六百三十一話 人質事件発生
一度王城にある軍の詰め所に移動して助っ人の兵を拾ってから、僕は王都郊外にある軍の駐屯地に向かいました。
ざわざわ、ざわざわ。
「な、何だこれは?」
駐屯地に到着すると、何故か兵が慌てていてとてもざわざわとしていた。
ジンさんはその異様な雰囲気に驚いていたが、僕が見てもこれは普通の状況じゃないぞ。
「おい、何があった?」
「ぐ、軍務卿閣下、ちょうど良い所に。後方支援部隊のガンコ侯爵と関係者が、人質を取って軍の施設で立て籠もっています」
「何だって!」
たまたま近くにいた兵を捕まえて騒ぎの理由を聞くと、とんでもない事が発覚したよ。
「軍務卿、そのガンコ侯爵ってまさかですけど……」
「そうだ、後方支援部隊の部隊長だ。あのタヌキ親父め、暴走したか!」
軍務卿が目茶苦茶怒っているけど、どうやら僕達の動きを察知して何かをしようとしたんだね。
僕達は急いで、騒ぎの原因となっている現場に急行します。
「部隊長、人質を解放して今直ぐ投降する様に」
「うるさーい、俺はもう終わりなんだ! 全てを目茶苦茶にしてやる!」
軍の武器庫が立てこもり現場になっていて、太った軍人が喚き散らしながら剣を抜いていました。
反乱を起こしているのは十人程で、一人が女性を羽交い締めにして喉元にナイフを突き立てています。
「ガンコ侯爵、終わりとは一体どういう事かね?」
「軍務卿、お前らが言うな! 俺を捕まえるという事は、既にバレているんだぞ!」
うーん、どうやらこのガンコ侯爵は何らかの方法で自分の立場が危うい事を知ったみたいですね。
しかし、こんな大事件を起こせば、余計に自分の罪が増えるだけだと思うのですが。
「一応言っておくが、武装解除して人質を解放する様に」
「けっ、ぽっと出の貴族の言う事なんて聞くか!」
ジンさんがガンコ侯爵に投降を呼びかけても、ガンコ侯爵は全く聞く耳を持たないぞ。
取り敢えず、人質救出が優先だね。
「スラちゃん、お願いね」
僕がスラちゃんに人質救出をお願いすると、スラちゃんは敬礼のポーズをしてからショートワープで人質救出に向かいました。
しゅっ。
「あっ!」
スラちゃんはあっという間に人質となっていた女性をこちらに連れてきて、女性を羽交い締めしていた兵は目の前から女性が消えてビックリしていました。
「うう……」
「あっ、お姉さん大怪我しているよ!」
「かなり痛そうなの……」
「なんと、これは酷い……」
救出された女性は顔も含めて全身がアザだらけで、暴行を受けていたのは一目で分かった。
リズは慌てて女性を治療したが、治療を受けた女性は気を失ってしまった。
「ぐっ、もはやこれまでか」
しゅっ、ぐさ。
「あー!」
ガンコ侯爵は人質にしていた女性をこちらに奪われて脂汗を流していたが、怒れるスラちゃんのお尻に触手グサッと攻撃を受けて叫び声を上げていた。
うん、今回は僕もプンプンだから思いっきりやって良いと思うよ。
「ぐっ、こ、ここには魔導具が置かれている。魔法は使えないぞ」
お尻を押さえながらもガンコ侯爵がまだ粋がるけど、別に僕達は魔法だけしか使えない訳じゃない。
ボキボキ、ボキボキ。
「軍務卿、アレクとリズがいるからある程度の怪我は良いよな?」
「喋られる程度にしておけよ」
「「「あわわわわ……」」」
拳を鳴らすジンさんとバトルハンマーを取り出したスラちゃんが、ゆっくりとガンコ侯爵達に近づいていきました。
バキ、ボカ、ドコン!
「「「あー!」」」
そしてガンコ侯爵達は、あっという間にジンさんとスラちゃんによってボコボコにされちゃいました。
うーん、軍人なのにガンコ侯爵って目茶苦茶弱いね。
「アレク君、コイツラを王城の詰め所まで送ってくれないか?」
「直ぐにゲートを繋ぎますね」
ガンコ侯爵はあっという間に拘束されて、僕が王城に繋いだゲートによって王城に運ばれました。
「女性を医務室に連れて行く様に。怪我は治ったが、意識が戻るのには時間がかかるだろう」
「はっ」
怪我をしていた女性は、直ぐに担架に乗せられて運ばれていきました。
思ったよりも大きな事件になっちゃったけど、一先ず制圧ですね。
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