第2話 妙なステージ

起床後、シャワーをして、モニターの前に座る。

次々と妙なステージが続いていく……


『対決、ステルス窃盗団』


軍事用に開発が進んでいる光学迷彩を装着した窃盗団である。


そして、ミッションの内容が……、

「窃盗団に盗まれた高価な茶器を取り戻せ!」

……である。


とっさに感想が出た。

「光学迷彩……そんなハイテクなものを手に入れているのに……やることが茶器泥棒かよ……」


たしか米軍等で開発が進んでいる透明になる服?だよな。実用化できたのか。


うーん、やはり異様だ、このゲームの世界観?価値観?ズレている。


……どうやって見つける?そうだ!

前ステージで入手した『散水』のカードを使って、ボタンを押すと、押している間、アームから放水が行われる。一回最大10秒間、全体の容量は100秒間。

水を浴びたことで、光学迷彩が放電状態となる。

「光った!?水を浴びて放電した!」


このカードを使って、こうやりなさいと決められているみたいだ。企画者の目論見がスケスケだ。


ジェルを当てることでも発光させることができる。ただ、ジェルは捕獲にも使うわけだからムダ撃ちするわけにはいかない。グズグズしていると窃盗団に逃げられてしまう。


だったら、最適化して……戦うのみ

頭の中で動きの流れを構築する

散水、攻撃、無力化、捕獲


茶器を持っていた、これでクリアか……

人気番組『意地でも鑑定やん』に出演している鑑定士が登場する。


鑑定額…………1000円!?

「贋作だね」

「土産物だね」

「近代の作だね」


本物のお宝を探し出すまで、このステージは終わらない!


こうなりゃヤケだ、片っ端から捕まえてやる!と思ったが……

そんなことをすれば弾切れで終わりだ、落ち着こう。


なぜ、本物が見つからない……次々と逃亡する窃盗団を捕まえているのに

他のプレイヤーにも捕まえられていた……


……逃げるから捕まる?


なるほど、本物を持った窃盗団は、隠れてじっとしている!

ずっと予定調和を感じていた。


クレーンを調整して、死角になっている場所を見つける……ビルとビルの隙間

光学迷彩で隠し切れない、空気の不自然な流れ!!

「ここだ!!」


叫ぶと同時にボタンを押す。

「これで決めてやる!!」

このとき思わず決め台詞を叫んだことはハッキリ覚えていて、恥ずかしくなった。

でも、いいんだ、クリアできたのだから。

「天目茶碗の本物だ、国宝物だよ」

3億を得たが、だいぶ操作で金を消費してしまった、トントンといったところか。とりあえず織田なんちゃらのなんたら茶椀でクリアだ。ゲーマーなので、歴史に興味はあるが、正直、茶器には興味が無い。

ちなみに新しく『スモーク』のカードを入手した、相変わらず謎だ。


『荒くれポーカー』

「荒くれ者たちの刺青のマークで役をそろえろ」

荒廃した世界の荒くれ者たちと、対戦相手のアームが見える。

荒くれ者たちは組織化されており、それぞれ所属がある。

なるほど、身体のどこかにトランプのマークと数字が彫られているのか

狙って役をそろえるために……『サーチ』だな。

『サーチ』のカードを使うと、周辺の荒くれ者たちの素肌が露わになる。

本当に誰が得をするのだ……という画面だが、くじけずにマークと数字を探す。


荒くれ者の同じマーク5枚、ハートのフラッシュだ!


クリアした後、

手に入れたカードに衝撃的な一枚があった。

「ドーザー変形!?形態がまた増えるの!?」

アームをブルドーザーに変形して、目標を押すことができる。もはやクレーンゲームがゲシュタルト崩壊だ。まぁ、そもそも崩壊しているが……。



『サルカニ合戦』

近くにカニやサル型のロボットが複数見える。

「猿と蟹がいるということは……もしかして、いや、もしかしなくても」

ドゴーーーン

衝撃が走る

予想が当たっていた……上空から、大きなウスが落下してきたのだ。

とっさに距離を取る、確認する、やはりウス型ロボットだ。

「これは、蜂と栗も出てくる……あと、アレも……」

ブブブブブブッ

羽音だ

カチッカチッ

顎を鳴らしている、蜂の威嚇音だ。距離を取らなければ、攻撃される。


バーーーンッッ

爆発!?このシチュエーションで爆発するとすれば、栗か!


爆発に興奮した蜂が針をアームに突き刺す。

部屋全体が揺れる、同時に何かの装置の起動音が聞こえた。


陸上の練習中に、蜂に刺されたことがあった、あのときの気持ち悪さと同じだ。

「本当に刺された!?」

くそっ、無駄に凄い技術だ、本当に痛い。


「アンチドーテを手に入れてください、そうしないと死にますよ」

アンチドーテ!?毒消しのことか

ゲーム内でアンチドーテを入手しない限り、装置が止まらない。

ついにストレートに命を奪いに来たようだ。


急いで周囲を見渡す……あった!アンチドーテだ!

あからさまな罠だ、ビンにアンチドーテと書いてあるし。

でも、選択権は無い。

アンチドーテを取ると同時にウスが落下してくる。

ミスったら潰されて終わりだったが、eスポーツ選手を舐めちゃあいけない。

「余裕だ!バカヤローー!!」

アンチドーテを使うと、装置が止まる。


刺した蜂に復讐してやろうと、姿を探す。……いたぞ、改めて見るととてつもない大きさだ。

巨大蜂に復讐するには、『スモーク』だ。予想通りゲージの減りが早い。

羽に引っ掛けて合計3匹を捕獲、888万×3だ。

蜂だから888万というのが安直だ。


その後、勢いでカニとサルを成敗してクリア……柿の木は最早、ジャングルだった。

まぁ、アレ、馬のフンが登場しなくて良かった。


カードを手に入れたみたいだ、確認しよう。

『ウェットロープ』

身体にまとわり付く特殊な液体で濡れているロープ

相変わらずセンスがヤバい。


『離散した家族を元に戻せ』

離散の原因になった要因を無力化して取り除く。

長女のヒモであるバンドマン、母親が引っ掛かった海外ロマンス詐欺の犯人、

長男のギャンブルの借金を返済、不気味で悪趣味なパズルゲームだった。


賞金で強化をしよう。

パズルやスピード勝負のステージが続いた後だから……ここは……

強化をパワーに集中させる、大物の予感がする。


『対決サメ』

サメ!?

鮫の登場というインパクトに驚いたが、次の敵はパワー系という読みが当たった。


水没した街で特別製と書かれた餌を撒き、しばし見守る。


すると、サメだ!

「ほ、本当に来た」

流石、サメだ、捕まえるだけで一苦労だ。

激戦が終わり、ほっとしたのもつかの間、

……何かが近づいてくる!?

「何だ、あれ!?」

とてつもなく巨大なサメ……そうだ、メガロドンだ。

あれを捕まえろって……ムリゲー!

あの巨体だ、とても掴むことはできない……考えなきゃ……ピンチだ……でも……楽しい


ありったけのカードを消費し、ゲージを減らす、

「ぜんぜん減らない!!」

だけど、それでいいんだ。これは牽制だ。

『ドーザー』を選択、アームを変形させて巨体を押す、

その反動は物凄い、部屋がガタガタと揺れた、アラームが鳴りやまない、すごくうるさい。

「ダメだ!限界だ!」

私の狙いはビーコンの設置だ。

3個のビーコンを特定の位置に全て設置して召喚を発動させる。


移動に不具合が発生する中、方々に結んでおいたウェットロープを引くことで強引に移動。

そこへメガロドンがトドメを刺そうと突進。

ガガッ!ガガガガッガガッ……

突進を受けながら最後のビーコンを設置する。

三点で描かれたのは巨大な槍、グングニルだ。

穂先はメガロドンに向けられている。

「グングニル発射!!」

巨大な槍の形の衝撃波が放たれる。

ドーーーーーーン!!

部屋も激しく揺れる、思わず踏ん張った。巨体が穴へ落ちていく。

メガロドン捕獲、30億獲得。


そこにメッセージが入る。

「次がラストです。最後まで楽しんでね」


半分、放心状態になりながら夕飯を注文する。歩くとふらつく。

床に瓦礫が散らばっていて、気を抜くと転んでしまうだろう。

しばらくして届いたAセットには、気仙沼の名物フカカツが付いていた。


食後、生涯一番の眠気が襲ってきた。


次が最後のステージ、クリアすれば、脱出できる。

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