第45話

聖王国と王国の地獄のような会談が行われているとも知らずに(何となく予想はついているけれど考えないようにしている)、当の本人であるゾーイは何をしているのかと言えば……。


「ゾーイさん、気持ちいいですかぁ?」

「う、うん」


 僕はこのエルフの女王様にダメにされてしまうのかもしれない。


 このエルフの女王様が極上の柔らかいお胸様で包み込んでくれるので、旅の疲れもあってかその厚意に甘えてしまう。


 今までの誰よりも大きい胸に沈みながら今後の事を考える。


 これから先、どうしようかなぁ。このままこの胸に沈んでいるのも良いなという考えが頭に過るけれど、まだニケちゃんのような可愛いケモミミっ子が沢山いる獣人国にまだいけていないし、他にも行きたい場所は沢山あるんだ。

 

 この胸に沈むのはしたいことをし終えた後で。


 …………その前に、ドロシー先生たちに見つからなければいいんだけれど、難しいだろうな。隠れ家にもいかず王国にも戻らず聖王国から逃げだしたのでドロシー先生たちに加えてシャーロットさんやエマさん、フィールも多分だけれど、僕の事を見つけようとしているような感じがするのだ。


「何か、悩み事ですかぁ?」

「ええ、まぁ少しだけ」


 女王様がどれだけ賢くてもまさか僕が、神聖国に攫われて脱走してきて物凄い数の人たちに追いかけられていますなんて思わないだろうなぁ。


 それにこの人にこのことを言ったらきっと僕は追い出されてしまうから。


 ほんの少し、フリーハグをしたらすぐにここを出て行こうと思う。

 

そんなことを考えていると僕が相当に思い悩んでいると勘違いしたのか女王様が今より少しだけ強く抱きしめて


「あなたのような男性が、ここに迷い込んだのですからきっと辛い思いをしたのでしょう。あぁ可哀そうなゾーイさん。私が癒して差し上げますね。ここに居れば外の怖い思い何てしなくて済みますから。ゆっくり休んでくださってかまいませんよぉ」

「あ、ありがとうございます」

「可愛い、可愛いゾーイさん。私が守ってあげますからねぇ、大丈夫ですよぉ」


 ねっとりとした湿っぽい吐息交じりの声に耳を擽られて体をびくつかせるとクスクスと女王様はわらう。

 

この人……このエルフの前では僕のプライドなんて物は無いのと同義で、底知れないほどの母性のようなものに思わず情けなく子供になってしまう。


 あぁ、でも何だろう?この何とも言えない不安は。


 僕はそっと抱きしめられている顔を上げて、女王様の瞳を見た。


 今まで善行しかしていない菩薩のような微笑を浮かべて居るが、その目はどこまでも深い愛情に囚われているように見えて、何度も見てきた目だった。


 その事実からそっと目を逸らすように僕は女王様の胸に顔を埋めた。

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