第二百四十九話 ビューティーさん登場
「あいつは誰も止められないよ。パワーはミケを凌駕するからな」
次の日に打ち合わせを兼ねてルキアさんとアルス王子の所を尋ねると、既にアルス王子は白旗を上げていた。
ミケを凌駕するパワーって、本当に人間かよ。
「ただ、卒業してから消息不明だったはず。何で急に現れたのだろうか?」
おや?
ここで新事実が判明。
卒業してから消息不明で、殆どの同級生がラリアット先輩に会っていないらしい。
なので、今何をしているか不明だという。
ということは、ラリアット先輩の情報をどうやって集めるかを一から考え直さないといけない。
「アルス様、ルキア様。Bランク冒険者の方がブルーノ侯爵領に暫く逗留するとの事で、ご挨拶に参られました」
「中々しっかりとした冒険者だな。通してくれ」
ここで侍従が、面会希望の冒険者がいると伝えてきた。
Bランクともなると一流の冒険者の仲間入りをするので、指名依頼の為に領主に挨拶をしにくる事があるという。
アルス王子は、その点がしっかりとしているとその冒険者を評価していた。
ちなみに俺の冒険者ランクはDランク。
メンバー全員、薬草ハンターという二つ名を持っているが、最近は薬草を取りにすら行けていない。
「お兄ちゃん! 凄い人がくるよ!」
「オーラが半端ない!」
「ザ冒険者って感じ!」
「正に女傑」
ここにミケ達が一斉に入ってきた。
一足早くその冒険者を見たらしい。
凄い凄いと興奮しているな。
でも、俺はレイアの言った女傑が気になる。
「えーっと、皆はその冒険者は悪い人だと感じた?」
「全然大丈夫! 剛腕って二つ名が付いているんだって」
「正義のヒーローって感じだった」
「ヒロインじゃなくて、ヒーローだよ」
「確か、アルス王子のクラスメイトって言っていた」
おい、レイア。その情報はとても大事だ。
剛腕で女傑でアルス王子のクラスメイトだなんて、一人しか思いつかない。
思わずアルス王子も頭を抱えていた。
「なんだチビちゃん達よ。もう話しちゃったのか?」
そこに入ってきたのは、大男と思わしき筋肉隆々の女性戦士だった。
日焼けした肌に無数の傷があって、髪は茶色の長いポニーテールだ。
ニヤリと笑いながら部屋に入ってきた女性は、思い描いた通りの姿だった。
「お前、ビューティーなのか?」
「そうさ、クラスメイトの顔を忘れたか? アルスよ」
「いや、その顔は忘れようもない」
「だよな。あはははは」
やっと再起動したアルス王子が、目の前のクラスメイトの名前を呼んでいた。
いや、その肉体でビューティーとか凄いな。
ミケ達が大丈夫だと判断しているし、俺も感じとしては豪快なおばちゃんというイメージだ。
「卒業する時に、皆の結婚式には皆集まると言っていたのを思い出してな」
「それを言ったのはお前だろう。もう何人か結婚しているぞ」
「分かっているよ。だから今回実家にもお願いして、結婚式に参加させてくれと言ったんだよ」
アルス王子は懐かしそうに、ビューティーさんと昔ばなしをし始めた。
ちなみにルキアさんは、ようやく再起動が完了したようだ。
「あたしも実家を飛び出して冒険者やり始めたけど、自分がガキだって身にしみたな」
「冒険者は、家柄関係なく実力の世界だからな」
「直ぐにトップクラスになれると思ったけど、まだまだだったよ。お陰で、自分の馬鹿さ加減に気がついたさ」
「できれば、学園にいた頃に気がついてほしかったよ」
「ハハハ、ラリアット先輩なんて言われていたな。たまに後輩に会うと、未だに言われるぞ」
良かった。
この人は冒険者の世界に飛び込んで、真人間になった様だ。
だから話をしていても、不快感はないんだな。
話の内容はともかくとして。
「あの、ビューティーさん。暫く我がブルーノ侯爵領に逗留されると言われましたが、それは本当ですか?」
「ああ、本当だよ。色々と発展している領で活動するのも悪くないし、それにそろそろ腰を落ち着けようと思っているんだ」
「そうでしたか。ご結婚はされているのですか?」
「実は冒険者仲間からこの間プロポーズされてな。実家にも挨拶に行ったよ。親父なんて、あの娘が結婚できると泣いていたよ」
「そりゃ学園の事も考えたら、親父さんは泣くだろうよ」
ルキアさんがビューティーさんと話をしていたけど、ビューティーさん結婚するのか。
そりゃ今までの苦労を考えたら、お父さんは泣くだろうな。
「ねえねえ、本当にBランクなの? ミケ達、まだDランクなの」
「活動期間と年齢を考えたら、Dランクでも十分に凄いさ。ほら、冒険者カードだ」
「「「「おお! 流石、剛腕!」」」」
「ハハハ、ありがとうよ。チビちゃん達も、薬草ハンターと言われているじゃないか。上級冒険者の間では有名だぞ」
ミケ達は、目の前の上級冒険者に興味津々だ。
ミケ達がイメージしている冒険者って感じなのか、食いつきが凄いぞ。
普段大人しいレイアも、思わず前のめりになって話を聞いている。
ビューティーさんは暫くコマドリ亭に居るといるので、結婚式にまた来るといって帰っていった。
「アルス王子。良かったですね、真人間になっていて」
「学園の時と同じままだったらどうしようと思ったさ」
「でも、面倒見の良いアネゴ肌って感じになっていましたね」
とりあえず、結婚式に向けての一つの懸念事項がクリアされた。
あと一週間は、平穏無事にいってほしい。
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