七百三話 特別調査チーム継続です
新閣僚の布陣も固まり、僕も時々会議に出ています。
「アレクが宰相補佐官をしていて助かった。宰相は仕事量が多いから、移行が大変なのだよ」
「僕がいなくても、皆さん優秀だから全然問題ないと思いますよ」
「いやいや、政治というのは優秀な補佐官がいて初めて成り立つのだよ。次期商務卿も、補佐官からの昇格だ」
宰相に限らず、どの部署もお仕事は大変だと思います。
特別調査チームを通じて、色々な部署の事を勉強できたもんね。
「レオにも負担はかけたが、これも将来に向けての勉強だと思ってくれ。まあ、レオが閣僚になるのは早くても十年後だな」
あの、陛下、十年後って僕はまだ十九歳なんですけど。
閣僚の皆様も、うんうんと頷かないでください。
「さて、話を戻そう。各部署の改革は、今後も続けるものとする。やる気のある実績を上げた者は登用するが、不正は厳しく監視していく。あくまでも我々の目先には国家であり、王国に暮らしている民がいることを忘れないように」
「「「承知しました」」」
ここは、もう何回も陛下が言っている事です。
貴族主義勢力が自分勝手な政治を行った影響で、色々な人が被害を受けていたもんね。
僕も酷い扱いを受けていた人を何回も見たし、とっても悲しい事です。
可能な限り、この負の連鎖を断ち切りたいですね。
後は担当者同士で話をするそうなので、これで会議は終了です。
僕は、宰相と共に宰相執務室に戻りました。
「お兄ちゃん、お帰りなさい」
「アレクお兄ちゃん、お帰りなの」
執務室に戻ると、特別調査チームとして軍に行っていた面々が何故か執務室で休んでいました。
通信用魔導具にも特に通知はなかったけど、何か問題でもあったのかな?
ここは、事情を知っていそうな人に聞いてみよう。
「ジンさん、執務室に戻ってきて何かあったんですか?」
「何も無いぞ。というか、大体の所は終わっちまったんだよ」
お菓子をもりもりと食べながら、ジンさんが執務室にいる理由を教えてくれました。
という事は、今年の特別調査チームの活動はほぼ終わりですね。
「ふむ、ご苦労だったのう。では、来年の特別調査チームの予定を組んでおこう」
「おじいちゃん、もう宰相を降りるんじゃなかったっけ?」
「はは、予定を組むだけだ。それなら、今の宰相でも問題ない。メンバーは、その時に動ける者だろうな」
宰相が笑いながらカミラさんと話をしていたけど、来年の特別調査チームには恐らくミカエルとブリットも加わるだろうね。
保護者もその時にならないと分からないけど、ジンさんが入るのは間違いないですね。
「しかし、これでようやく僕の仕事も落ち着きます。ここ数ヶ月は、とっても忙しかったですよ」
「アレク君はお疲れだな。でも、新たな仕事が入ってきたぞ」
あの、宰相?
ニコニコしながら、新しい仕事が増えたって言わないで下さいよ。
「民を思う教育をもう少し進めるために、学園で使う教科書を改訂する事になった。最近では学園の事といえばアレク君だから、改訂作業に入ってもらう事になった」
「あの、その話は初耳なんですが……」
「儂もさっき知ったばかりだ。様々な観点から色々な意見が欲しいそうだから、特別調査チームの面々はそのまま残るぞ」
「「「えっ!」」」
うん、こういう事は多くの人の目で見た方が良いですね。
という事で、皆巻き込んじゃいます。
「メアリは、何かあったらメンバーから外れて良いよ」
「いえ、特に問題はありませんので、このままメンバーに加わります。父からも、普通の貴族の子弟では体験できない事だから積極的に参加するようにと言われております」
メアリは公爵家の令嬢でとっても頭が良いし、何よりもメアリはレイナさんとアイビー様と従姉妹という特殊な関係です。
次期王妃様と救国の勇者様の妻の従姉妹だから、メアリ自体も色々な事を任される可能性は高いでしょう。
だからこそ、特別な人達と友好を深めた方が良いというカーセント公爵の判断なのでしょう。
「それに、ただ勉強しただけでは経験できない事を体験しております。習った礼儀作法を実践できておりますし、逆に自分に足らない事を把握できますわ」
特別調査チームは部署関係なく様々な人と会うし、知識も必要です。
だからこそ、色々と気づく事もあるようです。
「リズちゃん達は度胸があるのか、礼儀作法も出来ていますし誰にでも話しかけていきます。その点は見習いたいですわ」
リズ達も、勉強の成果は多分に出ているみたいですね。
でも、僕達は各国首脳とも友達だから、逆に立場が上の人ほど気安い関係なのかもしれません。
「じゃあ、ちょうど時間だし昼食に行きましょう」
「はーい。今日はローリーさんも一緒に行こうね!」
「ええ! わ、私もですか?」
当のリズは、相変わらずゴーイングマイウェイな性格ですね。
でも、明るい性格だから嫌われる事はないんだよなあ。
戸惑っているローリーさんの手を引くリズの後ろ姿を見ながら、僕はそんな事を思いました。
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