第二百八十四話 公国からの難民

 難民ってどんな人だと思いつつも、今日も仕事をこなす。

 レイアは専従のメイドに見送られたのが嬉しいのか、ニマニマしている。

 と、再び内務卿が部下を連れて現れた。


「サトー、昨日言った難民の内一人が重病らしい。悪いがみてくれないか?」

「それは大変です。宰相、行ってきます」

「サトーの事だから大丈夫だと思うが、くれぐれも失礼のないように」

「はい」

「レイアも行く」


 俺とレイアは、内務卿と部下に連れられて王城の一室に着いた。

 一見して宿泊施設にも見えるが、ここが保護施設だという。


「サトー。最初に話すが、難民は全て女性だ。公国王の娘と侍従だ。今回は侍従が病気だという」

「分かりました。迎賓館でも全く問題無いクラスの難民ですね」

「正式に国賓として来た訳ではないので、それは難しい。外務卿も悩んでいたよ」


 内務卿は苦笑するが、何か秘密があって国に来たんだ。

 先ずは、健康な体にしないと。


「ジュリエット様、治療をできる者を連れてきました」

「申し訳ありません。どうぞお願いします」


 内務卿が、部屋の中にいる人に問いかけた。

 随分と若い声が聞こえて、中に通された。

 部屋の中に入ると、十人の女性が部屋にいた。

 侍従と思われる人物は、十五歳から二十歳程。

 ベットで寝ている少女を心配そうに見つめている、エステル位の年齢の人がジュリエット様か。

 うん、他の人とオーラが全然違う。

 淡いブルーの長い髪で、目の色も濃い青だ。

 エステルよりも胸が大きい。

 流石にフローレンスには勝てないけど。

 皆さん長旅からか体中に小さいを負っているが、先ずはこのベットで寝ている小さい子だ。

 この子も、よく見るとジュリエット様にそっくりだな。


「失礼します。先ず診察をします」

「お願いします。リディアをお願いします」

「レイア、他の人を見てあげて。長旅で、怪我や病気を患っているかも」

「分かった」


 公女様からも言われたので、ここは頑張らないと。

 熱があるけど、全身から淀みが確認できる。

 これって、もしかして。

 念入りに、体を聖魔法で治療する。

 更に、生活魔法で体も綺麗にする。

 

「う、うーん」

「リディア、大丈夫? リディア!」


 リディアと呼ばれた少女が、目を覚ました。

 ジュリエット様が、心配そうに目を覚ました少女に声をかけている。


「体力が回復するポーションです。不味くないですから」

「リディア、ゆっくりでいいから飲んでね」


 少女は、ゆっくりとポーションを飲み込んだ。

 これで一安心だな。


「うぐぅ」

「ぐわぁ」

「あなた達は悪い人」


 後ろで何か物音が聞こえたかと思ったら、レイアが二人の侍従を取り押さえていた。

 続けざまに、もう一人取り押さえた。

 

「あなたも、何か悪い事を企んでいますね?」

「ぐっ、何故分かった?」


 俺も、直ぐにジュリエット様の後ろにいた女性を取り押さえる。

 ふう、刃物を使おうとしたけど、無事に抑えられた。

 最近、探索で善悪の区別が何となく分かるようになった。

 この人は真っ黒で良く分かった。 レイアが捕縛した三人も真っ黒だ。

 それ以外の人は問題ない。


「内務卿、軍務卿に連絡を。捕まえたのは、間違いなく人神教国の暗殺者です。この少女が具合が悪くなったのは、毒を使われたからです」

「パパの言うことに間違いない。この人達、真っ黒」

「分かった。おい、直ぐに軍に連絡を」

「はい」


 内務卿は、直ぐに部下を走らせた。

 その間も、俺とレイアが捕まえた人物から視線を逸らさず威圧する。

 ジュリエット様と侍従は、身内に裏切り者がいた事と毒を使われていた事に身震いしていた。

 直ぐに軍務卿と兵がやってきた。

 何故か、ビアンカ殿下にミケとエステルもついてきているが。


「成程、こういう事だったのか。武器の所有を確認した後に、隔離牢で尋問を行うように」

「「「は!」」」


 おや?

 こいつらを、何やら厳重な所に連れて行く様に指示したぞ。

 それに、軍務卿だけでなくビアンカ殿下やミケにエステルも納得した感じで頷いている。


「ここには外部の目がある。場所を移そう」

「どこに行きますか?」

「一番手っ取り早いのは、サトーの屋敷じゃ」

「何で毎回うちになるんですか……」


 文句を言いつつ、このメンバーでうちに移動した。

 直ぐに、来客用の部屋にリディアと呼ばれた少女をベットに寝かせた。

 流石に内務卿の部下と侍従は話せない内容だと言うので、フローレンスに頼んで部屋の外に出てもらった。


「後は閣僚を呼んでこよう」

「はいはい、直ぐに行きますよ」


 重要な話なので、陛下と閣僚を連れてきた。

 何故か王妃様達もついてきた。

 王妃様は、再び眠った少女の頭を撫でつつジュリエット様の方を向いた。


「久しぶりね、ジュリエット」

「お久しぶりです。エリザベス様」


 おや?

 二人はもしかして知り合い?

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