アドガルムの意向

「で、隣国の令嬢方をどうされるおつもりますか?」

アドガルムの宰相であるヒューイは淡々と話をしている。


「そちらは前にも話したはすだが?」

受け答えするのは国王アルフレッドだ。


「えぇ。最初聞いた時は一時の留学と聞いたはずだったのですが…また大それた事を、しましたね」


ヒューイは表情も変えず話している。


「罪人かもしれない隣国の公爵家の令嬢二人と、剣聖と呼ばれるパルシファル辺境伯を留まらせるとは、リンドールに喧嘩を売るようなものだとわかってるはずですが。ディエス殿が投獄された罪状はご存知ですよね?人身売買だ。普通であれば一族郎党皆斬首の罪です。国民の理解を得るのは難しい」


事実であればとても許されるものではない。


たからこそレナン達は冤罪だと言っている。

父がそんなことをするとは絶対に、無いと。


「私も宰相として何度もディエス殿と話をしてます、彼がそんなことをする人物だとは思っていません。ですが民達はそんな事知ったことではない、糾弾する大義名分があれば、責立てる自分らが正義だと思うものです」

ヒューイは淡々と話すだけだ。


「シグルド殿はともかく、お嬢様方だけでも返すという手もあります。外務大臣であるフォルス殿、如何かな?」


意見を促され、きびきびと話す。

「リンドールからはシグルド殿、及びスフォリア家の者の所在がわかれば即刻引き渡してほしい、とは言われております」

言葉を受け、フォルスは続ける。


「状況を悪化させないためにも一刻も早いご決断をお願いします」

アルフレッドに視線が集まる。


「リンドールに三人は返さない」

国王から直々に言い渡された。


「三人を返したところで、今更だ。寧ろアドガルムが人身売買に携わっていると捏造されてしまうやもしれぬ。こちらは罪のない令嬢達を匿ったに過ぎん。王家の影も証拠集めに乗り出しているし、ディエス殿の罪も冤罪だと抗議書も送っている。何をしてももう無駄だ、安全のため彼女達にはここにいてもらうぞ」


悪い話ばかりではないぞ、と国王が話す。


「冤罪だと証明出来れば、剣聖シグルドも彼の領地も、有能なディエス殿もこちらに引き入れられる。我が息子たちの妻候補もな」


一番最後の話は初耳だとヒューイ達は目を丸くした。


「レナン嬢は語学が堪能で成績もとても優秀だ。何より優秀なのは氷の王太子と呼ばれるエリックを、笑顔に出来るところだな。私は見たことないがな」

それが見たいのもある。


「ミューズ嬢は魔力の量はとても多いし、細やかな気配りが出来る。騎士が大好きでこっそり訓練を見学しているそうだ。鍛錬の話も好きだから、ティタンとの相性もいいだろう」


アルフレッドはいたずらっ子みたいな人の悪い笑みをしている。


「民にはディエス殿の冤罪の話と、無実の令嬢達を不当な扱いから匿っていると伝えてくれ。シグルド殿もこの国にいる事も。王家は人身売買を許さず、真の犯人を探しているとな」

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