九百九話 ブライアントさんとマリアさんの婚姻申請

 デンバー男爵の葬式の数日後、王城にブライトさんとアリサさんの婚姻申請が出された。

 もちろん、申請は受理された。

 デンバー男爵家は現時点では潰れた訳じゃないし、裁判後もブライトさんは貴族として扱われます。

 なので、ブライトさんがナーガ男爵家に婿入りするのは全く問題ありません。


「後は、裁判を待つばかりですね」

「背後に犯罪組織を壊滅させたし、何よりも奴らが逃れられない犯罪の証拠も押さえてる。何も問題はないだろう」


 デンバー男爵家に勤めている使用人の再就職先も無事に決まり、ブライトさんの私物は僕が作ってあげたマジックバッグに収納済みです。

 因みに、アリサさんは来週僕の屋敷に来ることになり、ミカエルたちもとっても楽しみにしています。

 何よりも僕たちと同い年で学園でも一緒なので、リズたちもとっても楽しみにしていました。

 しかし、やはり馬鹿はいるみたいでした。

 それは、昼食を食べて午後の仕事を始めようとした時でした。


「皆さまのお陰をもちまして、スムーズに手続きを終える事ができました」

「いやいや、しっかりとした書類なので何も問題はなかった。それに、おめでたい事は早いうちに手続きを済ませたいものでしょう」


 ナーガ男爵が宰相執務室にやってきて、手続きの終わった書類を受け取りました。

 内務卿も執務室に来ていて、少し談笑していました。


 バン!


 と、ここで突然執務室のドアが勢いよく開き、貴族服を着て頭頂部が禿げている太った男性が部屋の中に入ってきました。

 突然のことで、僕たちはドアから入ってきた男性を見て固まってしまいました。

 というか、この人はいったい誰なんだろうか。

 そう思っていたら、ズカズカと応接セットの方までやってきました。

 僕と部屋を警備する兵は、慌てて男性の前に立ちふさがりました。


「あの、アポイントは取っていますか?」

「そんなの関係ない! 俺はナーガ男爵に用があるんだ!」


 えっ、と思ってナーガ男爵の方を振り返ると、ナーガ男爵はもの凄く嫌そうな表情をしていました。

 その時でした。


 ドサッ。


「うわぁ」

「ガキが、邪魔だ!」

「「「アレク副宰相?!」」」


 僕は、太った男性にいきなり突き飛ばされて尻もちをついてしまいました。

 部屋を警備する兵も一斉に太った男性を取り押さえようとしましたが、一足先に動いた存在が。


 シュイン、バリバリバリ!


「ギャー!」


 僕が突き飛ばされたので、プリンは激怒してかなりの威力の電撃を太った男性に浴びせました。

 痺れて動けなくなった太った男性を、兵が取り押さえました。

 そして、身体検査をすると、複数の武器が出てきました。


「ふむ、ナーガ男爵、こやつは誰だ?」

「ポリバレント子爵家当主にございます。その、我が家にポリバレント子爵の孫を婿に入れろと事あるごとに要求しておりまして、私も何回も断っております。ブライトとの婚約が決まった後も、もう口を出さないでくれと書状を出しております」


 何となく、このポリバレント子爵がやりたい事が分かっちゃった。

 質問した内務卿も、隣にいた宰相も直ぐに分かったみたいです。

 ブライトさんとアリサさんの婚約破棄を迫り、断ったら脅迫や実力行使に出るつもりだったんだ。

 でなければ、胸元に複数の短刀を忍ばせません。

 僕を突き飛ばした事よりも複数の短刀を隠し持って宰相執務室に入ったのが結構な罪になるらしく、ポリバレント子爵は痺れて全く動けないままドナドナされていきました。


「まあ調べれば分かると思うが、どうせ資産が無くてナーガ男爵家の財産を狙ったか、ナーガ男爵家を乗っ取って影響力を増大させようとしたのだろう。子爵だから、男爵ならいうことを聞くと勘違いしてな」

「そして、愚かな計画を実行して捕まってと。馬鹿の極みでしかない。罰金に加えてナーガ男爵とアレク君への賠償で、余計に首が回らなくなるだろうな」


 宰相と内務卿が、ポリバレント子爵がドナドナされていったドアを見て、思わず溜息をついていた。

 未だに、馬鹿なことをする貴族がいたんですね。

 そして、ポリバレント子爵家の家計は実際に火の車だったらしく、罰金とナーガ男爵と僕への賠償金を払ったら資産がすっからかんになったそうです。

 更に当のポリバレント子爵は複数の前科持ちで、強制当主交代の上教会送りという名の終身禁固刑となりました。

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