三百三十二話 教皇国へ出発の朝

 そして僕達が教皇国に出発する日の朝になった。

 今回はサンディを連れて行けないので、チセさんにサンディとミカエルを頼みます。


「チセさん、サンディとミカエルを宜しくお願いします」

「はい、お任せ下さい」


 僕の屋敷の前に皆集まります。

 僕が留守の間、チセさんにサンディとミカエルの事をお願いする。

 できれば毎日顔を見せに帰りたいけど、教皇国の状況如何では難しいかもな。


「アレク様、リズちゃん、どうかご無事で」

「にーに、ねーね」

「サンディ、ミカちゃん」


 サンディとミカエルが僕とリズに抱きついてきたので、僕とリズも二人を抱き返します。

 一週間とはいえ、僕とリズが不在になるのは不安だよね。


 さて、僕とリズに同行するジンさんはというと、


「しっかり護衛をこなしなさいね」


 バシ!


「アレク君とリズちゃんに怪我させないでね」


 バシ!


「いてーな、ちょっとは手加減しろ!」


 レイナさんとカミラさんが、こっちに向かってくるジンさんの背中を遠慮なく叩いていた。

 良い音がしていたな、背中にもみじマークが出来ていそうだ。


「辺境伯様、イザベラ様、皆をお願いします」

「うむ、こちらは心配せずに頑張ってくるのだぞ」

「気をつけて行ってきてね」


 辺境伯様とイザベラ様も僕の屋敷の前にやってきて、僕とリズに声をかけてくれた。

 レイナさんとカミラさんに背中を叩かれて、顔をしかめながらジンさんもやってきた。

 教皇国に向かうメンバーが揃ったので、僕達は王城にゲートを繋いだ。

 王城のティナおばあさまの部屋の前に到着すると、直ぐにティナおばあさまが出迎えてくれた。

 ルーカスお兄様達と、カレン様にサイファ枢機卿も一緒です。


「ティナおばあさま、サイファ司祭様お待たせしました。いつでも教皇国に向かえる様に準備は万端です」

「私達も準備万端よ。早速現地に向かいましょうか」

「はい」


 ティナおばあさまが私達と言ったのは、サイファ枢機卿も皇都までの道のりに同行する事になったのだ。

 近衛騎士も八人護衛に付くというし、ジンさんもいるから何かあっても大丈夫だろう。


「道中気をつけてね」

「はい」


 王妃様に声をかけられてハグされた。

 アリア様やルーカスお兄様達とも順にハグしていく。

 その後、僕達は王城の兵の詰所で馬車と馬と飼い葉などを受け取って、早速教皇国の国境の街に向かった。


「今回は教皇国のプライドにかけて双翼の天使様を皇都まで安全に送り届けると、ヤークス枢機卿が特に気合を入れておりました」

「それであれだけの聖騎士の護衛が付くのですね。全員良い方なので、安心なのですが」


 グレアム司祭に挨拶をとの事なので教会の施設に向かったら、教会の庭に聖騎士がずらっと待機していた。

 念の為に鑑定で聖騎士を軽く見て問題ない事は分かったけど、聖女様襲撃事件があったとはいえ何だか凄い事になってきているなあ。


 早速出発するとなったので教会の庭に出ると、リズとスラちゃんとプリンが聖騎士が連れてきている馬の側で何かをしていた。

 ジンさんはというと、聖騎士と何かを話している。

 何か問題でもあったのかな?


「お兄ちゃん、おばあちゃん。お馬さんがお腹壊していたの。治療したから大丈夫だよ」

「どうも、飼い葉の中に毒草が混じっている様だな。人為的に混入された可能性が高いぞ」


 おいおい、出発前からとんでもない事になっているぞ。

 流石にサイファ枢機卿とグレアム司祭も、リズとジンさんの話を聞いて慌てていた。


「なんと、そんな事が起きてたのですか!」

「しかし、流石はお二人です。既に対処されていたとは」


 サイファ枢機卿とグレアム司祭に対して、聖騎士とジンさんが追加報告をしていた。


「飼い葉は、その日に食べる分をまとめて管理しております。確認した結果、今朝与えた飼い葉のみに異物が混入しておりました」

「道中の飼い葉の管理の仕方は問題ない。となると、飼い葉を作った段階で誰かが意図的に異物を混入させた可能性が高いな」


 ピンポイントで今朝食べる分に異物を混入させるとなると、僕達が今日ここに来ると分かっていて飼い葉に異物を混入したんだな。


「対応は聖騎士に任せましょう。幸いにも馬も軽症だけど、道中何かしらの事を仕掛けてくる可能性もあるでしょう。そちらを警戒しないといけませんね」

「魔物はリズが倒すよ!」

「お前は護衛される立場だろうが」

「えー」


 ティナおばあさまの言う通り、道中の事も気になる。

 馬を弱らせて魔物を仕向ける事も考えられる。

 リズやジンさんの漫才ではないけど、僕も道中は気をつける様にしないと。

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