第十二話 護衛依頼

「ほほ、サトーよ。これは珍しいものを見たのじゃ」

「左様ですな、殿下」

「いやあ、まあそうなのでしょうか」


 ビアンカ殿下とバルガス様から、スラタロウが仲間になった事で珍獣みたいな目で見られています。

 でも普通のテイムの方法なんて分からないです。

 スライムから寄ってきたんですから。

 でもシルは、このスライムは悪意がないとか言っていたけど、何か関連があるのかな?


「サトー殿、我がバルガス領のギルドには、初心者向けの講義もある。時間が空いたら是非受けてみると良いでしょう」

「ありがとうございます」


 冒険者のイロハなんで分からないから、初心者講座あるのはありがたいなあ。

 と思っていたら、何やらビアンカ殿下とバルガス様がヒソヒソと話をしている。

 ちなみにミケとシルは、スラタロウと仲良く遊んでいた。

 随分と短い間でいい関係になったものだ。

 ミケとシルの事を眺めていたら、ビアンカ殿下から声がかかった。


「サトーよ、申し訳ないが頼みがある」

「ビアンカ殿下、頼みとは何でしょうか」

「バルガス卿の街まで問題なければ、あと半日もあれば着くじゃろう。何も問題なければな。しかし今回想定外の事が起きた。今後も何か起こらないとは限らないじゃろう。そこでじゃ、そなたらに妾達の護衛を頼みたいのじゃ」

「護衛ですか。しかし我々はまだ正式な冒険者にはなっていません」

「確かにそなたらはまだ冒険者ではない。だが、既になかなかの実力を持っている。仮に冒険者だったらかなりの上位者じゃ。何より、サトー。妾はそなたなら大丈夫と確信しておる」

「過分なご期待ですね、殿下」

「こう見えても妾は人を見る目を持っている。そなたなら問題はないぞ」


 おおう、ビアンカ殿下から物凄い期待を向けられているぞ。

 新しい世界に来てまだ三日で、これは大役じゃないかな……

 と思ったら、バルガス様からも声がかかった。


「サトー殿、あなたなら護衛を頼めると私めも思います。幸にして騎士たちも軽傷でこのまま任務を続けられます。いわば保険の様なものです」

「バルガス様、分かりました。一度みんなと話をさせてください」

「分かりました。みんなの意見を聞いても良いでしょうか」

「もちろん構いません。というか、みなさんワクワクした目でこちらを見られておりますぞ」


 バスガス様が苦笑しながら俺の後ろを指差すと、そこにはやる気満々のミケとシルの姿が。

 心なしかスラタロウもやる気満々に見えるぞ。


「ミケ、シル。ビアンカ殿下とバルガス様から護衛依頼があったけど、これを受け……」

「ミケやるよ! お姉ちゃんを守るんだ!」

「護衛か、我にかかれば何も問題ないぞ」


 おおう、言い切る前に、ミケとシルから返事されたぞ。

 スラタロウもやる気あるのか、ふるふると震えている。


「ほほ、そなたらは本当に面白いぞ」

「いやあ、全くですな殿下」


 ビアンカ殿下もバルガス様も、こちらの様子を見て笑っている。

 くそー、恥ずかしいぞ。


 うん?今何か視線が……

 シルもうなずいているから、気のせいではなさそうだ……

 何だろう、魔物の気配ではない感じだ。

 警戒しておく事に越したことはないな。


「サトー殿、護衛も決まった事で、今回の騎士を紹介する。我が領の騎士が四名と、王都からの騎士が四名だ。隊長は我が領の者が勤めている」

「隊長さん。改めてサトーです。短い間ですがよろしくお願いします」

「こちらこそ、凄腕の方が護衛に加わるのは、我々としても心強い」


 バルガス様に案内されて改めて騎士の方の紹介があり、隊長さんとがっちり握手をした。

 隊長さんは信頼できる人だな。


「では、時間も惜しいので準備次第直ぐに出発しましょう」

「うむ、直ぐに準備しよう」


 隊長さんとバルガス様が準備について話をしていた。

 こっちも大急ぎで準備をしよう。

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