千百四十話 いよいよ結婚式が始まります

 いよいよ結婚式本番の時間になったのだが、残念ながら司祭様やシスターさんは僕の補助についてくれなかった。


「グルル……」


 そうです、何故かドラちゃんが僕の補助をしているのです。

 しかも、ドラちゃん専用の聖職者のマントを羽織ってやる気満々です。

 でも、ドラちゃんの事はこの町の人みんなが知っているので、今日もお手伝いしているという認識でいました。

 ドラちゃんも、知り合いの人が手を振るとフリフリと手を振り返していました。


「それでは、これから新郎が入場しますので大きな拍手で迎えて下さい」


 いよいよ時間となり、リズのアナウンスで最初にビシッとスーツを着こなして髪もセットしている新郎がかなり緊張した面持ちで教会内に入ってきました。

 主に男性冒険者が新郎の事を茶化しているけど、中にはナンバーワン受付嬢と結婚して羨ましいと涙を流して悔しがっている冒険者もいた。

 まあ、それで新郎に危害を加えない辺りに諦めがついているのかもしれません。


 新郎はかなり緊張しながら祭壇の前にやってきたけど、ドラちゃんがフリフリと手を振ると少し緊張が解れたみたいです。

 そして、いよいよ新婦の入場です。

 リズは、再びマイク型の魔導具を手にしました。


「お待たせしました、いよいよ新婦の入場です。拍手で迎えて下さい」

「「「わあっ!」」」


 そして再び教会のドアが開き、純白のウェディングドレスに身を包んだ新婦が入場してきました。

 新婦の隣にはギルドマスターがスーツを着ていたけど、どうやら新婦の介添え役を見事ゲットしたみたいです。

 新婦にとってギルドマスターは上司なのだから、順当と言えるのかもしれません。

 勿論ちびっ子たちが張り切ってフラワーボーイとフラワーガールをして、結婚式を盛り上げています。

 ミカエルたちもフラワーボーイとフラワーガールをやるのが上手になったし、今日もスラちゃんが風魔法を使って綺麗に花びらを飛ばしています。

 そして、二人はゆっくりとバージンロードを歩いていき、バージンロードの中央で新郎がギルドマスターから新郎を受け取りました。

 ギルドマスターは感極まったのか、号泣しながら新郎に新婦を託しました。

 ギルドマスターは移動してマリーさんの隣の席に座ったけど、未だに号泣がとまらないのでマリーさんや冒険者ギルド関係者もハンカチで顔を覆っているギルドマスターを見て思わず苦笑していました。


「それでは、これから新しい夫婦が誕生する事を神様に報告します。皆さん、一度神様に祈りを捧げましょう」


 僕は集まった人に声を掛け、皆で神様に祈りをささげます。

 すると、何故か教会のステンドグラスから良い感じに光が入って、新郎新婦を幻想的に照らしていました。

 周りの人も、思わず息を呑むくらい綺麗な光景ですね。


「それでは、これより結婚式を執り行います。汝ヒューイは、セリーナを妻として終生愛する事を誓いますか?」

「誓います」

「では、汝セリーナはヒューイを夫とし終生愛する事を誓いますか?」

「誓いますわ」


 宣誓の言葉も無事に終わり、指輪の交換です。

 指輪の置かれたトレーをドラちゃんが運び、無事に新郎新婦に指輪を渡しました。

 ドラちゃんが普通に自然な動きで僕の補助をしたので、集まっている人たちも全くドラちゃんの事を気にしていませんでした。

 無事に指輪の交換も終わり、いよいよメインイベントですね。


「それでは、誓いの口づけを」


 僕が声をかけると、新郎が新婦のヴェールを持ち上げました。

 そして、誓いの口づけをするとまたもや良い感じにステンドグラスから光が降り注ぎました。

 思いっきりたまたまなんだけど、とても美しい光景に教会内から大きな拍手が沸き起こりました。


「新たに、一組の夫婦が誕生しました。夫婦が退場しますので、盛大な拍手をお願いします」


 僕が声を掛けると、新郎新婦はペコリと一礼してから腕を組んでゆっくりと出口に向かって歩き始めました。

 勿論大きな拍手が教会内から起きていて、新郎新婦もにこやかに手を振りながら歩いていきました。

 ふう、何とか神父役の大役を終えられてホッとしました。


「ドラちゃんもありがとうね」

「グルル」


 ドラちゃんも普通に頑張ってくれたし、僕の側にいたプリンも撫でてあげました。

 でも、結婚式はまだまだ続きますよ。

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