三百六十二話 新教皇就任式

 広場に教皇と枢機卿が到着した様で、広場を取り囲む人から大きな歓声が上がっている。

 いよいよ新教皇の就任式が始まる。


「それでは、これから新教皇就任式を開始します」

「「「わー!」」」


 司会を務めるシスターが開式を告げると、周囲の人の歓声が更に大きくなった。

 そして、教皇とヤークス枢機卿が広場の真ん中に着くと、ぴたりと歓声が止んで静かになった。

 ヤークス枢機卿は教皇の前で膝をつき、祈りを捧げている。


「神の名の下、ここに新しい教皇を任命する。新教皇をヤークス枢機卿とする」

「謹んでお受け致します」


 そして、教皇は自身が被っていた教皇の帽子をヤークス枢機卿に被せた。

 この瞬間、教皇国に新教皇が誕生した。


「おお、ここに新教皇が誕生した。教皇国に神の祝福があらん事を」

「「「ヤークス教皇万歳!」」」

「「「教皇国万歳!」」」


 広場に集まった多くの人も、新教皇の誕生を祝福している。

 ここの所の懐古派の武力による暴走もあったから、皇都の住民も聖騎士出身の新教皇に期待する所があるのだろう。


「新教皇に就任したヤークスだ。未だ懐古派の脅威は消えていないが、教皇国を安定へと導きたい。そして、教皇国をより良い方向へ導いていく所存だ」


 新教皇に就任したヤークス教皇が、集まった多くの人に向けて話をした。

 確かに懐古派の脅威が去ったわけでは無いので、これからがある意味正念場だろう。


「それでは、この度の教皇国の国難に際し、大きな功績を残した者への表彰を行う」


 ヤークス新教皇の初仕事は、僕達への勲章授与式になる。

 僕達も席から立ち上がって、準備を行う。


「先ず、聖女様襲撃事件に際し、多大な功績を上げたブンデスランド王国の勇敢な若者に勲章を授ける」

「「「わー、双翼の天使様だ!」」」


 先ずはカレン様を救った件で、僕やルーカスお兄様に勲章が授けられた。

 事前の話の通り、ルーシーお姉様やエレノアもカレン様のリハビリに関与しているので僕達と一緒に勲章をもらいます。

 

「次に、大教会襲撃事件に際し、悪魔に心を売ったものを打ち倒した来賓の方々に勲章を授ける」

「華の騎士様もいらっしゃるわ」


 アホスタイル枢機卿は、僕の鑑定の通り悪魔に心を売ったものとして破門扱いとなった。

 また、勲章は近衛騎士やシェジェク伯爵とクレイモアさんの護衛の騎士にも授与された。


「また、幼いながらその身の危険を晒してまで聖女候補者を魔の手から救った勇敢なる天使様にも、教皇国より勲章を授与する」

「あい!」


 ミカエルが元気よく手を上げて勲章を貰うと、周りの人から多くの拍手がミカエルに送られていた。

 ミカエルは、ちょっと得意げな表情をしていた。


「最後に、導くもの様の聖剣が誕生した事を祝し、大教会の床につけられた傷を聖剣が生まれた際につけられた聖痕として認定し、博物館に展示する事にする」

「「「わー!」」」


 広場では、今日一番の歓声が上がっていた。

 あまりの歓声の大きさに、ジンさんはかなり驚いている。

 

「ジン様、皆様に聖剣を披露して頂けませんか?」

「あ、ああ」


 ヤークス教皇に促されたジンさんは、剣を抜いて頭上に掲げると剣に魔力を込めた。

 すると、刀身から金色の光が溢れたぞ。


「おお、何と神々しい光なのか」

「金色に輝く魔法剣は、見た事がないぞ」

「まさに聖剣の光じゃあ」

「ありがたやー、ありがたやー」


 魔力が刀身から漏れる雰囲気も相まってか、かなり神秘的な光景になっている。

 周りにいる人は、ジンさんの聖剣に祈りを捧げ始めた。


「ははは。いつまで剣を掲げればいいんだ?」


 当のジンさんは、剣を振り下ろすタイミングを見失ってかなり戸惑っていた。

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