【完結】ワケあって引っ越した~やんちゃオウムと村暮らし
浅葱
本編
プロローグ
仕事はしてる。
金はある。
ジジババがいる。
ヒナなんだがでっかいオウムもいる。
ジジババの家もある。ただし山間の、ドカ雪が降ったら隣町に行けなくなるようなそんな村に。ホント、雪降ったらどーやって職場へ出勤すればいいんだろうか。
「海人(かいと)、おめえはいつになったらかわいい嫁を連れてくるんだ?」
「ああ? うっせーぞじじい」
「キーヤァーアー!」
「あらあら、ミーちゃんよく食べるわねぇ。お野菜もっといる?」
朝食中にまたじじいが変なことを言いだした。
「ミー、耳元で騒ぐな。うるせえ」
二か月以上前に飼うことにしたオウムの頭を軽くつついたら、「ミヤァー!」と声を上げて肩をつつき返された。
「ミー、いてえっつーのっ!」
頭をつつくことはなくなったが、他のところはまだつつくんだよな。全く困ったオウムだ。
「ごっそさん。仕事行ってくる」
「おそまつさま。今日も夕方には帰ってくるの?」
「暗くなる前に帰ってくるよ」
「そう、気を付けてね」
ばあちゃんはそう言って笑んだ。
仕事っつってもバイトだし、そんなに金が入るわけでもない。まぁ、あれだ。学生の頃にいろいろやって少しばかり貯金があるだけだ。
ジジババの家に間借りして約二か月が経った。もう六月も目の前だ。
俺はS町のごみ処理場でバイトしている。そこでひょんなことからミヤマオウムのヒナであるミーを見つけた。あの時衰弱していたミーだったが、今は何度も俺をつつくぐらいやんちゃになった。
「ミー、ばあちゃんとタロウに迷惑かけるんじゃないぞ」
ミーは俺が出かけようとすると、トテトテと近づいてきた。置いていかれると思っているのだろうか。生意気でやんちゃだけど、俺がお前を捨てるわけないだろ?
「ミヤーアー!」
「行ってくるからな」
そう言ってミーの頭をつついてやったら、俺の指を噛もうとしてきた。お前の嘴、鋭いから怖いっての。
玄関でミーはコキャッと首を傾げるような仕草をした。
「ここから出るなよ~。夕方には帰ってくるからな」
ミーは首を傾げたままだった。その姿が寂しそうに見えたが、俺は気づかないフリをして手を振った。
さて、なんだかんだいってかわいいオウムの為に金を稼いでくるかな。
表にいたでっかい犬? のタロウ(コイツはじじいが飼っている)が身を起こした。
「見送りはいらねーよ」
声をかけて軽トラのエンジンをかける。ここからS町のごみ処理場へ向かうにはそれなりに遠い。
元気になってよかったと、俺はミーと初めて出会った時のことを思い出してにんまりした。
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本日はこちらを入れて三話更新します。よろしくー
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