四百七十五話 事情聴取と今後について

 翌日になると背中に傷を負った侍従も意識を取り戻したので、車椅子に乗った状態で話を聞くことになりました。

 参加者は陛下と閣僚の他に、ティナおばあさまと僕とルーカスお兄様とジンさん。

 そして、バンクス男爵家嫡男のレガーロさんと側室と侍従です。

 因みに、赤ちゃん達はリズと一緒に子ども軍団と遊んでいます。

 ジンさんはこっちにいるけど、スラちゃんとかがいるから大丈夫でしょう。


「改めまして、バンクス男爵家の娘でバンクス伯爵家側室のレガリアと申します」

「私はバンクス伯爵家侍従のマルシェと申します。この度は、私の命を救って頂きありがとうございます」

「バンクス男爵家嫡男のレガーロと申します」


 三人の挨拶も終わったので、改めて話を聞きます。


「先ず伯爵家の子どもに関してですが、私の子どもが長男となり側室様のお子様が次男、そして正妻様のお子様が三男となります。私は男爵家出身ですので、伯爵家の後継に関係ないと言われて侍従の仕事をする様に命じられていました」

「実際には貴族家から嫁いだ娘の子どもなのだから、普通に継承権に関与するのだけどね」


 レガリアさんの話を聞いたティナおばあさまが、正妻と側室の言う事は馬鹿馬鹿しいと一刀両断しました。

 正妻と側室は、伯爵家で有ることにかなりのプライドを持っていたんだな。


「奥様方はご自身で子育てをされませんので、レガリア様と私で子育てをしておりました。昨日は私が二人のお子様の面倒を見ている時に襲撃に気づきまして、教会に行けば何とかなるかとの思いで駆け出しました」

「貴族家の子育てはまちまちだから、そこは何ともいえないわ。でも、昨日の貴方の判断は間違っていなかったわ」


 貴族家によっては、全ての子育てを侍従に任せる所もあるそうです。

 なので、今回のパターンも普通にありえるとの事です。

 それよりも、いち早く赤ちゃんを抱いて逃げた事が高評価です。

 あのまま屋敷に閉じこもっていたなら、赤ちゃんもろとも確実に殺されたでしょう。


「バンクス男爵家は、バンクス伯爵家と共に商会の運営にあたっております。しかし、正妻様と側室様が商会の資金を流用した形跡を確認しております」

「その情報を、もう少し集めておいて。今回の件と併せて追求材料にするわ」

「畏まりました」


 そして、正妻と側室が商会の資金に手を付けていた事がほぼ確定した。

 昨日捕縛された時も、沢山の宝石を身に着けていたっけ。

 赤ちゃんの事なんて何にも気にしていなくて、実際には自分の事で頭がいっぱいだったんだなあ。


「欲というのは本当に恐ろしい。金に目がくらむと、こうも人は醜くなるとは。赤子を殺そうとして、両者が大量の武装兵を送り込むなど言語道断だ」

「跡目問題は貴族にはつきものだけど、今回の件はあってはならないわ。バンクス伯爵家の将来が不幸なものにしかならないわ」

「なによりも、赤ちゃんが可哀想だわ。親なのに金に目がくらんで子どもの事を全く考えてないわ」


 陛下と王妃様とアリア様も、今回の事件を非難していた。

 母親が今回一番被害を受けるのは赤ちゃんだという事を認識していないのもあった。

 

「いずれにせよ、バンクス伯爵家の捜索は当分続く。側室と赤子は身を守る事を考えても、バンクス男爵家で見るしかないだろう」

「承りました。三人の赤ちゃんとも、我が家にて保護致します」


 レガーロさんはとても良い人で本当に助かりました。

 赤ちゃんも含めて、キチンと保護してくれそうです。

 

「とはいえ、処罰を決定するにはもう少し時間がかかる。今日はここまでにしよう」

「では、赤ちゃんの所に行きましょうね」


 陛下が話を聞くのは終了だと宣言したので、ティナおばあさまと一緒にリズの所に向かいます。

 レガリアさんとマルシェさんも、一緒に赤ちゃんの元に向かいます。


「「「お帰り」」」

「ただいま、皆良い子にしていた?」

「うん、赤ちゃんと一緒に遊んでいたよ」


 リズ達は、積み木で三人の赤ちゃんと遊んでいたようです。

 すると、三人の赤ちゃんがハイハイしながらレガリアさんとマルシェさんの所に向かっていきました。


「「「あー」」」

「これを見れば、誰が赤ちゃんの母親か一目でわかりますわね」

「そうですわね。何よりの証拠ですわね」


 三人の赤ちゃんに抱っこをせがまれているレガリアさんとマルシェさんを、王妃様とアリア様と一緒に皆が見つめていました。

 いずれにせよ、これから三人で仲良く成長して欲しいな。

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