第241話

「そう言えば、映司くん達の冒険者ライセンスが用意出来たから渡しておくね」


ダンジョンでのドロップ品の換金が終わったタイミングで冒険者ライセンスが完成したと言うことで手渡された。


そう言えば、E国から帰国したタイミングで顔写真と必要書類を用意して提出してあったな。


身分証明書にもなるし有難く受け取っておこう。


ちなみ基準を設定する事が出来て無いので、ランク制度は存在しない。


後々ランク制度は用意するかもしれないとは言っていたけど俺には関係ない話だ。


青木さんから良いなーと言う目で見られながら河村さんにお礼を言ってSCSFの本部を後にした。


SCSFの本部から出て勝彦と青木さん2人と別れた後、何時もだったら転移で帰るんだけど。

何となく歩いて家まで帰りたい気分だったので、ゆっくり歩いて帰っていると。

突然後ろから声をかけられる。


振り返って見ると声をかけて来たのは近所のおっちゃんだった。



「福田さんじゃないですか」


「映司くんは色々大変そうだな」


近所のおっちゃんの福田さんは農家なので、少し傷ついて売り物にはできないけど味は問題ない野菜だったりを貰ったりとそれなりに付き合いがある。


最近は俺がアチコチ行ったりしているから、あったのは久しぶりだ。


歩くのをやめて少し話をしていると、フィロの作っている野菜の一部を道の駅に卸さないか?と提案された。


「道の駅ブームに乗って道の駅を作ったのは良いけど。ぶっちゃけ赤字経営でなぁ。特に観光スポットもなければ道の駅自体も有り触れたものだから当然の結果では有るんだけどな」


そこでフィロが作った野菜か。

味はさておき竜が育てた野菜ってだけで話題性は抜群だろう。

実際味もバッチリなんだけどな。


「悪くない話だけど。フィロが本気で育てた野菜を道の駅に置いたら他の野菜売れなくなるかもよ?」


本気と言うかフィロがそこそこの味と言って育てた野菜でもかなり美味しい。

その分値段を上げて差別化をすれば問題ないかもしれないけど…


「1番面倒臭いのは、そこの道の駅に卸すならウチにも卸してくれって言われるのが面倒」


大前提として、フィロの作った野菜を販売するのはアリなのか?と言う問題が残っている。


現状ダンジョンで手に入れた物は政府が買い取ってそこから一般企業に販売するという形が取られる事になっている。


地上の農地で育てて収穫したものだからといって、ダンジョンの中で生まれたピュシスドラゴンのフィロが育てた野菜となると一度政府を挟む必要が有るんじゃないか?と言う訳だ。


「ヤバい成分が含まれている訳じゃ無いし。大丈夫だとは思うけど。一度、政府の人と相談してからになっちゃうかな」


「やっぱり映司くんも色々大変そうだな」


「確かにやらなきゃ行けないことが次から次へと増えていく感じでちょっと大変です。

そうそう。特に何もしなくても道の駅黒字経営になるかも知れませんよ?SCSF本部の隣にダンジョンがありますし。あそこ俺の従魔に冒険者に人気が出そうな感じに改装させたので」


経験値ダンジョン帰りの人達が道の駅で買い物してくれるかもしれない。


「なるほどな。かと言ってそれに頼っていたら、そのうち赤字に戻るだろうし…やっぱりなにか対策を考える必要はあるな」


人が来るってわかってれば、企業が集まってきて色んなお店が出来るだろうしな。

そっちに人が流れて道の駅は結局赤字って事も有るか。


「それにしても福田さんがあの道の駅を経営しているんですか?」


道の駅は家からそう遠くない場所に有るので、存在自体は俺も知っている。

ただ、福田さんが経営してるとは思わなかった?

経営改善を考えてるってことはそうだよね?


「俺じゃなくて友人が経営者なんだけど。

野菜を卸す場所が減るのは困るからな。それに道の駅に人が来てくれれば俺の野菜が売れる確率もそれだけ上がる」


そう言う事か。


「とりあえず。返事はうちの竜が育てた野菜を道の駅に卸しても良いか確認を取ってからで良いですか?」


「本来高校生に話すような内容じゃないんだけどな…悪いけど頼む」


そう言えば、お酒に関しては完成品を一度、政府に提出すれば製造と販売の許可がおりるように交渉したんだった。

もし許可がおりた場合、野菜だけじゃなくてお酒も取り扱って貰うか。

一からお店を建てて従業員を用意してって面倒臭いし。


その点、道の駅の一角を貸して貰って販売とかを全て任せられるならかなり楽が出来るだろう。

勿論その分月々の場所代に商品が売れる度にマージンを取られるだろうけど。

野菜とお酒を売ったお金だけが収入じゃないし。

そのぐらい問題ないだろう。


取り敢えず。家に帰ったら皆に相談だな。


何となく歩いて帰りたい気分だったおかげで、福田さんと遭遇してこの話を聞くことが出来た。

たまにはこうやって歩いて帰るのもありだなと考えながら、そのまま歩いて家に帰宅した。


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読んでいただきありがとうございます。

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