三百九十話 ブラッディメイドさん
気を取り直して、皆で森に向かいます。
お姉さん達の他にも新人冒険者がいるので、一緒について行きます。
「この間帝国に行って、リルムちゃんの弟ちゃんと妹ちゃんにあったんだ」
「双子ちゃんなの。とっても可愛かったよ」
「そうかい、それは良かったね。確かリルムちゃんって帝国の皇女様だったけど、帝国にも皇子様が産まれたのかい」
「「そーだよ」」
いつも薬草採取で一緒になるおばちゃんと、リルムとサンディがお喋りしています。
リズとサンディは知り合いのお家に赤ちゃんを見に行ったと話をしているが、その知り合いのお家が帝国の皇城なのだ。
おばちゃんは昔からの付き合いだから全然大丈夫だけど、僕の隣でリズとエレノアの話を聞いていたお姉さん達はかなりびっくりしていた。
「あの、僕達の事は気にしないで下さい。冒険者活動をしている時は、特別扱いしないでとお願いしていますので」
「は、はあ……」
とはいっても初めて僕達と接する初心者の冒険者は、たいてい戸惑った表情になる。
これは慣れてもらうしかないよな。
そんな話をしながら森に到着。
「「「グルルルル」」」
寒いので獲物が少なくてお腹を空かせているオオカミの群れが、僕達に狙いを定めた様だ。
子どももいるしポニーもいる。
良いエサだととらえたらしいぞ。
ここで二人が剣を抜いて前に出て行った。
「お兄ちゃん、何かあったらサポートしてね」
「お姉様もお願いします」
「おう、思いっきりやってこい」
「クラヴィーアならオオカミは楽勝よ」
「「「「がんばれー!」」」」
「「ヒヒーン」」
僕達の前に出たのは、リリーさんとクラヴィーアさんです。
ジンさんとレイナさんも何時でも手助けできる準備をしているし、僕も魔法の準備をしておく。
リズ達とポニさん達は、リリーさんとクラヴィーアさんに声援を送っていた。
「「えーい」」
「グォーン」
「「「「がんばれー!」」」」
「「ヒヒーン」」
そしてリリーさんとクラヴィーアさんの戦いが始まりました。
リリーさんは大剣を振るって、オオカミの頸を豪快に切断していきます。
一方のクラヴィーアさんは、レイピアで正確にオオカミの急所を突いていきます。
戦い方は対照的だけど、リリーさんもクラヴィーアさんもかなり強いな。
これはリズ達とポニさん達のように、後から声援を送るだけで終わりそうだ。
「ふう、終わりましたね」
「久々に良い運動になりましたわ」
オオカミとの戦いはあっという間に終了。
やはりというかジンさんとレイナさんの妹なだけあって、リリーさんとクラヴィーアさんはかなりの強さだった。
「お兄ちゃん、私の動きはどうだった?」
「あ、ああ。良くやったよ」
でも戦い終わったリリーさんの姿に問題があった。
クラヴィーアさんは急所を的確に刺すから、ほぼ返り血が服に着いていない。
一方のリリーさんは豪快にオオカミの頸を切断したので、メイド服が返り血で血だらけなのだ。
リリーさんは大剣を構えて血だらけのメイド服でニコリとジンさんに報告していたけど、ジンさんもビビる程怖い姿だった。
「血だらけのメイド服だよ」
「侍従があんな大剣をぶん回しているぞ」
「流石はジンの妹って感じだな」
「ブラッディメイドが降臨したぞ」
僕達と一緒に着いてきた筋肉ムキムキの男性冒険者も、リリーさんを見て思わずビビる程だった。
流石に血まみれだと怖いので、スラちゃんがリリーさんに近づいて生活魔法をかけていた。
「ほらほら、新人はぼーっとしていないでこっちに来るんだよ。血抜きを教えるぞ」
「薬草の採り方は、リズが教えるよ!」
「「「はっ、はい!」」」
そして、いつもの様におばちゃんの血抜き講座とリズの薬草採取講座が始まった。
お姉さん達を含む新人冒険者達は、我に返っておばちゃんの元に向かって行った。
「ミカエルとブリットも、沢山薬草を採ろうね」
「「あい!」」
僕はミカエルとブリットに声をかけて、本来の目的である薬草採取に励むことになった。
色々あったけど、薬草採取は順調に終わりました。
「おい、リリーがきたぞ」
「ブラッディメイドが現れたぞ」
「あの、お兄ちゃん。何で私の事を見た冒険者が顔を逸らすの?」
「流石に俺も分からないぞ」
そして、冒険者活動にリリーさんとヴィクトーリアさんが参加する事になったのだが、リリーさんはジンさんの妹であると共にブラッディメイドというありがたくない二つ名のせいで、冒険者から恐れられる存在となってしまったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます