三百四十一話 皇都での炊き出し
さてさて、肝心の炊き出しなんですが教会の前で並んでいる人が凄い事になっている。
念の為の護衛として、ポニさん達も呼び寄せる事にした。
炊き出しも量を作らないといけないので、仕込みにはスラちゃんとジンさんにも手伝ってもらう事に。
「すげー人が並んでいるなあ。流石は双翼の天使様ですな」
「いえいえ、そこは導く者様のご威光ですよ」
ジンさんとふざけているけど、目の前からかけられている声が凄いんですよ。
「聖女様だ! ご無事でいらしたんだ」
「双翼の天使様もいるぞ」
「導く者様もいらっしゃるなんて」
周りに集まった人が、僕達を指差して大フィーバーしているんですよ。
「こ、これは凄いですね」
「流石ですね。昨日のサイクロプス討伐の影響もあるのでしょうね。目の前で見ましたが、それは素晴らしい戦いでしたわ」
シャーリーさんは周りの熱狂にかなり驚いていたけど、ワーロード司祭は当たり前って表情をしている。
むしろ昨日のサイクロプスとの戦闘を思い出して、なんだかうっとりとしているぞ。
「はい、良いですよ!」
「おお、有難う。すっかり良くなったぞ」
治療の方は準備ができたので、どんどんと治療を進めていく。
相変わらずというか、リズは魔力が凄いのであっという間に病人を治していきます。
「ふむ、こちらは生薬の方が良いですね。処方しておきます」
「こんなに細かく診てもらえるのか」
「聖女様も熱心に勉強されていて、とても素晴らしいですわ」
更には生薬での治療も並行して行われます。
カレン様や聖女見習いに加えて、アイビー様やシスターもメモを取っています。
薬師も大忙しだけど、嬉しい忙しさの様だ。
そして、驚愕の光景が目の前で起きていた。
「いたいの、とでけー!」
「おお、足の痛みが消えたぞ。凄いなあ」
「えへへ」
何とミカエルが回復魔法を使っているのだ。
まだ初級クラスなので威力が弱いけど、小さい子どもが治療してくれるとあって老人に大人気だ。
「リズ、ミカエルに回復魔法を教えた?」
「教えてないよー」
リズに聞いてもミカエルに回復魔法の使い方を教えていないという。
スラちゃんとプリンに聞いても、フルフルと否定していた。
「ミカエルちゃんは、私が具合悪い頃から回復魔法を使っていましたよ」
「えっ!」
そこにカレン様からの追加情報がもたらされた。
ミカエルは一体いつから回復魔法を使える様になったんだ?
すると、ミカエルはこちらの話を聞いていたのか、振り返って満面の笑みで答えてくれた。
「えっと、れなとかみがおしえたー!」
「えー! レイナさんとカミラさんが犯人?」
「あ、あいつらは何を教えているんだよ」
思わぬ犯人に、ジンさんはガックリとしていた。
自分の奥さんが、いつの間にか小さい子どもに魔法の練習だけではなく回復魔法の使い方まで教えていたのだからだ。
まあ、回復魔法だけだしミカエルなら悪用しないと思ってそのままにしておこう。
というか、炊き出しの方が全然終わらないのだ。
食材を切って煮込んで提供する。
並んでいる人が多くて、一連の作業が終わらないのだ。
「流石は皆様ですね。普段の炊き出しの三倍は並んでいますよ」
「え!」
「なに!」
ワーロード司祭の言葉にびっくりした。
どんだけ人が並んでいるのですか。
食材の方が尽きそう……追加された。
ジンさんと必死になって、食材を切って行きます。
因みにこれだけの人が集まっているので、懐古派がちゃっかりと紛れ込んでいます。
いますが、そこはセキュリティが働いています。
かぷ。
「うわー!」
怪しい人はポニさん達が次々と引っ張って行き、聖騎士の前に突き出します。
アマリリスもポニさん達に同行していて、糸でぐるぐる巻きにしていきます。
ブッチーなんかは、ついでと言わんばかりに物陰でこちらの様子を見ている懐古派も捕まえてきます。
「うーん、まるでゴキブリホイホイかネズミホイホイだなあ」
「なんだ? そのゴキブリホイホイってのは」
「粘着性のある物を紙に塗って真ん中にエサを置いておくと、ゴキブリやネズミがエサを食べようとして粘着性のあるものに引っ掛かるんです」
「ははは。成程、奴らがゴキブリで俺らがエサでポニーが粘着性の物質か。確かにそうだな」
まるで僕達が、怪しい人ホイホイになっているけどね。
そりゃカレン様もいるのだから、懐古派にしたらよだれが出るほどの美味しくてたまらないエサだろう。
捕まえた懐古派の対応で聖騎士は凄く忙しいけど、そこは頑張って欲しい。
「これは素晴らしい。ただの炊き出しのはずなのに、懐古派まで沢山捕まえるとは」
ワーロード司祭も思わずびっくりする成果だった。
こうして、皇都での炊き出しは大成功の内に終わったのだった。
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