千百十話 第一試合
そして、リズとサンディが実況席に向かいました。
「あーあー、テステス」
「テスト中です」
二人がマイク型魔導具のテストをしている間、僕はレシステンシアさんに話しかけました。
ちなみに、セコンドにはエレノアが付くみたいです。
「レシステンシアさん、ルーシーお姉様はとっても強いので全力で頑張って下さいね」
「元からそのつもりです。先輩に簡単に勝とうなんて、全く思っていませんから」
レシステンシアさんは、ニコリとしながらアップをしていました。
強敵だからこそ、レシステンシアさんも最初から全力で頑張るみたいですね。
「エレノアも、頑張ってレシステンシアさんを応援するんだよ」
「全力で応援するよ! ルーシーお姉ちゃんにも勝つくらいの気迫で応援するんだ!」
エレノアよ、応援はやり過ぎない程度に頑張ってね。
そして、ルーシーお姉様のところには、ランさんとネコちゃんに乗ったエリちゃんの姿がありました。
「ルーねーねー! がんばー!」
「エリちゃん、応援ありがとうね」
エリちゃんの全力応援に、ルーシーお姉様も思わずニンマリとしていました。
でも、流石にセコンドのところにエリちゃんとネコちゃんがいると危ないので、僕が来賓席まで連れて行きました。
「あーあー、それではこれから第一試合を始めます! 上級生の意地を見せるか、ルーシー! 対するは、期待の一年生レシステンシア!」
「両者ともテクニックを持ち味にしていますので、激しい技術戦になることが予想されます」
なんというか、リズの紹介はボクシングとかのリングアナみたいですね。
サンディが選手情報を教えてくれるので、解説としてはとても聞きやすいですね。
「一回戦は、全て五分で行われます。勝敗は、学年代表を決める時と同じく相手に待ったを言わせるかリングアウトさせること。または気絶させることです。剣術授業の先生が、公平な審判をしてくれます」
サンディが淀みなく説明をしてくれるので、来賓もふむふむととても分かりやすそうです。
ちなみに、ジンさん曰く昔から殆どルールは変わっていないそうです。
「なお、万が一に備えてスラちゃんが強固な魔法障壁を展開してくれています。そのため、客席の安全も確保されています」
スラちゃんがフリフリとみんなに向かって触手を振っているけど、実は審判の先生と一緒に訓練場内にいます。
万が一の治療にも備えているし、僕とリズも治療に駆けつけます。
「それでは、両者中央へ」
「「はい!」」
ゴリゴリマッチョ先生がルーシーお姉様とレシステンシアさんに声をかけ、両者とも訓練場の中央付近にやってきます。
先生が禁止事項などを説明し、両者は開始線まで下がりました。
いよいよ、試合開始です。
「それでは、試合開始だよ。レディ、ゴー!」
「「はっ!」」
ガンガン!
リズの開始の合図とともに、ルーシーお姉様とレシステンシアさんは一気に接近して木剣を打ち合っています。
両者とも訓練場を縦横無尽に動いていて、かなりのスピードですね。
「速い速い! 目にも止まらぬ速さとは、こういうことだ!」
「かといって、丁寧な剣技も目を引きます。両者とも、もの凄い技量です」
リズとサンディは両者の動きが余裕で見えているからこうして普通に実況できるけど、普通の生徒からすると両者の動きは一瞬しか見えないはずです。
そんな中、目の良さを発揮した人がいました。
「ルーねーねー、がんばれー!」
「おいエリよ、二人の動きが見えるのか?」
「みえるよー!」
エリちゃんはジンさんの質問に普通に答えていたけど、エリちゃんは相当目が良いみたいですね。
第一試合からいきなりの激戦になったけど、試合時間残り三十秒になったところで一気にルーシーお姉様が動いた。
ダッ、ブオン!
「せい!」
「あっ……」
ガキン、カランカラン……
ルーシーお姉様が、一気に身体能力強化のレベルを上げてレシステンシアさんの木剣を後方に跳ね上げたのだ。
レシステンシアさんはルーシーお姉様の動きに対応できず、まさに完敗でした。
「試合終了! 勝者、ルーシー!」
「どうやら、ルーシー様は力を温存していたみたいです。先輩の意地を見せてくれました」
パチパチパチと、会場中から大きな拍手が両者に送られていました。
そして、両者は訓練場中央付近でガッチリと握手をしました。
「その、完敗でした。道中も、かなり押されていました」
「でも、レシステンシアちゃんも強かったよ。来年、また勝負しようね」
そして、両者はセコンドのところに戻っていきました。
レシステンシアさんは、負けたけど清々しい表情です。
逆に、ルーシーお姉様は予想外に体力を使ってしまったみたいですね。
「ルーねーねー!」
そして、エリちゃんがルーシーお姉様に精一杯手を振っていました。
エリちゃんも、お姉ちゃんが勝ててとても嬉しいみたいですね。
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