四百九十六話 辺境伯邸での謝罪とランディ様が来た理由

 薬草採取が終わった僕達は、ルシアさんとククリさんと一緒に屋敷に戻ります。

 ルシアさんとククリさんの、今後の冒険者としてのスケジュールについて話し合うためです。

 ついでだから、王妃様とアリア様にも挨拶しましょうという事になりました。


「皆様、辺境伯様のお屋敷に向かわれました。ブランターク男爵領よりお客様がお見えになったのと、何でも冒険者ギルドで騒ぎがあったので話をするそうです」

「うわぁ……」


 冒険者ギルドでの騒ぎの件が、辺境伯様にも伝わってしまったのか。

 でも、よくよく考えたら王族が冒険者ギルドに向かったのに騒ぎがあったら報告が行くよね。

 ジンさんとかクラヴィーアさんはあちゃーって顔になっているけど、ルシアさんとククリさんは顔色が悪くなっちゃった。


「ルシア、辺境伯様に素直に謝りなさいね」

「はい。そうします……」


 騒ぎを起こした張本人に、クラヴィーアさんが話しかけていた。

 辺境伯様は良い人だから、きちんと謝れば許してくれるはずですよ。

 という事で、皆で辺境伯様の屋敷に向かいます。


「王妃様、アリア様、辺境伯様、この度の冒険者ギルドでの騒ぎ、大変申し訳ありませんでした」

「「「……」」」


 うん、流石にルシアさんはやりすぎな様な気がするよ。

 僕達が辺境伯様の屋敷の応接室に入った途端、ルシアさんが王妃様とアリア様と辺境伯様に綺麗な土下座をしたのだ。

 これには、ルシアさん以外の全員が固まってしまった。


「と、とにかく話を聞こうじゃないか。先ずは座ってくれ」

「はい」


 辺境伯様が声をかけてルシアさんが起き上がったので、皆でソファーに座ります。

 そこで改めて話をする事になりました。


「はあ、そういう事ね。話を聞いた時は何かあったのかと思ったわ」

「ルシアは、もう少し冷静な判断をする必要があるわね」

「己の実力を知る事は、冒険者に関係なく人として大切な事だ。それを忘れない様に」

「はい……」


 ルシアさんは、王妃様とアリア様と辺境伯様から大体僕達に言われた事を再び言われていた。

 まあルシアさんも、ここまでの大騒ぎになるとは思って無かったのだろうね。


「しかし、何というかルシアは本当に昔から変わらないね」

「うう、ランディ言わないで。今回の件は、流石にやりすぎだと反省しているのよ……」


 そして、やっぱりルシアさんと同級生だったランディさんからもツッコミを入れられていた。

 ランディさんの話しぶりを聞くに、ルシアさんは昔から色々とやらかしている様ですね。

 でもルシアさんがこれ以上ぼこぼこに言われない様に、話を変えないと。


「ランディ様は、何で辺境伯様にお会いになったんですか?」

「実は、文官を探す事にしたんですよ。少しずつ領内も落ち着いてきたので、人手が足りなくなったので」

「そうだったんですね」


 元々執事の不正に関与した侍従が捕まったから、ブランターク男爵領の文官が全体的に不足しているんだよね。

 と、ここで皆の視線がルシアさんとククリさんに向いた。

 正確にはククリさんの方に、です。


「うーん。ククリは優秀なんだけど、ククリがいなくなるとルシアを抑える人がいなくなるわ」

「そうなると、ルシアの成長待ちですわね。ルシアも文官としての才能はありますけど、もう少し自制してもらわないと」

「ランディ、クラヴィーア先輩、その言い方は酷いとおもいますわよ」


 ランディさんとクラヴィーアさんの話を聞いたルシアさんが、ぷんぷんしながら反論していた。

 とはいえ、ここにいる人はランディさんとクラヴィーアさんと同じ思いだったみたいで、ルシアさんを無視してうんうんと頷いていた。


「あはは……」


 流石に、ククリさんだけは困ったように苦笑していたけどね。

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