六百七十三話 緊急援助
閣僚とケーヒル伯爵様は集めた情報を元にして対策会議をするそうなので、僕も一緒に王城に向かいます。
その間に、スラちゃんが炊き出しと無料治療の助っ人を呼んでくるそうです。
大体の安全は確認できたので、恐らくエレノアとかがやってくるんじゃないかなって思っています。
「いやはや、これほどの罪を見抜けなかったとは。これは余にも罪があるな……」
積み上げられたカスバク子爵と男爵の罪状に、陛下も苦々しい表情をしていました。
罪状の数だけ、街の人が苦しめられた証拠でもあるんだよね。
「闇組織との関与抜きで取り潰しになるだけの罪状がある。統治不能の手続きをとり、当面は直轄地扱いにして住民救済にあたらせる。担当者の選別を行うように」
「はっ」
陛下が内務卿に指示を出したけど、僕も当面は貴族の統治はやめた方が良いと思うな。
住民の貴族アレルギーとかも起きそうだし、無難な統治が良いと思うよ。
「そして、簡易調査でもかなりの額を貯め込んでいるな。帳簿を元にして、市民に返還しないとならない」
屋敷と森にあった小屋から、かなりの額のお金を押収しています。
捜査の目が領地にいかないように税金はキチンと払っていたみたいだけど、それでもこの貯め込んでいた額にはビックリです。
没収したお金は、市民のために有効活用されるそうです。
「とにかく、目の前の食糧事情をどうにかしないとならない。王都でだぶついている食料の一部を回そう」
こうして、緊急の食糧援助をする事になりました。
王都から食料を積んだ馬車隊が、明日の朝一で現地に向かうそうです。
一日で馬車は着くから、今日をしのげは何とかなりそうですね。
「そして闇組織の残党がいるかもしれない。更に奴らに協力した者もおるだろう。軍も暫くは多めに駐留して、現地の兵と共に捜査と警戒に当たるように」
「「はっ」」
陛下の指示に、軍務卿とケーヒル伯爵様が答えていました。
闇組織がいなくなったとはいえ、当面の治安維持は喫緊の課題ですね。
飢餓輸出を主導した商会には兵が入っているけど、他にも怪しい人はいるだろうな。
こんな感じで会議は終了し、閣僚は担当者会議をするので僕は再びカスバク子爵領に戻りました。
「はーい、どーぞー」
「熱いですよー」
炊き出しの所では、ミカエルとブリットがニコニコしながらスープとかを配っていました。
更には、エレノアとアイビー様が治療を行っています。
手伝いの侍従を含めてかなりの人が集まっているけど、スラちゃんはどれだけの人を集めたのだろうか?
ここは、一番事情を知っていそうなティナおばあさまに話を聞いてみよう。
「スラちゃんが王城に行ってカスバク子爵領と男爵領の惨状を伝えたら大騒ぎになっちゃってね、急いで現地の人々へ対応しないとって事になったのよ」
カスバク子爵達がしていた悪事を知れば、そりゃ王城は大騒ぎになるだろうね。
王城では、王妃様とアリア様が色々と動いてくれているそうです。
「食料が豊富な辺境伯領とバザール子爵領で、緊急の買付を行う手続きをしているわ。明日には手続きを終えるはずよ」」
王都からの物資と辺境伯領とバザール子爵領からの物資で、当面の危機は脱するはずです。
因みに、ルーカスお兄様、ルーシーお姉様、サンディ、イヨはカスバク男爵領で活動しているそうです。
こうして夕方まで僕達は活動し、炊き出しの材料が無くなったのもあるので今日はこれで終了です。
明日からは本格的な救援活動を行う予定で、王都から追加の兵も来ます。
ジンさん達に任せっきりのバイザー子爵領が気がかりだけど、ジンさん達なら大丈夫だと思うしかないね。
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