散歩の三百九十六話 順調な旅の滑り出し
パカパカパカ。
僕達は馬車に乗りながら、街中の道を進んで防壁の門を目指します。
「「「ばいばーい!」」」
「気をつけて行ってこいよ!」
防壁の門の近くに例の孤児院建設現場があるので、シロ達は馬車から身を乗り出して手を振っていました。
程なくして、軍の一行と合流しました。
「トーリー様、お待たせいたしました」
「いやいや、こちらも来たところだ。では、早速で悪いが王都に向かおう」
馬車は全部で六台で、うち護送用が四台、馬車の周囲を騎馬隊がガッチリと固めています。
僕達は、隊の一番最後を進んで行く予定です。
「道中は、かなりの早足で進む事になる。街へは物資の補給のみとなり、基本野営になるが問題ないか?」
「はい、大丈夫です。食料は多めに用意してありますし、馬車内で寝られる様に準備もしてあります」
「ははは、それは頼もしいな」
てっきりトーリー様は馬車にのるのかなと思ったけど、自ら馬を操っていた。
狭い所にいるのが駄目らしく、体を動かしたいそうです。
僕達の馬車の横について、馬車の中をしげしげと覗き込んでいました。
「うーんと、これはこうで、あれはあーで」
「スー、計算出来た!」
「ホルンも出来たよ」
「じゃあ、採点するわね」
馬車の中では、ひみつ道具を作って置いています。
座るタイプの机の上に布を置いてテーブル代わりの板を置き、中に温かくなる魔導具を入れます。
簡易型のこたつで、急ごしらえの割には良くできています。
このこたつで、スーがシロ達に勉強を教えています。
アオも、勉強を教える側ですね。
「あのこたつというのは、とても良いものですな。冬はどうしても寒いので、簡易的に温かくなるのはとても良い」
「非常に簡単な仕組みなので、皆さんも使って良いですよ」
「うむ、今は試せないが王都に戻ったら試そう」
トーリー様も、馬車の中のこたつに興味を持っていました。
とはいえ、今は護送中なので、王都に行ったら自宅で作るのかな。
因みにそこそこの早足で進んでいますが、うちの二頭の馬は全く問題なく進んで行きます。
そして、街に寄って必要な物を補給しつつ少し進んだ街道沿いで昼食にします。
「マロン、お疲れ!」
「アレ、体を拭くよ」
「はい、お水だよ」
「「ヒヒーン」」
スーがついてくれながら、シロ達は積極的に馬の世話をしていました。
水もフランの魔法で出した物だし、飼い葉も馬車用のマジックバッグにたっぷり入っています。
ジュージュー、ジュージュー。
僕はというと、後方支援部隊の人と共に昼食を作っています。
僕達の分だけでなく、まとめて作った方が効率的です。
アオも手伝っていて、次々と肉を焼いていきます。
「こうして、行軍で温かい物が食べられるのは良いことだな」
トーリーさんも、僕達が作る料理を楽しみにしていました。
何でも、昔は乾パンに干し肉だけの行軍が本当にあったそうです。
今はマジックバッグが発達したので、食材くらいは余裕で運べるそうです。
勿論、連れて行く護送対象の分の食事も作ります。
さてさて、出来上がりの味はというと、
「「「おいしー!」」」
シロ達が笑顔になる物でした。
食べる時はしっかりと食べて、体を休めないとね。
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