二百八十八話 プリンはほどほどに
「お兄ちゃん、プリンお代わり!」
「プリー!」
「もう今日はないよ。また明日だよ」
「「えー!」」
もう寝る前なのに、リズとミカエルはプリンが食べたくて駄々をこねています。
教皇国との国境でミルクプリンを食べて以降、我が家では何故か僕がプリンを毎日作っています。
ゼラチンを使ったプルプルプリンや湯煎して作るプリンなど、幾つかパターンを分けています。
スラちゃんとプリンが国境警備隊のお手伝いをする度にプリンの材料を買ってくるので、一時期冷蔵庫の中身がプリンだらけになってしまった。
なので、お隣にあげたりして食べる数を制限する様にしたのだ。
「お兄ちゃんが作ったプリンの方が、売っているプリンよりも美味しいの!」
「おいちーの!」
「そもそも、もう寝る前でしょうが。今日もプリンを食べたでしょう?」
子ども向けに少し甘めに作ったら、色々な人に好評になってしまい、今や何処かに行くたびに自家製プリンをお土産に持っていっている。
アレルギーさえなければ、無添加のプリンだもんな。
ぶー垂れるミカエルを抱っこして、同じく不満顔のリズを引き連れて寝室に向かった。
「「「あっ」」」
「皆、寝る前って言ったでしょうが……」
部屋のテーブルの上では、サンディとスラちゃんとプリンがお菓子を食べていた。
ここのところスラちゃんとプリンはお菓子を大量に貰っていて、処理に困っていたんだよね。
でも、寝る前にお菓子は食べないって決まりだったはず。
「三人とも、明日はプリン抜きね」
「「「えー!」」」
サンディとスラちゃんとプリンは、がくりと項垂れてショックを受けている。
三人にとっても、僕の手作りプリンは好物なのでお仕置きとしての効果は大きい。
皆色々と諦めて、寝る事にしたのだった。
「こんな事があったんですよ……」
次の日の朝、たまたま用事があってお隣のジンさんの屋敷に行った時に昨晩あった事を愚痴っぽく話していた。
するとジンさんは、視線をカミラさんとレイナさんに向けた。
カミラさんとレイナさんは、さっと顔ごと視線を外したぞ。
「あの二人もな、昨晩冷蔵庫を開けてお菓子を食べていたんだよ。妊婦なのにやっている事がまんまガキと同じとは」
「あはは、そんな事があったとは。じゃあ食べ過ぎはお腹の赤ちゃんにも良くないし、二人の分のプリンは持って帰りますね」
「おう、そうしてくれ。そこまでしないと、子どもの為にならないな」
「「そんなー!」」
カミラさんとレイナさんはオーバーリアクションっぽく悲しんでいるけど、ここはお腹の中の赤ちゃんの為にも我慢してもらおう。
こうして僕は、暫くの間プリン作りを控える事になったのだった。
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