろ!?

和扇

俺様、異世界に華麗に降☆臨!!

「私立バンフクーセ学園の眉目秀麗びもくしゅうれい絢爛豪華けんらんごうか

 八面玲瓏はちめんれいろう美男子イケメンとは俺様の事だ。」


「クラス中の女子からは結婚を前提にお付き合いを申し込まれ、

 学園中の話題にはいつも俺様がのぼる、いわゆる超☆絶人気者だ」


「だが、あの日...俺様は死んだ。」


「寂れた夜道を華麗に彩る様は、まさに掃き溜めに鶴、だった。

 だからこそ目立ってしまった。

 どすっ、という鈍い音と、右わき腹の痛み、流れ出る深紅の美しい俺様の血。」


「刺したのは俺様の17番目のフィアンセだった。

 許さない、とか言っていた気がする。」


「・・・俺様が美しすぎて、他のフィアンセに取られてしまうと思って、

 独り占めしたかったんだろう...。なんて可哀そうな子猫ちゃんだ。」


「だが、俺様は彼女を抱きしめる事はもうできなかった。

 意識が遠のいた。」


「はっ、と気が付いたら真っ白な空間にハイパー美女が目の前に!

 まさに女神、長い金髪も俺様の次くらいに美しい。」


「話を聞くと、俺様は死んだから別の世界、異世界に転生させるらしい。

 なるほど。」


「俺様に一目でも会いたい、と思って、この女神はここに俺様を呼んだのか。

 なんて健気で、なんていじらしい子猫ちゃんだ。」


「いや、そんな訳ないでしょうが。

 お前が死んだのは当然だけど、ちょうど異世界側でリソース不足になったから

 同じタイミングで死んだお前が便利だから当てはめるだけですよ。」


「照れ隠しでこんなことを言っていたと思う。

 これがいわゆるツ・ン・デ・レというやつか。

 今までのフィアンセにいなかったタイプで新鮮だ。」


「さて、俺様は異世界に転生したわけだ。」


「ん?何だか目線が低いな。すぐ目の前に土の地面が見える。」


「ああ、そうか。赤ちゃんだからか。」


「んん?体が動かないぞ。ああ!スライムとかか。

 なんかクラスのモテナイーズが読んでたライトノベル?ってやつで

 そんなのがあったな。スライムなら跳ねる事が出来るはずだ。」


「くっ、ダメだ。全く動けない。

 ・・・待てよ、確か異世界転生にはチートスキルがあるはずだ。

 ふふふ、そうか、女神子猫ちゃんは俺様にスキルの使い方を知らせるために

 こんな事を居たのか。なんて親切な子猫ちゃんだ。」


「――――スキル発動!!!!」


「お、おお?視界が切り替わったぞ!

 ん?目の前にある茶色いのは何だ・・・。」


「ぐわっ、これは馬糞ばふんじゃないか!!

 俺様の愛馬シュピーゲル号の落とし物とは違う、何とも汚らしい姿だ。」


「こんなものを俺様の視界に入れる事になるとは・・・。

 まだまだスキルがうまく使えていないという事か。」


「お、視点を動かせるぞ。ちょっと遠くへ...ぐ、これ以上は無理か。

 視点を回すことも出来るんだな。ぐるぐる。」


「なんで常に視界の真ん中に馬糞ばふんがあるんだ。

 くそ、こんなにスキルの使い方が難しいとは。

 仕方ない、一回スキルを止めよう。」


「――――スキル停止!!!!」


「ふう、なかなか疲れるものだな。・・・ん?」


「――――スキル発動!!!!」


「――――スキル停止!!!!」


「んんん?」


「――――スキル発動!!!!」


「――――スキル停止!!!!」


「な・・・、な・・・・、な・・・・、な・・・・・、

 なんだとッッ、俺様が....この俺様が....馬糞になっている・・・だとッ・・・!」


「あ、あり得ない。

 神ですらうらやむこの美男子イケメンである、この俺様が!!」


「ぐ・・・、これは何かの間違いに違いない。

 女神子猫ちゃんはなんてドジっ子なんだ。

 ツンデレドジっ子なんて、なかなか可愛いじゃないか。」


「むむ、だが、このままでは何もできないぞ。

 できる事は360度馬糞ビューだけだ。」


「はっ、そうだ。女神子猫ちゃんに呼びかければ答えてくれるかもしれない。

 俺様からの連絡なら何よりも早く応える事は間違いない!

 やり方は分からないが、頭の中で呼びかけてみよう。」


(女神子猫ちゃん・・・キミのフィアンセ、世界最高いや全次元最高の美男子イケメン

 だれよりもキミの事を思っている俺様がキミに呼びかけている・・・。

 どうか、この愛のメッセージに応えてくれ・・・。)


(女神子猫ちゃん・・・キミの麗しい瞳に俺様のハートは射貫かれた。

 一目会ったあの時から、俺様のガラスの様に繊細なハートはキミに首ったけさ。

 キミの流れるような金の髪の毛はまるで黄金の様だった。

 控えめだけど綺麗な胸の中の可憐なハートの高鳴りは俺様にも響いていたよ。

 さあ、俺様の胸に飛び込んでおいで――――)


「いや、うるさい。あと誰の胸が控えめだ。」


「おお、女神子猫ちゃん。俺様に会えずに寂しかっただろう。

 さあ俺様の胸の中に飛び込んでおいで。」


「なんで馬のくそに飛び込まないといけないのです。

 変な妄想はやめろです。」


「あ!そうだった。女神子猫ちゃんはドジっ子だな。だがそんな所も可愛いぞ。

 さあ、こんな汚らしい馬糞ばふん姿は俺様にはふさわしくない。

 正しい転生先に転生し直しておくれ。」


「いや、それで合ってるです。」


「は?」


「だから、お前の転生先は馬のくそです。」


「んん?よく聞こえなかったな。もう一度聞いてもいいかい?子猫ちゃん。」


「お前の転生先は馬のくそです。」


「いやいやいやいや、転生って生あるものに転ずるって書くんだが。

 馬糞ばふんって生ある!?」


「お前の転生先は馬のくそです。」


「あの、リソース足りないって言ってませんでした?

 馬糞ばふんのリソースって何!?」


「その馬のくそはリソース不足で馬から排泄されなかったのです。

 馬が苦しそうで大変だったので、ちょうど死んだお前を当てはめたのです。

 重要なリソース管理なのです。」


「えぇ、神様って馬の腸内環境まで管理してるのかい・・・?

 はっ、そうか!」


「くだらない事を思いついた様子ですね。」


「ふふふ、子猫ちゃん、俺様には分かってしまったよ、キミの狙いが。」


「馬のくそにした狙いがあると。」


「俺様には、隠された大切な使命があるんだね!!!」


「馬のくそに使命なんてあるわけないです。

 文字通り、くその役にも立たないです。」


「な、なら、レベルアップして進化することで強力な存在にパワーアップ・・・。」


「馬のくそがレベルアップしてどうなるんです。

 でっかい馬のくそにでもなるつもりですか。」


「じゃ、じゃあ、この後、某国のお姫様に拾われて優雅な宮廷生活を・・・。」


「馬のくそ拾う姫様、だいぶ頭イカれてるですね。

 くそが宮廷生活って、宮廷をえた臭いで満たすつもりですか。」


「・・・なんで馬糞ばふんにしたの・・・?」


「理由なんてあると思うです?」


「いや、理由なしに馬糞ばふんにするって、転生テロじゃない?」


「強いて言うなら、お前がくそ人間だったからですかね。」


「いやいやいや、世界の至宝とまで言われた俺様がそんな訳ないじゃないか!」


「言われてないですから。お前、だいぶいろんな人に嫌われてたですよ。」


「そんなバカな!」


「バカはお前です。」


「こんなあり得ない事があってたまるか!」


「あり得ないバカだからこんな事になっているです。」


「嘘だと言ってよ!子猫ちゃん!!」


「嘘偽りのなく、お前は馬のくそです。」


「チックショーーーーーーー!!!!!」


「やったー。(棒)」


「うわーーーーーん!!!!」


「うわーーーい。(棒)」


「・・・これからどうすればいいの?」


「どうにもしなくていいです。」


「いや、何かあるでしょ。」


「ないです。」


「何か―――」


「ないです。」


「チックショーーーーーーー!!!!!」


「やったー。(棒)」


「・・・・・・・ねえ。」


「なんです?」


「これ、どうやったら終わるの?」


「さあ。」


「さあ?」


「私も知らないです。転生したらそこから先はそいつの自由です。」


「いや、自由無いんだけど!!??」


「自由です。何しても良いですよ?」


「いや、動けないから!出来るの360度馬糞ばふんビューだけだよ!?」


「馬のくそめ回すように堪能すればいいです。」


馬糞ばふんを嘗め回すとか言わないで!なんかイヤ!!」


「うるさい馬のくそですね・・・。」


馬糞ばふんにうるさいもクソもないでしょ・・・。」


「あははー。(棒)

 おもしろいギャグですね。」


「いや、馬糞ばふんとクソかけたわけじゃないよ!?」


「何がしたいのです。」


「いや、だからちゃんとした転生を―――」


「転生先ないです。」


「チックショーーーーーーー!!!!!」


「やったー。(棒)」


「どうすればいいの?」


「どうするもこうするも、お前は馬のくそです。

 何か出来ると思っているですか?」


「た、例えば、雨に流されたら終了とか、拾われて肥料になったら終了とか!」


「さあ?どうなるのか分かんないですね。」


「うう・・・何で俺様がこんな目に・・・。」


「だからお前がくそ人間だからです。」


「はっ、そうだ!俺様のフィアンセたちはどうしているんだ!

 俺様が居なくなったことでとても寂しい思いをさせているに違いない!」


「お前のクラスメイト達はお前が居なくなってハッピーになっているですよ?

 A子は幼馴染と付き合い始めましたし、B子は同じクラスの奴と良い感じです。」


「そ・・・そんなバカな・・・。」


「だからバカはお前です。

 あ、一人だけお前が死んだことを悲しんでいる奴が居たです。」


「お、おお!!やはり俺様は世界に必要な――――」


「N美って奴です。」


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ーーーーーーー!!!!!!!

 やめろ、その名前を出すんじゃない!!!!!!!!!」


「うるせぇです。」


「奴は悪魔の化身だ。 常に俺様を追跡し、常に俺様を監視し、

 フィアンセ達との甘美な時間を邪魔してきた!」


「良かったじゃないですか。少なくとも一人は悲しんでくれる人がいて。」


「あれは人じゃない。」


「めちゃくちゃ言うですね。」


「ん?一人?俺様の家族は?」


「お前が居なくなって清々せいせいしてるですよ。」


「俺様の愛するマイシスターは!?」


「遺影に唾吐つばはいてたですよ。」


「マイシスター、俺様嫌い過ぎじゃない!!??」


「お前みたいな兄、嫌に決まっているです。」


「う、嘘だろ・・・。」


「正真正銘本当です。」


「チックショーーーーーーー!!!!!」


「やったー。(棒)」


「ううう、どうすれば・・・。」


「受け入れるです。そうすれば楽になるです。」


「嫌だ!馬糞ばふんで楽になるなんて嫌だ!!」


「まったく贅沢な馬のくそですね。」


「嫌だ!嫌だ!嫌だ!馬糞ばふんで満足なんてしたくない!!」


「ちょっとは静かにするです、ノイジー馬のくそ。」


「サイレント馬糞ばふんはただの馬糞ばふんだよ!!」


「あははー。(微笑) 面白い事言うですね。」


「今笑ったな。」


「馬のくそに笑わされるとは屈辱です。」


「まあ、こうして話し相手が居ればちょっとはマシかな。」


「ん、なに気持ち悪い事を言っているです。」


「本心だよ。キミが居てくれてよかった。」


「・・・調子狂うですね。」


「だから・・・・お願いだ!もう一回転生させて!!!」


「やっぱりですか、このクソ馬のくそ!」


「なんか、罵倒されると変な感じがする。」


「めちゃめちゃ気持ち悪いですね。」


「ああ、なんか良い・・・。」


「ふざけんなです。」


「冗談はこの辺にして、真面目にできる事は視点変更だけなのかい?」


「逆にそれ以外何がしたいのです。」


「いや、周りの人間と念話出来るスキルとか。」


「いきなり馬のくそに話しかけられる通行人は運値うんちがだいぶ低いですね。」


「俺様が一番運値うんち低いよ!!」


「馬のくそですから、糞値うんち高いと思うですよ。」


「えっ・・・いや!?今の運値うんち、絶対違う字でしょ!!」


「バレたです。」


「ううう、こんな事許されるはずがない。

 絶対にもっとエライ神様が助けてくれるはずだ・・・。」


「最高神です。」


「・・・だれが?」


「私です。」


「うそ。」


「ほんと。」


「・・・。」


「・・・。」


「チックショーーーーーーー!!!!!」


「やったー。(棒)」


「はあはあ、もうヤダ・・・。」


「馬のくそが泣いてるです。」


「泣きたくもなるよ、こんな仕打ち・・・。」


「ところで、ずっと絵面が変わらないの、退屈です。」


「誰のせいだよ!」


「お前のせいです。」


「そんなわけあるか!!」


「そうなんだからしょうがないです。」


「うわーーーーーん!!!!」


「うわーーーい。(棒)」


「はあぁぁぁぁ。」


「臭いからやめろです、くそ。」


「ため息すら許されない立場!」


「最底辺ですからね。」


「ぐぐ・・・。

 そうか・・・、俺様に見下されていた奴らはこんな気持ちだったんだな。」


「何ですか、急に。」


「俺様はそういう奴らの事を全く理解していなかった。

 だからこんな事になっているんだな。」


「まあ、そうですが。急に悟りを開くのやめろです。」


「俺様はやっとわかったんだ、持たざる者の悲しみを。」


「ちゃんと理解してるかは怪しい発言ですね。」


「ああ、俺様は悔い改めねばならない。彼らに謝りたい。」


「妙に殊勝しゅしょうですね。」


「なあ、女神様。彼らに伝えてくれないか、俺様の謝罪の言葉を。」


「まあ、それ位なら良いですよ。」


「ありがとう。じゃあ。

 俺様は君たちの事を理解していなかった。

 本当に申し訳なかった。俺様はやっと理解した。

 持たざる者のかなしm――――」


「あ。」


「」


「馬に踏み潰されたです。」


「」


「おーい。聞こえるですかー?」


「」


「あー終わったですかね。」




「はっ、俺様は何を・・・。

 そうか、今までのは悪い夢だったんだな。

 それもそうか、俺様が馬糞ばふんになるなんてありえないよな。」


「ん?何だか目線が低いな。すぐ目の前に土の地面が見える。」


「ああ、そうか。赤ちゃんだからか。」


「んん?体が動かないぞ。ああ!スライムとかか。

 なんかクラスのモテナイーズが読んでたライトノベル?ってやつで

 そんなのがあったな。スライムなら跳ねる事が出来るはずだ。」


「くっ、ダメだ。全く動けない。

 ・・・待てよ、確か異世界転生にはチートスキルがあるはずだ。

 ふふふ、そうか、女神子猫ちゃんは俺様にスキルの使い方を知らせるために

 こんな事を居たのか。なんて親切な子猫ちゃんだ。」


「――――スキル発動!!!!」


「お、おお?視界が切り替わったぞ!

 ん?目の前にある茶色いのは何だ・・・。」


「ぐわっ、これは馬糞ばふんじゃないか!!

 え・・・馬糞ばふん?」


「お、ここにいたですか。」


「女神ちゃん!!」


「呼び方がコロコロ変わるですね。」


「何でまた馬糞ばふんなの!!」


「ちょうど馬のくそのリソースが足りなかったので。

 くそベテランのお前が適任と思ったです。」


馬糞ばふんのベテランって何!?」


「あ、そう言えばお前、一つ間違っているです。」


「は?何が間違ってるんだ。」


「お前さっきから馬糞ばふんって言ってるですが違うです。」


「いや、馬糞ばふん馬糞ばふんだろ。」


「違うです。お前は馬糞まぐそです。」


「まぐそ!!!!!?????」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る