千十七話 やっぱり二人は双翼の天使様です
まあ作業を始めれば大丈夫かなと思い、さっそくそれぞれの持ち場に移動します。
僕とスラちゃんはいつも通り炊き出し班で、リズとエレノアは治療班です。
ミカエルとブリットも、カレン様とともに張り切って準備していますね。
トントントントン。
「わあ、凄いです。アレク君は、本当に料理が上手なんですね」
「凄いです、あっという間に野菜を切っていきます」
僕と一緒に野菜を切っている面々が手際の良さを褒めてくれたけど、僕としては横にいるスラちゃんの方が凄いと思うよ。
魔法で食材をあっという間に切り刻んでいくので、あのスライムは何だと驚いていました。
そして、ようやくお説教から解放されたドラちゃんは、サンディとかと一緒に荷物運びをしています。
もはや飛竜という怖さは全くなく、みんなも普通にペット扱いをしていますね。
シュイン、ぴかー!
「凄い、マジカルクラウドが回復魔法を使っているよ」
「雲さんは、特別なんだよ! 凄いんだよ!」
一足先に治療を開始した治療班では、レイカちゃんが雲さんを褒められてとても喜んでいました。
リズたちがどうやって治療するかを教えつつ、何とか治療は進んでいますね。
さて、炊き出しのスープも出来たので試食して貰いましょう。
「おいちー!」
「グルル!」
「アレク君とスラちゃんの作る料理は、いつも本当に美味しいわね」
うん、何故エリちゃんとネコちゃん、それにアリア様が大教会にいるのかはスルーしておきましょう。
そして、いきなりアリア様の護衛をすることになって、バーグさんは若干混乱しています。
エリちゃんとネコちゃんにも気に入られたから、普通にしていれば大丈夫ですよ。
他の試食の面々も、とても美味しそうにしていました。
さっそく配膳を開始したけど、ここではイヨとメアリが色々と教えてくれました。
二人が丁寧に教えるので、スムーズに配膳していきます。
「最近はスラム街も徐々に解体されてきて、治安も良くなってきたよ」
「あと何年かかるか分からないけど、こうして王都再編してくれるのはありがたいわね」
「おらあ、たまに衛星都市に働きに行っているぞ。仕事があるのは、やっぱり良いことだと」
新人職員とルーカスお兄様たちが並んでいる住民から話を聞いているけど、衛星都市計画と王都再編計画がうまく動き出しているみたいです。
因みに、アイビー様も今日は治療ではなく聞き込みを手伝っています。
こんな感じで、作業は続いています。
ズドーン!
「あっ、事故だよ!」
「大きな音がした!」
すると、本当にたまたま近くで行われていた解体現場で建物が崩れるという事故がありました。
直ぐに兵が現地に駆けつけて行ったけど、ついでにドラちゃんとポッキーもついていきました。
シュイン。
「あっ、ポッキーがゲートを繋いだよ!」
「怪我人をどんどんと運ぶぞ」
ここでも、手際よく作業を開始します。
聞き込みは一旦中断で、ルーカスお兄様の指示のもと怪我人が運び込まれていき、リズたち治療班がすぐさま治療していきます。
そんな中、最後に担架で運ばれてきた人が酷い大怪我をしていました。
「うっ、うう……」
「おい、しっかりしろ!」
「教会に着いたぞ! 直ぐに治療してくれるからな」
何と足を挟まれたのか、左足の膝下を切断していました。
職人仲間が声をかけるが、これはかなりの重傷です。
血だらけで凄惨な現場に、思わず顔をそむける人もいます。
そんな中、僕とリズは直ぐに魔力を溜め始めました。
「リズ、直ぐに治療するよ!」
「うん、お兄ちゃんやるよ!」
シュイン、シュイン、ぴかー!
僕とリズは、久々に合体回復魔法を放ちました。
バッチリな手応えだったけど、果たしてどうでしょうか。
「そ、そんな馬鹿な……」
「あ、足が再生したぞ!」
同行していた職人さんはあ然とした表情を見せていたけど、どうやらうまく行ったみたいですね。
ついでに、生活魔法で血だらけになった服を綺麗にします。
「怪我は治りましたけど、だいぶ出血していたので暫く安静が必要です。早く治療施設に運んで下さい」
「でも、もう大丈夫だよ!」
「おっ、おう!」
「ありがとうな」
職人さんは、直ぐに担架を運んで行きました。
ふう、久々の事故現場で焦ったけど、何とかなったね。
では、奉仕活動を再開します。
「やっぱり、双翼の天使様は凄いわね」
「そうそう、何よりも勇気が凄いわ。私だったら、あんなに血だらけだったら怯んじゃうわ」
うん、ルーカスお兄様の同級生が、何故か僕の頭を撫で撫でしてくるよ。
僕とリズにしてみれば、普通に治療しただけなんだよね。
「リズ様、本当に凄かったです。魔法の腕もそうでしたが、躊躇なく治療する姿が素晴らしかったです」
「ええ、そうですわ。双翼の天使様たる所以がよく分かりましたわ」
「えー、リズとお兄ちゃんは普通に治療しただけだよ!」
治療班でも、サキさんとレシステンシアさんを始めとする入園予定者がもの凄く盛り上がっていました。
そんな僕たちのことを、アリア様がにこやかに見つめていました。
「ふふ、どんなに凄いことでもアレク君とリズちゃんは当たり前だと言っているわ。特別なことだと思っていないのよ。それが、二人の素晴らしさなのよ」
「はい、僕も感動しています」
バーグさんも、何故か感涙の涙を流していました。
町の人も、凄いものを見たと感激していました。
こうして無事に奉仕活動は終わったけど、双翼の天使様は成長してもやっぱり双翼の天使様だったとあっという間に噂が広まっちゃいました。
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