第三百十九話 教祖の最期
「流石は聖女サトーだな。既に状態異常回復をかけているとは」
「ここに着た時点で、何だかおかしいと思ったからだよ」
「え? どういうこと、サトー」
「こいつは、かなり薄い状態異常の魔法を俺達にかけていた。俺らと話している間に、少しずつ動けなくするようにしようとしていたんだ」
エステルが俺に聞いてきたが、流石はマッドサイエンティスト。
じわじわとこちらが弱ってくる手を使ってきた。
姑息な手を使ってくる。
「では、始めるとするか」
教祖は、手を上げて黒い光の様な物を放出してきた。
俺は咄嗟に防ぐのではなく、聖魔法で打ち消した。
やはり、何かの状態異常の魔法だ。
そして、この魔法が効いてしまったのか、このフロアにいるアヘンを吸っていた人が、幼い子も含めて全く動かなくなってしまった。
恐らく、俺達と話していたときに放っていた状態異常の魔法の影響もあるだろう。
「ハハハ、流石に警戒するか。楽しいぞサトーよ」
「こっちは、ちっとも楽しくないぞ。周りの人が全て動かなくなったぞ」
「所詮は観察対象だ。使い物にならなくなったものは、排除しないとならない」
やはりこいつは倫理も何もない。
極めて危険な人物だ。
俺も、こっそりと溜めていた魔力を一気に開放する。
「はっ!」
ガキン!
空間破断剣を教祖に使うが、何かのとても硬いものに弾かれた。
「くっそ、なんて硬さだよ」
「それでは、儂らが一気に決めよう」
白龍王が前に出てくると、人の状態で口からブレスを吐いてきた。
うお、凄いな。
口からぼうぼうとブレスを放っても、何かの丸いものに防がれて直接の効果はない。
しかし、後ろにあった祭壇や何かの像は全て消し飛んだ。
「成程、これは硬いのう」
「なら、全員でやりましょう」
白龍王が呟くと、白龍王の奥さんが全員でやればいいと言ってきた。
それにニヤリと笑う白龍王。
そして、無言のままこちらにやってきた龍の皆様。
「「「ゴアー!」」」
うお、すげー!
ドラコ達を除く全員で、全力のブレスを仕掛けている。
あーあ、建物に大きな穴があいて床も吹き飛んでいったぞ。
「ふむ、これでも効かないか」
「普通じゃないですね」
白龍王夫妻がポツリと漏らしたが、本当に効いていない。
教祖の背後はすべて吹き飛び、空が見えている。
しかし、教祖の周りだけは何ともない。
一体、どうなっているんだ?
「はあ!」
「せい!」
エステルとリンが斬りかかるが、それでも攻撃が届かない。
物理も効かないのか。
教祖を覆っている、謎の物体をどうにかしないといけない。
「ビアンカ殿下、温度差で破壊できるかやってみましょう」
「うむ、何もやらないよりはよい」
俺が、教祖の周りに魔法障壁を張り、先ずはララとビアンカとサファイアにスラタロウで、一気に強力な氷魔法をかける。
かなりの温度低下になったはずだ。
「いくわよ!」
そして、続けざまにエステルとリリとスラタロウで、教祖の周囲を炎魔法で超高温にする。
念の為に、五分近く高温にする。
これなら、中も蒸し焼きになって持たないはずだ。
「ハハハ。中々の熱さだったが、この障壁は破れないぞ」
未だに教祖の障壁が破れない。
しかし、熱さは感じると言っているし、現に教祖は汗をかいていた。
もしかして、これならいけるか?
俺は、魔法障壁を教祖の障壁にピッタリとくっつくように展開した。
「うぐ、気がついたのか」
「もしやと思ったよ」
「ぐあ、い、い、息が」
展開して五分。
思った通り、障壁の中の酸素がなくなってきたらしい。
教祖は、苦しそうにもがき始めた。
今回、魔法障壁を原子も通らないイメージで展開した。
更に五分。
「……」
教祖は完全に沈黙した。
魔法障壁を解いても、何も動かない。
糞尿を撒き散らしているので、生活魔法で綺麗にして教祖に近づいていく。
「死んでいます」
教祖の脈をはかったが、完全に止まっていた。
「サトー、何をしたの?」
「うーんと、呼吸をする元を止めた。鉱山とかで呼吸できなくて死んじゃうのと同じ事」
「そっか」
エステルは、あまり深くは聞かなかった。
俺の正体が、バレてしまったのもあるのかもしれない。
「ふむ、周りの人間も全て死んでおる」
「あの教祖の魔法の影響か、薬物の影響かは分からないですね」
「それは仕方ない。龍が派手に建物を壊してくれたお陰で、こうして空気も抜けておる」
ビアンカ殿下は、余計な事を何も言わなかった。
ある意味、助かった気がした。
そして、ミケが俺にギュッと抱きついてきた。
ミケも、正体がバレたのが不安なんだろう。
俺の正体がバレるという事があったけど、教祖は倒した。
これで人神教は終わったと切に願いたい。
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