第三百八十九話 サトーの結婚式

「それでは、新郎の入場です」

「お兄ちゃん、頑張ってね」

「ああ」


 アナウンスと共に教会堂のドアが開いた。

 ミケ達の声援を背に受けながら、中を進んでいく。

 因みに司会はまたしてもアルス様のお姉様だ。

 

「お、新郎のお出ましだぞ!」

「サトーさん、頑張ってね」


 うん、来賓の数が半端ない。

 国内だけでなく海外からの来賓もいるし、竜王妃様達もいる。

 因みに一番最前列のうちのスペースは、フラワーガールとフラワーボーイを務める子どもが多いので、現時点では席がスカスカだ。

 平常心と心の中で唱えながら、枢機卿の前に立った。

 

「それでは新婦が可愛らしい子ども達と共に入場します。拍手で迎えて下さい」

「「「わー!」」」


 ドアが開くと、歓声と共にエステル達と子ども達が入ってきた。

 リングボーイとリングガールは、ウィリアム様にルーナちゃんとオーウェン皇子にベラ皇女とリディア公女。

 エステルは、陛下と共にマシュー君と手を繋いでいる。

 リンもソフィーもジュリエットも、父親役と共に子ども達とも手を繋いでいた。

 既に両親がいないフローレンスは、マチルダとコタローと手を繋いでいる。

 実は誰がフローレンスと手を繋ぐかで、壮絶なじゃんけん大会が開かれた。

 負けたメンバーがフラワーガールやフラワーボーイをやっている。

 それでも来賓のウケはかなり良く、皆笑顔で拍手を送っていた。

 そしてエステル達を一人ずつ受け取り、祭壇の前に並んだ。

 ミケ達も従魔たちも席についた。


「ごほん、それでは今から神様に結婚の報告を始める」


 枢機卿の言葉により結婚式が始まった。

 教会堂内もシーンと静まり返った。


「では、汝サトー・フォン・ライズは、エステル・テラ・エストランド、ソフィー・テラ・コルデジア、ジュリエット・テラ・オリエント、リン・フォン・バスク、フローレンス・バーツを妻とし、これを終生愛する事を誓いますか?」

「誓います」


 同時に五人と結婚するから、とても長くなってしまった。

 何とか言い切った枢機卿に対して、俺は一言で良いのが救いだ。


「次に、エステル・テラ・ブンデスランドは、サトー・フォン・ライズを夫とし、終生愛する事を誓いますか?」

「はい、誓います」


 エステルに続いてリン達も宣誓をした。

 ここまでは何もトラブルはない。


「それでは指輪の交換を」


 お互いに結婚指輪を指にはめる。

 流石はドワーフ自治領の親方が作ったリングだ。とても出来が良い。


「では、誓いの口づけを」


 そういえば、実は口づけしたことあったっけと思ったので、勢いで五人と口づけをした。

 俺と同じ事を思ったのか、エステル達も頬が赤くなっていた。


「おお、ここに新たな夫婦が誕生しました。盛大な拍手を」

「「「おめでとう!」」」


 来賓の方へ振り返ると、皆拍手をして祝福してくれた。

 王妃様達は、ハンカチで目尻を押さえていた。

 ミケ達も従魔達も、一生懸命に拍手をしている。


 これで全て終われば良かったのだが、案の定邪魔が入った。


 ズドーン、ズドーン、ズドーン。


 突然、何かが爆発するような音がし始めた。

 教会の外で何かが起きた様だ。

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