第三百十話 誰もいない行政の建物
「誰かいますかー?」
全員で行政を行う建物に入って行くが、全く人の反応がない。
ミケが尋ねる声を出しても、フロア内に虚しく響くだけだった。
「何々? 一階が総合受付と市民関係で、二階が農商関係。三階にここのトップの部屋というわけか」
「なら三階に向かいつつ、手分けして他のフロアを捜索しましょう」
「リンの案が妥当じゃな。一番上は、サトーと妾で向かおう」
という事で、皆で手分けして建物の捜索を行う。
ざっと状況が分かればいいので、細かくは確認しない。
「さて、目的の部屋についたのだが」
「ここも鍵が開いているのう」
ビアンカ殿下と共に建物の三階に上がり一番偉い人の部屋の前についたが、ここも施錠されていない。
部屋に入ると荒らされている様子は全く無く、つい数秒前まで普通に仕事が行われていたと言われても不思議ではなかった。
「机の上の書類も、特段変わった物は無いですね」
「だが、貧困が進んで困っている様子は伺えるな」
ビアンカ殿下と共に部屋に置かれている書類を見ているが、人神教国は食料の供給が不足してこのままだと冬を越せないとあった。
どうも以前はブルーノ侯爵領から麦を不正に輸入していたが、それが途絶えたのが一番の原因らしい。
でも、これは不正を行っていた結果だから自業自得としか言えない。
そして、ワース商会にワース金融も機能しなくなったので、お金も入らなくなった。
元々大した収入源もなく、国家レベルの自転車操業の崩壊となったわけで、そのしわ寄せが一気に住民に向いたのか。
「なので、王国に対する戦闘も行う余力が無く、全国民を魔獣化とする呆れた作戦が実行されたわけか」
「どうも、あのバカと書かれた文書も、人神教のトップが人神教の上位者の子どもに書かせた様じゃのう」
「という事は、やはり人神教本部に乗り込まないと話は決着しませんね」
特にこれといった内容の物もなかったので、一番偉い人の部屋の捜索はここまでとする。
「あ、サトーも部屋の捜索終わったの?」
「終わったよ。大したものはでてこなかった」
「こっちもだね。下のものは普通に仕事していたんだね」
下の階の部屋の捜索を終了して、こちらにやってきたエステルと合流した。
どうも、どの部屋も特に変わった物はなかったという。
どんなに下が頑張っても、上がアホをやったので駄目になった例だな。
「一旦、建物から出ますか」
「そうじゃのう」
結局めぼしい事は分からなかった。
下が頑張っても、上がクズだというのだけ分かった。
「じゃあ、本拠地に乗り込みますか」
「何だか暇だから、熱烈な歓迎して欲しいな」
「全く同意だ」
あの、ドラコとルシアの母親の言葉に皆頷かないの。
余りに暇だから、オリガやマリリさんですらウォーミングアップを始めている。
そんな皆さんを引き連れて、とっても豪華な寺院へ向かっていきます。
うん、ここだけ警備がとっても厳重だ。
だから皆さん、そんなにワクワクして戦いができるぞと、堂々と話さないで下さい。
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