八百三十話 特訓開始!
翌日から、保護した飛竜の子どもへの特訓が始まりました。
訓練は、主にミカエルとスラちゃんとポッキーが担当する事になりました。
因みに、飛竜の子は僕の屋敷の庭で過ごしています。
見た目は小さい竜なのに、使用人どころかまだ小さいケンちゃんとレオンちゃんの方が立場が上です。
アレクサさんの赤ちゃんのアンリちゃんが飛竜の顔を思わず叩いちゃって、飛竜の方が涙目になっていました。
最初は、飛竜の子どもとミカエルが手を繋いで魔力の循環を行います。
「こうやって、自分の体の中の魔力をぐるぐるとするんだよ」
「グルッ」
ミカエルは丁寧に魔力操作を教えるので、飛竜もミカエルにはとてもよく懐いています。
飛竜も真面目に頑張っているので、魔力操作は早めに覚えられそうです。
次は、飛行の練習です。
これは、飛行魔法が使えるスラちゃんが担当です。
ひゅーん、ひゅーん。
「グルル!」
「「がんばれー!」」
周りの家や守備隊には、飛竜の子どもが空を飛ぶ訓練をしていると連絡しています。
しかし、ミカエルとブリットの応援も虚しく、飛竜の子どもはスラちゃんが空を飛ぶ速さに追いついていません。
まだまだ、飛行能力は改善の余地がありそうです。
飛行訓練を終えたら、今度はポッキーの番です。
シュッ。
「キュー!」
「グルル!」
それは、庭を走り回るポッキーを空から飛来して捕まえる訓練です。
因みに、ポッキーは怪我をしないように魔法障壁を展開していますが、身体能力強化は使用していません。
なのに、飛竜の子どもは何とか足で捕まえようとしているのにポッキーを捕まえる事ができません。
ここ数日分かったことは、この飛竜は魔法を扱う能力は良さそうだけど運動神経が全然駄目って事でした。
「うーん、中々面白い飛竜がやってきたなあ」
「孫の護衛を頼むのも、まだちょっと、いやだいぶ駄目ですわね」
柵越しに飛竜の訓練を見守っていた辺境伯様とイザベラ様も、思わず飛竜の子どもに駄目出しをしていました。
現時点では、飛竜の子どもよりも圧倒的にポッキー達マジカルラット部隊の方が戦力になります。
バサッ、バサッ。
「あっ、竜だ!」
「こっちに来るよ!」
「グルル……」
そして、実はたまに別の飛竜が屋敷にやってくる事があります。
飛竜の子どもがバツの悪そうな顔を見せているけど、実はこの飛竜は子どもの母親です。
以前、子どもを追い出してちょっと心配になったので、臭いを辿って僕の屋敷にやってきました。
そして、僕達のところで訓練をしているのを知って安心していました。
それ以降、ちょくちょく僕の屋敷の庭にやってきます。
「うむ、まだまだ子どもって感じだ。正直、マジカルラットの方が使い物になる」
「グルル……」
辺境伯様がストレートに感想を言ったので、今度は母親の飛竜が凹んでいました。
しかし正論なので、みんなウンウンと頷いてきました。
「クルル!」
「ぐ、クルル?」
「もっともっと厳しく鍛えて良いってよ!」
そして、母親公認で飛竜の子どもはもっと鍛える事になりました。
とはいえ直ぐに訓練の結果は出ないし、数カ月は掛かりそうです。
これが、僕達の朝の日課になりました。
もちろん、僕たちも真面目に訓練しています。
「はーい、朝食の時間ですよ」
「日笠のお母さんにも、オーク肉のミンチがありますよ」
「「「わーい、ご飯だ!」」」
「「グルル!」」
そして、侍従のお姉さんは平然と屋敷に来ている飛竜の母親も含めて対応しています。
侍従のお姉さん曰く、飛竜は話が通じるからとても扱いやすいとの事です。
というか、飛竜の母親が度々我が家にきているのは、ご飯目当てな気もします。
ともあれ、僕も朝ご飯を食べて王城に行かないとね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます