七百八十話 自称歴史の長い三家からの要求
段々と王都の五歳の祝いが近づいてきて、各地から貴族が王都にやってきました。
もちろん、問題となっている三つの貴族も王都にやってきました。
僕たちの準備も最終盤に差し掛かったのですが、やっぱりというか馬鹿な要求が三つの貴族から出されました。
「歴史ある貴族たる我が家の息子に相応しい食事を用意しろと、出迎えもそれなりの者を用意しろと言ってきた。既に相応のものを用意していると返信したぞ」
定例会議の冒頭で、陛下がニヤリとしながら話してきた。
僕だけでなく内務卿も溜息をついている辺り、三家の当主は陛下に直接言ってきたのだろう。
「はあ、僕はもう頭が痛いです。何となく、三家の当主のドヤ顔が目に浮かびます」
「私も同様でございます。私たちに言うと断られる可能性が高いと思って、陛下に直接申したのですね」
「大体そんなところだろう。余に言えばどうにでもなると思ったのだろうな」
いずれにせよ、この時点で三家に対する注意度は上げないといけなくなった。
でも、注意度を上げるだけで、対応は変わりません。
「では、陛下に碌ではない事を申し上げた不届者を、懇切丁寧に出迎えてやらんとなりませんな」
「まったくですな。我々のような小者で申し訳ないですなあ」
この話を聞いたカーセント公爵と この話を聞いたカーセント公爵とグロスター侯爵のおじいさまも、ちょっと悪い表情をしながら答えていました。
二家とも名家で副宰相なので、全く小者貴族ではありません。
歴史が長いだけの男爵家がどう反応するのか、ある意味見ものですね。
「それで、サンディとイヨにはニース侯爵が着くのか。サンディはロンカーク伯爵家の現当主だ。流石に奴らも喧嘩を売ればどうなるか分かっているだろうしな」
「息子に爵位を譲っていますが、身分は侯爵家当主と変わりありませんですからなあ」
宰相を引退したニース侯爵も、エスコート役につくことが決定しました。
元宰相に喧嘩を売ることは、流石にしないと思いたいです。
「でだ、もう一つの要求がクロスロード子爵をパーティーに呼ぶなという事だ。歴史ある貴族が参加するパーティーに相応しくないとの事だ。もちろん突っぱねたがな」
「あの……俺としても、あのキラキラな服を着て五歳の祝いに参加するのはちょっと……」
「それは、やる気満々の三人に言ってくれ。良いじゃないか、勇者様の登場って分かりやすいぞ」
思いっきりゲンナリしているジンさんが愚痴をこぼしていたけど、この前みんなで衣装合わせをした際に、ジンさんの着る服はとんでもなく派手だった。
一応王族より目立たない物に抑えたって言っているけど、ほんのちょっとだけ目立たなくしているだけな気もします。
もしジンさんが絡まれたら、製作者の王妃様、アリア様、ティナおばあさまに文句を言ってくださいと言って逃げるそうです。
因みに、閣僚はジンさんが目立ってくれる分とっても助かると言っていました。
「次年の予算も無事に決まり、本年も五歳の祝いを残すだけになった。何事も起こらない様に取り組むように」
「「「はっ」」」
こうして、定例会議は無事に終了しました。
でも、五歳の祝いが少し波乱含みになったのは気が引けるなあ。
ちょうど昼食の時間になったので、僕は王族専用の食堂に向かいます。
今日は、ミカエルとブリットも勉強のために王城に来ていました。
すると、ミカエルからこんなリクエストが。
「ねーねー、お兄ちゃん、パーティーでお兄ちゃんのプリンが食べたい!」
「プリン? プリンなら、シェフが作るよ」
「違うの! お兄ちゃんのプリンが食べたいの!」
あの、ミカエル?
流石に僕も忙しいから、参加人数分のプリンを作るのは無理だよ。
「お兄ちゃんのプリンが食べたいの!」
「食べたいの!」
あの、だから、プリンは無理……
ブリットが加わっても、無理なものは無理……
「「「食べたいの!」」」
「……はい、分かりました」
結局この場にいる子ども達に押し切られる形で、僕はプリンを作ることになりました。
あとでスラちゃんに頼んで、プリンの材料をサーゲロイド辺境伯領に行って買って貰わないと。
僕は、思わずがっくりとしちゃいました。
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