第4話「暗闇の中の光」
城らしき建物から連れ出された私は、目隠しをされ両手両足を縛られ、馬車に乗せられた。
馬車はごとごと音を立てどこかに向かって走っていく。
たぶん王子が言っていた東の森という所に行くのだろう。
目隠しを取られた時は深い森の奥で、私の目の前には白いローブをまとった男が二人いた。
すぐ後ろには切り立った崖があった。谷底が見えないぐらい深い。
「聖女様を傷つけた罪をあの世で反省するんだな!」
白いローブの男はそう言って、両手両足を縛られ身動きの取れない私を谷底に突き落とした。
あっ、これ死んだわ。短い人生だったな。
【バッドエンド】
ということもなく気がついたらふかふかの草の上にいた。
谷から吹き上げる風と谷底を覆う草が、落下の衝撃を和らげてくれたらしい。
都合のいいことに落ちる時にどこかの木の枝か何かに引っ掛けたのか、両手両足を縛っていたロープが切れていた。
私は助かったことに安堵の息をつく。
「それにしても腹が立つ!
女子大生と王子と白いローブの連中めーー!」
私をはめた女子大生にも腹が立つけど、それよりもムカつくのが王子と白いローブの連中だ。
勝手にこの世界に召喚しておいて、女子大生の言葉を鵜呑みにして、私を罪人扱いして森に捨てるなんて!
やはり人は外見が全てなのかな……?
私がもうちょっと美人だったら、ブランド物の服をまとっていたら、彼らは私の言葉に耳を傾けてくれたのだろうか?
まぁ、今はそんなことを考えてもしょうがないか。
私は頭を振って、思考を切り替えることにした。
何としてもこの世界で生き延びなくてはならない!
でもどうしよう? かなりの距離を落下してきた。
気球でもないとここから脱出するのは難しいかもしれない。
ロッククライミングで脱出するのはちょっと無理かな。
ロッククライミングの経験なんてないし途中で力尽きて落ちそうだ。
ぐーきゅるるる……。
脱出する方法を考えていた時、お腹が盛大に音を立てた。
「お腹空いた……。
そういえば夕飯の前だっけ。
どうせならお弁当も一緒に召喚されればよかったのに」
地面が光ったとき、驚いてお弁当を遠くに放り投げてしまったことが悔やまれる。
「せめて飴がチョコでもポケットに入ってないかな?」
ポケットの中を探ると出てきたのはコンビニエンスストアでおまけとしてもらった植物の種が入った紙袋だった。
イケメンな店員さんが「庭に蒔いてください」と言ってくれたんだっけ。
谷の底なのに周囲の様子を確認できるのが不思議だった。ここまで光は届かないはずなのに。この紙袋が光っていたのだ。
紙袋を開けると一粒の種が入っていた。光っていたのは紙袋じゃなく種の方だったようだ。
「何の植物の種だろう?
でも種じゃあお腹が膨れないよ……。
何も口にしないよりはましか」
私が種を口に入れようとした時「食べないで!」という声が聞こえた気がした。
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