六百七十九話 貴族の跡目争いが発覚?

 翌日は、入園式の打ち合わせです。

 といっても、前回の打ち合わせから大きく変わった所はありません。


「という事で、一週間後の入園式は宜しくお願いします」


 ルーシーお姉様と一緒に打ち合わせに参加したけど、あっという間に終わっちゃいました。

 警備はいつも通りにして、在校生も参加する内容で決定です。

 来賓は僕とリズとルーシーお姉様に、ティナおばあさまも参加します。

 後は、前日にもう一回打ち合わせして終わりです。

 あっという間に打ち合わせが終わったので、王城に早めに戻ります。


「戻りました」

「戻りましたわ」


 ゲートで宰相の執務室に戻ると、何故か執務室がドタバタしていました。

 宰相の姿は見当たらないけど、もしかして会議かな?


「あっ、お帰りなさいませ。ちょうど良かったわ。これから緊急会議だそうで、できればお二人にも参加してほしいと宰相が言っておられました」

「あっ、はい。分かりました」

「私達も直ぐに会議室に向かいますわ」


 緊急会議って事は、ジンさんのクエスト男爵領の捜査の件で何かあったんだね。

 僕とルーシーお姉様は、急いで会議室に向かいました。

 会議には、陛下と閣僚と軍の関係者の他にルーカスお兄様もいました。


「悪い知らせが三つある。一つはクエスト男爵が亡くなり、跡目争いが起きているという事、二つ目は現地の教会を取りまとめている司祭も亡くなった事、そして三つ目は謎の魔物溢れが起きてゴブリンの集団が街を襲っているという事だ」

「「「えっ!」」」


 僕とルーカスお兄様とルーシーお姉様は、陛下からの報告を聞いてとてもビックリしてしまいました。

 ブランダーク男爵領で似たことがあったけど、その時以上に問題が発生しているよ。


「それでだ、ジンからの報告によると、側室が生んだ長男は救援要請をしたいのだが、正妻が生んだ次男は頑として自領の兵のみで対応すると譲らないそうだ。当然指揮権が纏まらないので、被害が大きくなっているそうだ」

「クエスト男爵は、後継者は指名しなかったのですか?」

「残念ながら、指名してなかったみたいだ。だからこそ、この騒ぎを収めた方が後継者として名乗りを上げたいのだろう」


 ルーカスお兄様の質問に、陛下が首を振って否定した。

 とっても面倒になっているのは、よく分かります。


「ジン達は、たまたま現地にいてゴブリンの襲撃に巻き込まれた冒険者という立場で戦っている。冒険者でもあるから、クエスト男爵領で戦っても、何も問題ないな」

「問題なのは、一部のゴブリンがバイザー子爵領に入ってきた事だ。バイザー子爵領に駐留していた軍と冒険者が撃退した。バイザー子爵領の街とクエスト男爵領の街は、馬で一時間で着く距離なのだよ」


 えー!

 お隣のバイザー子爵領にも迷惑をかけちゃってるじゃん。

 軍務卿が溜息をつきながら報告したけど、もう跡目争いしている場合じゃないよ。


「このゴブリンが入ってきた事を理由に、この後クエスト男爵領へ軍を向かわす。また、貴族の跡目争いも絡んでいるので内務卿にも現地に向かってもらうぞ」

「畏まりました」


 あっ、連続の地方遠征になって、内務卿の覇気が上がってきているよ。

 何はともあれ、僕達も準備をしないといけないね。


「ルーカス、アイビー、少し危険だがこれも経験という事で現地に向かわせる。こういう醜い争いがあるという事を、しっかりと勉強してくる様に」

「「畏まりました」」


 そして、ルーカスお兄様とアイビー様も現地に向かう事になりました。

 個人的には、アイビー様の従魔のアマリリスの能力が森での対応に役に立つはずです。

 今回は怪我人も多数出ているので、ルーシーお姉様に留守番を任せて皆で現地に向かいます。

 という事で、今回はこの軍団にも協力してもらいます。


「ブッチー、頑張ろうね!」

「ブルル」


 機動力に優れたポニさん軍団に乗って、僕達も現地に向かいます。


「辺境伯領の兵に加えて、辺境伯領駐留軍も現地に向かう。今回は私も行こう」


 ポニさん達の事をお願いに辺境伯様の屋敷に行ったら、辺境伯様も参加してくれる事になりました。

 流石に戦闘があるので、ミカエル達は戦闘終了後に現地に来てもらいます。

 ポニさん達には僕とリズとエレノアにサンディとイヨが乗り、ルーカスお兄様とアイビー様は普通の馬に乗ります。


「じゃあ、バイザー子爵領にゲートを繋ぎますね」

「「「おー!」」」


 一旦辺境伯領の駐屯地に全員集まって、それからバイザー子爵領に向かいます。

 スラちゃんがゲートや長距離転移を使う暇もないくらいだから、とにかく早く現地に向かわないと。

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