三百八十五話 急遽炊き出しに参加する事に

 教皇国での話し合いはこれで終了なのですが、ここで教皇様から僕達にある提案が。


「もしお時間が宜しければ、炊き出しにご参加頂けませんか?」

「そうですね。せっかくのご提案ですからお受け致しますわ」

「ただ、赤ん坊は城に戻してきますね」

「ありがとうございます。お子様は、安全の為にもお戻りされた方が宜しいですね」


 という事で、僕達も炊き出しに参加します。

 王城へルカちゃんとエドちゃんを戻し、皇城へアンドリューちゃんを戻します。

 そしてアンドリューちゃんの代わり、リルムが新たに参戦。

 子ども達は聖騎士の護衛を受けながら、張り切りながら広場に向かいます。


「あ! 導く者様だ」

「双翼の天使様もいるぞ」

「新年早々、縁起が良いわね」


 炊き出しが行われている広場に向かうと、街の人が僕達の来訪に気がついた様だ。

 僕達の方に向かって、声を上げたり手を振ったりしていた。

 そんな街の人の様子に気がついて、カレン様が僕達の方にやってきた。


「皆様、新年おめでとう御座います。話し合いに参加できずに申し訳ありません」

「おめでとう御座います。カレン様は大切なお仕事をされているのですから、お気になさらないで下さい」


 僕達の代表としてアリア様が応対してくれたけど、広場には沢山の人が集まっているし炊き出しを行う手も足らなそうだ。

 という事で、早速僕達も炊き出しのお手伝いを行います。


「ブリちゃ!」

「ミカちゃ!」


 炊き出しには孤児院の子どもも参加していて、ミカエルとブリットは思わぬ再会を喜んでいた。

 そんな二人の様子を見た街の人は、相変わらず仲が良いねって微笑ましく見ています。

 さてさて、僕達もスタンバイして作った物を配り始めます。

 どうも年始に教会が配るお菓子の様な物で、多くの街の人が炊き出し現場に集まっています。

 蒸しパンの様な形状で、蒸し器を使ってどんどん蒸されていきます。


「はい、どうぞ!」

「ありがとうね」


 出来上がったお菓子を、リズやエレノアにリルムが街の人に配っていきます。

 前に皇都でも炊き出しをした事があるので、特にトラブルなく対応しています。

 

「わあ、スライムがお菓子を配っているよ」

「しかも三匹もいるよ!」


 街の子ども達に大人気なのが、カレン様と一緒にお菓子を配っているスラちゃん達だ。

 元々カレン様と共にヒカリが一匹でお菓子を配っていたのだが、そこにスラちゃんとプリンが合流したのだ。

 スライムが触手を伸ばしてお菓子を配っているので、子ども達にとってはとても面白い光景の様だ。

 勿論、アリア様やティナおばあさまにケイリさんもお菓子を配っています。

 でも、大人の中ではジンさんが一番人気です。


「おお、再び導くもの様に会えるなんて」

「ありがたやー、ありがたやー」

「あの、俺は拝まれる様な存在ではないので」


 ジンさんは特に年配の方に人気で、中にはジンさんの事を拝んでいる人もいる。

 聖剣を持っているのもあって、教皇国内のジンさんの人気はかなりのものだ。

 気がついたら、ジンさんがお菓子を配っている列が一番長くなっていた。

 夕方になり、無事に炊き出しも終了。


「つ、疲れた……」


 流石のジンさんも、長時間に渡ってお菓子を配ったので疲れてしまった様だ。

 まあ、何事もなく終了したので良しとしておきましょう。


「皆様、お手伝い頂きありがとうございます。ささやかですが、本日配布しましたお菓子の残りをお持ち帰り下さい」

「「「ありがとー」」」


 レリーフ枢機卿が僕達へのお土産として、余ったお菓子を渡してくれた。

 少し多めに用意してくれたのだが、ここでジンさんが一言。


「レリーフ枢機卿、申し訳ないですがもう少し多めにお菓子を頂けますか?」

「ええ、それは問題ございません。ダメにしてしまうよりもずっと良いので」

「すみません。我が家に食いしん坊がいるもので」

「「「あー、そういう事か」」」

「ミカ、わかた!」

「ブリも!」


 ジンさんがレリーフ枢機卿にお願いした理由は、ミカエルとブリットにも分かる簡単な物だった。

 確かに食いしん坊が二人もいるからなあ。

 という事で、新年の各地の訪問はこれで終了です。

 王城と皇城にゲートを繋いでティナおばあさま達やケイリさん達を送り、僕達も屋敷に戻ります。


「もぐもぐ。うん、あっさりしていて何個でも食べられるね」

「そうだね、もぐもぐ、食後のおやつに丁度いいね」

「おい、お前ら。他の人の分も残しておけ」


 そして、ジンさんが持ち帰ったお菓子は早速夕食に出されて、食いしん坊二人によってあっという間に消えていったそうです。

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