二百八十四話 新しいお友達(人ではない)

 二泊三日のサーゲロイド辺境伯への出張も終わり、聖女様を迎える為に様々な準備が始まった。

 とは言え僕達がやる事はあまり多くなく、スラちゃんかプリンのどちらかを教皇国との国境警備兵に朝連れていって夕方迎えるくらいだった。

 なので、勿論普通の勉強も行います。


 今日は朝イチでプリンを教皇国との国境に送った後、王城からティナおばあさまとルーカスお兄様達を連れてきます。

 近衛騎士もついて、とある事をするらしいです。

 皆で、隣にある辺境伯様の屋敷に移動します。


「「「うわあ、小さなお馬さんだ!」」」


 庭にいたのは騎馬隊が使う馬よりも小さめの馬だ。

 これはもしかしてポニーかな?

 五頭の馬が馬丁に従われながら僕達を見ていた。


「そろそろ儀式とかで馬を扱う様になるけど、まだ馬に乗るには小さいからポニーを用意して貰ったのよ」

「この子達は兄弟や従兄弟の関係でとても仲が良い。暴れる事もないので、小さいアレク君達にも馬に慣れる為にちょうど良いと思ってな」


 辺境伯様の屋敷にある厩舎に普段はいるという。

 確かに人懐こい表情をしているぞ。


「先ずは紹介するか。クリーム色の馬がポニで、五頭のリーダーだけど女の子だ」

「おお、ポニさんだ!」


 ポニさんはつぶらな瞳が特徴的な優しそうなポニーだ。

 ポニさんは、そのつぶらな瞳で僕の方を見ているぞ。


「茶色とシロの斑模様の子はブッチーだ。ちょっとイタズラ好きな男の子だ」

「でも、とても可愛いよ」


 ブッチーはなぜかリズとスラちゃんの方を見ていた。

 イタズラ好きでリズとスラちゃんと息が合うとなると、暴走しそうな気もするぞ。


「栗毛の子はマロンだ。穏やかな性格の女の子だ」

「綺麗な毛並みですね」


 マロンは本当に綺麗な栗色だ。

 乗馬としてもとても良さそうだ。


「黒い毛の子は黒鹿毛で、カゲと呼んでいる。運動神経抜群の男の子だ」

「凛々しい顔つきをしてますわね」


 カゲは見栄えのある馬体をしている。

 黒い毛並みが本当に綺麗だ。


「最後が芦毛のユキだ。女の子だけど、男っぽい所もあるな」

「ルーカスお兄ちゃんが乗ると、リアル白馬の王子様だね」


 最後のユキもとても綺麗な白い毛並みだ。

 少し強気な瞳をしているぞ。


「先ずはコミュニケーションを取る為にブラッシングをしてあげましょう。このブラシを使うわよ」

「結構毛が硬いね」

「本当だね」


 リズとエレノアはブラシの毛をちょんちょんと触ってびっくりしている。

 馬だと、金属のブラシもあるよね。

 各自思い思いにポニーに近づいてブラッシングを始めた。


「よっと、こんな感じかな? 背中の方は台に乗らさないと出来ないな」

「プッチー、気持ちいい?」

「目がとろんとして、気持ちよさそうですわ」


 ポニーといえども一メートル以上の大きさがあるので、小さい僕達には中々大変だ。

 ルーカスお兄様やアイビー様はそこそこ身長があるけど、僕達は台に乗る必要がある。

 ブッチーはゴロンと寝転んで、リズとスラちゃんのブラッシングを受けていた。

 既に息が合っている感じだな。


「次はポニーを引いて歩いてみましょう。この子達なら大丈夫よ」

「「「はーい」」」


 僕達の数に対してポニーが少ないので、順番にポニーを引いて歩いて行きます。

 

「おお、結構力がありますね」

「ポニーといえども馬ですから。小さな馬車を引く事もできますよ」

「え? そうなんですね」

 

 そういえば、ポニーの引く子ども用の馬車とかあったよね。

 僕はポニさんと一緒だけど思ったよりも力が強いから、うまくリズムを取らないといけないね。

 他の人もうまくポニーを引いて歩いていたよ。


「ほら、リズちゃんとスラちゃん。危ないから、ちゃんとプッチーの手綱を持って歩いて」

「えー」

「ヒヒーン」


 うん、やっぱり思った通りになった。

 リズとスラちゃんとブッチーの相性が良いから、リズは手綱を持たずにすたすたとブッチーと歩いていた。

 ブッチーもリズとスラちゃんとおしゃべりしながら歩いている様だ。

 ティナおばあさまから注意を受けたら、リズやスラちゃんだけでなくブッチーまで不満そうな声を上げている。

 このコンビから危険な香りがしてきたぞ。

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