散歩の三百五十四話 まさかの新郎新婦の登場

「そして、最後の一組になります。何と、先代お館様と先代様を陰ながらずっと支えていた侍従のマリアさんです」

「えーーー!」

「「「先代様が!」」」


 あの、僕は先代様とマリアさんが結婚するなんて全く聞いていないんですけど。

 街の人もかなりビックリしているけど、本当に合同結婚式に参加するなんて知らなかったんですね。


「トリアさん、先代様とマリアさんの結婚の話は知っていました?」

「身分の関係で籍は入れないけど、ゆくゆくは結婚式だけでも上げたいと先代様より聞いておりました。ただ、今日の合同結婚式で式を挙げるとは私も聞いておりません」


 トリアさんも、今日の合同結婚式で父親である先代様と母親であるマリアさんが参加すると知らなかったみたいです。

 チラリとスーの方を見ると、手をあわせて謝りのポーズをしていました。

 流石に結婚式の係なので、先代様とマリアさんの事は知っていたみたいです。

 恐らく先代様とマリアさんの事は黙ってくれと、色々な人から頼まれていたみたいですね。


「じーじー、まりちゃ!」


 エミリア様に抱っこされているケントちゃんは、綺麗な衣装に身を包んでいる先代様とマリアさんに元気よく手を振っています。

 エミリア様は、ハンカチで目尻を押さえていました。


「うおーん、うおーん」


 辺境伯様は、人目も憚らず号泣していました。

 ハンカチが涙と鼻水でぐちゃぐちゃです。

 父親とマリアさんの苦労は辺境伯様が一番近くで見ていたから、辺境伯様も感慨深い物があるのでしょう。


「「わーい、わーい」」


 そして、フランとホルンが先頭で白い花をまきながら、女神様の木像の前に新郎新婦を誘導します。

 因みに、この白い花びらを集めるのは辺境伯家から毎年冒険者ギルドに依頼が入るそうです。

 女神様の木像の前で、司祭様がニコニコとしながら待っていました。


「はい、どーぞ」

「ありがとうね」


 そしてシロも、立派にリングガールをしていました。

 司祭様に指輪の入ったカゴを渡して、大役を終えました。


「三人とも、頑張ったね」

「「「えへへ」」」


 三人が舞台袖にいる僕の所にやってきたので、僕は三人の頭を撫でてやります。

 舞台上では、司祭様による合同結婚式が始まりました。


「では、これより神に皆々の結婚を報告する」


 司祭様が声をかけると、舞台上の新郎新婦だけでなく詰めかけた多くの人も真剣な表情になりました。

 先代様とマリアさんが結婚するとあって、広場には当初よりもかなりの人が集まっています。

 僕達も真剣な表情になったタイミングで、とんでもない事件がおきました。


 ひゅーん、からんからん。


 突如、舞台上に何かが二つ投げ込まれました。

 あの手榴弾に似た物って……

 まさかのまさかだよ!

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