七百十四話 皆で反省中

 会議も終わり、僕達は勉強部屋に移動しました。

 はあ、色々あって疲れちゃったよ。


「この後は、ご飯食べて早速新業務ですね」

「俺は屋敷に戻って、辺境伯様と今後の警備について話すぞ」


 僕もジンさんも、昼食後はお仕事があります。

 たははと思いながら、ミカエル達のいる勉強部屋のドアを開けました。


 ガチャ。


「キュー、キュー!」

「ガゥ……」


 えっと、何だろう。

 ガクリと項垂れた飛天虎の赤ちゃんが、マジカルラットに説教されているぞ。

 あのマジカルラットは、ルーカスお兄様の従魔だな。

 取り敢えず話を聞いてみよう。


「えっとね、ねこちゃんが隅でおしっこしちゃったの」

「だから、怒られちゃったんだよ」


 ミカエルとブリットが理由を教えてくれたけど、それで飛天虎の赤ちゃんは怒られちゃったんだね。

 勉強部屋には、ちゃんとトイレもあるもんね。

 ルーカスお兄様のマジカルラットは、とっても真面目な性格だもんね。


「お前も本当に真面目だな。次からは気をつけろよ」

「キュー」

「ガウガウ……」


 ルーカスお兄様がマジカルラットと飛天虎の赤ちゃんを撫でて、説教タイムはここで終了です。

 飛天虎の赤ちゃんは、マジカルラットとともにルーカスお兄様に抱っこされてもまだシュンってしていました。

 きっちりと反省して、次に生かせればいいですね。


「で、二人は何をしているのかな?」

「口の周りについているものは、一体何かな?」

「「ぎくっ」」


 そして、今度は王妃様とアリア様の厳しい視線がルカちゃんとエドちゃんに向けられました。

 二人の口元は、お菓子のかすで汚れていますね。

 多分だけど、二人のマジックバッグに入っていたお菓子を食べちゃったんだね。


「昼食の前だから、お菓子は禁止って言ったわよね」

「これで昼食を残したら、どうしようかしら」

「「あわわわ……」」


 あーあ、これはお説教コースですね。

 間違いなく昼食を残しそうですし、これは仕方ないですね。


「あのね、ルカちゃんとエドちゃんのマジカルラットは止めていたんだよ」

「でもね、ルカちゃんとエドちゃんはお菓子を食べちゃったんだよ」

「キュー」

「「ふーん……」」


 そして、更にミカエルとブリットとマジカルラットが、背景をバラしちゃいました。

 従魔が止めても、二人はお菓子を食べちゃったんだね。


「あとね、お姉ちゃんもお菓子食べてた!」

「プリンちゃんが止めていたのに、お菓子食べちゃったんだよ」

「「「ぎくっ」」」


 そして、今度はミカエルとブリットがリズ達もお菓子を食べていたとバラしてしまいました。

 真面目なサンディ以外、皆でお菓子を食べちゃったみたいですね。

 ここは、僕から注意しないと。


「皆、これで昼食を残したら夕食抜きだよ」

「「「大丈夫!」」」


 リズ達は、昼食も全然平気とアピールしていました。

 うん、全くこりていないね。

 ここは、もう少し強く言った方が良いね。


「リズ達がお菓子を食べちゃったら、ルカちゃんとエドちゃんも食べちゃうよ。そこは分かっているの?」

「「「ごめんなさい……」」」

「自分だけじゃなくて、ルカちゃんとエドちゃんも、王妃様とアリア様に怒られちゃうんだから。本当に気をつけてね」


 流石にルカちゃんとエドちゃんが怒られた所も見ているので、リズ達も素直に謝っていた。

 ここは、しっかりと反省してもらわないとね。

 で、このタイミングで一番反省しないといけない人が現れました。


 ガン!


「オギャー!」

「わわわ、すまんすまん」

「オギャー、オギャー!」


 陛下がエリちゃんの寝ているベビーベッドに豪快に肘を当ててしまい、すやすやと寝ていたエリちゃんが大泣きをしてしまったのだ。


「あなた、一体何をしたのかしら……」

「ジン、あやしてもらえるかしら? あなた、ちょっとお話しましょうね……」


 ズルズル、ズルズル。


「その、あの、あー!」


 バタン。


 陛下は王妃様とアリア様に引きずられながら、勉強部屋から出ていきました。

 陛下は、身内の前だと本当にポンコツですよね。


「陛下も、昔から本当に学習しないな……」

「あうあう」


 エリちゃんを抱っこしたジンさんの、ボソッと発した呟きが印象的でした。

 因みにエリちゃんは驚いただけで、ジンさんが抱っこするとあっという間に泣き止みました。

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