第二百四十七話 新しい侍従希望と新しい屋敷の話

「ふーん、そんな事があったんだな」

「あたしを呼んでくれても良かったぞ」


 今日は用事があるので、うちにドラコとルシアの母親がやってきている。

 お互い話をしている中で先日の帝国王都の件の話をしていたら、呼ばないなんて水臭いと言われてしまった。

 うーん、ノースランド公爵領とかでも活躍してくれたから、ここは呼んだ方が良かったのかな?


「合法的に暴れられる機会なんて、そうそうないからな」

「暴れて感謝されるし、良いことだな」


 前言撤回、二人を呼ばなくて良かった。

 きっと全力で暴れて、周囲の被害も大きかったはずだ。

 この話はここまでにしておいて、本題を進める。


「はい、確認しました。書類はこちらで大丈夫です」

「書くのが多くて、疲れちまった」

「普段ペンなんて使わないから、書き直しもあったな」


 二人に書いて持ってきて貰ったのは、ドラコとシラユキとルシアの入園に関する書類。

 一部は保護者が書かないといけないので、記入をお願いしていた。

 他の入園予定の子は、全部俺が書いた。

 書く物が多い上に人数も多いので、俺も書いていて嫌になったよ。

 でも、これで無事に入園手続きの書類は完成。

 後で、チナさんに学園に持っていって貰う予定だ。


「ルキアさんの結婚式後に学園の見学会がありますので、またお呼びしますね」

「おお、それは楽しみだ」

「娘がどんな学園に通うか、あたしも興味あるな」

「俺も、他の子を連れて一緒にいきますので」


 施設見学を含めて、入園希望者への説明会がある。

 保護者も参加できるので、皆で見に行く予定だ。

 これで一つ目の用事は完了。


「そして、侍従として働きたいと言っていた子だ」

「アクアと申します。どうぞ宜しくお願いします」


 ルシアの母親が、一人の女性を連れてきていた。

 マーメイド族の女の子で、アクアという。

 人魚の様に水中を泳ぐ事もできるが、人間のように陸上での生活もできるという。

 少し長めの耳の後ろに、魚のヒレの様な物があり、青いロングヘアに貝の髪飾りがある。

 この子は昔からメイドに興味があり、その話をルシアの母親が俺に持ってきた訳だ。


「アクアさん。うちで暫く研修した後、こちらのブレンド子爵家で働いて貰います」

「ブレンド子爵家当主のカロリーナです。これから宜しくお願いしますわ」

「カロリーナ様、宜しくお願いします。サトー様も、私の事はどうかアクアとお呼び下さい」

  

 アクアはうちで研修した後、ブレンド子爵家で働いて貰うことになった。

 というのも、ほぼ一からブレンド子爵家の使用人を集めなければならず、アクアの話はこちらにとっても有り難かった。

 また、カーター君がうちでの生活に慣れてしまったので、お互いの屋敷を行き来しながら徐々にブレンド子爵家での生活に慣れていく事になった。

 お互い近所なので、直ぐに着くのは有り難い。


「まだ何人か希望者がいたから、そちらの準備ができたら連絡してくれ」

「はい、少し先になると思いますが、侍従は必要になりますので」


 マーメイド族で、他にも何人か侍従をやりたい人がいるという。

 うちも少し侍従を増やす必要が出てきた。

 実はうちの隣にあったタヌキ侯爵ことロンバード侯爵の屋敷跡地が、正式にミケに与えられた。

 本音では、王国で管理するのが面倒くさいという理由もあるらしい。

 ゴミごと屋敷を溶かしてしまったので、一から屋敷を建設することになる。

 既にレイアが設計図を引いていて、地下室もあるデッカイお屋敷を作るつもりだ。

 更に、ドラコにシラユキとルシアのウロコを混ぜたレンガを使うという。

 はっきり言って、要塞や王城よりも防御力は強そうだ。

 だけど基礎工事が始まったばかりなので、お屋敷の完成は来年以降。

 完成が見えてきたら、うちで侍従希望の子を預かって研修する予定だ。

 ちなみにうちのお屋敷も、一部工事が入っている。

 地下室を増設する予定だ。


「屋敷の方は、まだまだ増える可能性があるんですよ。というか、確実に増えますね」

「ははは、いいじゃないか。それだけ沢山の貴族がいるんだからな」

「金は使わないといけないし、溜め込むよりはいいんじゃないかな」


 実はうちとブレンド子爵家は三軒隣なのだが、間の二軒も貴族主義の連中が不祥事を起こして御家断絶の上に屋敷を没収されている。

 その屋敷がシルク様とレイアの物になる予定なのだが、家宅捜索がまだ続いているので引き渡されていない。

 引き渡されても内装とかを全て変えると言っているので、住むにしても二ヶ月以上先の話となる。

 この件も元々の侍従が不正に関わっていて捕まっているので、新たに侍従を探す予定だ。

 もしかしたら、マーメイド族の侍従希望はこっちに先に配属されるかもしれないな。

 お金は全然問題ないしむしろ余っているので、貯金するもの以外は使うようにしている。

 それでも冒険者すると、直ぐにお金貯まるんだよな。


「まあ、難しい話はこれで終わりだ」

「さっきから、いい匂いがしているからな」


 ということで、話を終わりにして食堂に向かう。

 すると子ども達も集まっていて、スラタロウ作成のオヤツを皆で食べていた。

 うーん、ミケ達の屋敷ができても、食事はうちで食べるようになりそうだな。

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