三百八十八話 ビキニアーマーとレオタードローブ

 ブリットが屋敷に来てから数日後、僕達は久々に冒険者活動を行います。

 参加するのは僕とリズとサンディに、ミカエルとブリット。

 それにジンさんとレイナさんです。

 ルーカスお兄様達やティナおばあさまは、王城で用事があるそうです。

 カミラさん達は、赤ちゃんの面倒を見るそうです。

 そして、この人達も今日の冒険者活動に参加します。


「冒険者活動って久々だよ。緊張するな」

「大丈夫ですわ。リリーは強いのですから」


 ジンさんの妹であるリリーさんと、レイナさんの妹であるクラヴィーアさんです。

 リリーさんは何故かメイド服を着て、ジンさんの聖剣よりも大きな剣を背中に担いでいます。

 何でも、汚れても良い服はメイド服しかなかったらしいです。

 一方のクラヴィーアさんは、騎士服みたいな服装でレイピアを腰に下げています。

 因みに、二人とも冒険者登録済みだそうです。

 

「ポニさん、ブッチー、ミカちゃんとブリちゃんを宜しくね」

「「ヒヒーン」」


 念の為という事で、ミカエルとブリットはポニさんとブッチーに乗っています。

 スラちゃんとプリンも二人にくっついているから、戦力的には問題ないでしょう。

 因みにブリットは、小さなシスター服を着ています。


「あれ? 何だろう。皆が遠巻きに見ている冒険者がいるぞ」

「何だろうね?」

「悪い人では無いみたいですよ」


 冒険者ギルドに到着すると、冒険者が遠巻きに見ている冒険者グループがいた。

 僕達も人混みをかき分けて近づいていくと、何故皆が遠巻きにその冒険者グループを見ていたのかが分かった。


「うう、絶対にこの格好は間違っているよ」

「昨日も周りからジロジロと見られたよね」

「お母さんの話を聞かなければ良かったよ」


 皆が遠巻きに見ていたのは、初心者と思われるお姉さんだ。

 問題はお姉さん達の服装にあった。


「ジンさん、レイナさん。何でビキニアーマーにローブとレオタードなんでしょうか?」

「俺に聞かれても分からないぞ。ビキニアーマーなんて初めて見たぞ」

「私も初めてだよ。何でローブにレオタードの装備なのかしら」


 お姉さん達の服装は、ジンさんとレイナさんも思わず困惑する服装だった。

 魔法剣士のレイナさんは動きやすい格好だけど露出は控え目だし、魔法使いのカミラさんやルリアンさんにナンシーさんもローブの下は普通の服を着ている。

 しかも最近のレイナさん達は、騎士服に似た服を着るようになっている。

 だからなのか、周りにいる冒険者達もお姉さん達に声をかけづらい様だ。

 しかもお姉さん達も、この服装がおかしいと思っているようだ。

 シーフっぽいお姉さんはチューブトップに短パンだけど、他のお姉さんの服を見ればかなりまともに見える。

 ルルーさんの大剣を担いだメイド服の方が、かなりマシに見えるぞ。


 トコトコトコ。


 そして、誰もお姉さん達に声をかけられない中、勇者達が近づいていった。


「ねーねー、さむくない?」

「もーふ、いる?」


 ミカエルとブリットが、手を繫いてお姉さん達に話しかけた。

 ミカエルとブリットの頭の上には、スラちゃんとプリンも乗っています。

 そしてミカエルは、ゴソゴソとマジックバッグを漁って毛布を取り出していた。

 そうです、今は冬なのです。

 これはとても重要な事です。


「うわーん、子どもにも気を使われた!」

「お母さんに騙された!」

「ちょっと、しっかりして」

「「うん?」」


 ミカエルとブリットに指摘をされて、とうとうビキニアーマーとローブにレオタードを着たお姉さんがテーブルに突っ伏して泣き始めた。

 シーフのお姉さんが二人を慰めているけど、ミカエルとブリットは何がなんだか分からない様だ。

 スラちゃんとプリンも、お姉さん達の反応にちょっと戸惑っている様だぞ。


「ジンさん、レイナさん。流石にお姉さん達に声をかけないと駄目ですよね」

「ああ、そうだな。ミカエルとブリットがトドメをさしてしまったからな」

「ギルドの売店に冒険者服が売っていたはずだよ。ちゃんとしたものを選んであげないとね」


 僕とジンさんとレイナさんは、やれやれといった感じでお姉さん達の方に近づいていった。

 今日の冒険者活動は、開始が遅れそうだな。

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