第九十七話 子ども達の魔力訓練そのニ

 ペシペシ、ペシペシ。

 ペシペシ、ペシペシ。

 ペシペシ、ペシペシ。


「「起きて」」

「パパ起きて」

「うーん、ちょっと待って」


 昨日と同じ流れかよ。

 ララとリリとレイアは、昨日寝るのも早かったから、その分起きるのも早い。

 また朝早く起きて、俺の顔をペシペシと叩いている。


「薬草取りは朝食後だから、また魔法の訓練をするか?」

「「「するー!」」」


 ララとリリとレイアはこれでいい。

 問題は、今日魔法の訓練をするといったドラコはどうするか。


「むにゃむにゃ、もっと食べたいよ」

「お肉美味しい」


 ドラコは夢の中で何かを食べているようで、よだれも垂らしているぞ。

 ちなみにミケも、夢の中で何かを食べている。


「ドラコ、起きろ。魔法の練習をするんだろ」

「うーん、あと三時間寝る」


 おい、寝坊助にも程があるぞ。

 ドラコを揺すったけど、全く起きる気配がない。

 これはもう諦めるしかない。


「はあ、ドラコ起きないから置いていこう」

「「そうだね」」

「ねぼすけ」


 子ども達もドラコをペシペシ叩いていたけど、全く起きないので諦めたようだ。

 ララ達を連れてお屋敷の裏庭へ。

 今日は魔力制御にしておこう。


「今日は魔力制御の練習にしよう。昨日の様に高火力はできるみたいだけど、逆に弱い威力がだせるかやってみよう」

「弱くする必要あるの?」

「これも魔力を無駄にしない為だよ。例えばちょっと怪我したのに一杯魔力使ったら、多くの人を治せないよね」

「わかった!」


 ララが質問してきたけど、意外と弱い威力を出すのも難しい。

 三人とも回復系が使えるので、ここは怪我の治療で例えてみた。


「こんな感じで少しだけ魔法出してみて」

「「「はーい」」」


 ちょこっとだけ回復魔法を出すのをお手本でみせて、後は実践。


「うーん、うまくいかない」

「難しいよ」

「できない」

「魔力制御が重要だよ。頑張ってね」


 子ども達は威力を小さく出すことに悪戦苦闘している。

 魔力制御にもなるので、暫くはこの練習を続けてみよう。


「あー、ここにいた。何で起こしてくれなかったの」


 三人の練習を見ていたら、寝坊助が起きてきた。

 頬を膨らまして何やら文句を言っているが、全くの心外だ。


「俺はドラコを起こしたぞ。そうだよね」

「ララも起こしたけど起きなかった」

「リリも起こした」

「レイアも」

「うー」


 ドラコは拗ねていたが、三人からも起こしたと反論されて黙ってしまった。

 寝ているときに顔を叩かれたのは、記憶にあるらしい。

 

「時間がないからさっさと始めるよ。ララ達はさっきの続きね」

「「「はーい」」」


 ララ達は小さく出力する練習を再開した。

 後はドラコだけど、まずは魔力制御を見るか。


「ドラコ、手を繋いて俺に魔力を流してみて」

「分かった」


 ミケから基本は習ったはずだから、魔力制御は出来るはずなのだが。


「うーん、うまく魔力が流れないな」

「なんか魔力が詰まった感じがするんだよ」


 これは俺にもあった魔力詰まりだな。

 試しに俺から魔力を流してやるか。


「ドラコ、今度は俺から暫く魔力を流すから」

「はーい」


 俺から魔力を流してやると、確かにドラコの中に魔力が詰まっているところがある。

 ルキアさんとかも俺の魔力詰まりを取ったときは、こんな感じなんだ。

 うーん、でも中々詰まりが取れないぞ。


「お兄ちゃん、どうしたの?」

「ミケ、ちょうどいいところに来た」

「?」


 と、ここで更に寝坊助のミケが登場。

 ミケは魔力制御が上手だから、手伝ってもらおう。


「ミケ、前に俺の魔力詰まりを取った様に、今度はドラコの魔力詰まりを取ってくれる?」

「分かったよ、お兄ちゃん」


 ドラコと俺とミケで手をつなぎ、俺とミケで魔力を流す。

 すると、少しずつ詰まりが取れてきた。


「おや? 魔力がスムーズに流れてきた」

「もう少しだね」

「詰まりが取れても、少し魔力を流しておこう」


 その後も暫く魔力を流していたら、詰まりは完全に取れた様だ。


「よし、今度はまたドラコから俺に魔力を流してみよう」

「分かった」


 ドラコも魔力詰まりが取れて、スムーズに魔力が流れているのが分かったみたいだ。

 今度は順調に魔力を循環できている。


「うん、魔力詰まりがなくなって魔力循環ができるようになったな。今日はこのまま魔力循環をして、明日魔法剣の柄を使った訓練をしよう」

「おお、ドラコも魔法使いに一歩近づいたよ!」


 ドラコは魔力循環ができるようになって喜んでいた。

 後は放出型か身体強化型かを確認しないと。


 そんなこんなで、今日の訓練は平和的に終了。

 その様子を見ている影が三つ。


「何じゃ、今日はもう終わりか」

「うーん、何も面白いイベントなかったよ」

「そんなにしょっちゅうイベントがあるのもどうかと」


 リンさんは常識的な対応だったが、ビアンカ殿下とエステル殿下は何も面白いことがなく不満げだった。

 俺は常に平和が一番です。


 ちなみにシルとベリルは朝食寸前まで寝ていた。

 明日はベリルも一緒に訓練だな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る