第6話



俺はちょうどマッチングした山場さんと会話をした、カフェが好きだと言うことで駅近にあるスタバで昼、会う約束をした。

鏡の前で今日の服を着る、久し振りにお洒落をした、いつ振りだろうか、イヤリングもつけようか悩んだが、変に着飾るのもなと思い結局いつもの自分スタイルで行くことにした。




約束の5分前に待ち合わせの場所に着いた


目を走らせてる山場さんを見掛けた。


少し戯けていて、俺は心配に思って山場さんの元に駆け寄った


「山場さん?」


「あ、どうも、すみません」


緊張している様子だった、多分俺と同じ初めてなのだろう。


「いえ、お待たせしちゃって、立ってるのもなんだし、コーヒーでも飲も」


「いや、私が早く着きすぎただけなので、はい」


俺は軽く会釈をし、スタバに入った。お互いおどおどしていて、ぎこちなかった。



俺達はそれぞれ好きなコーヒーを注文し、席に座った


「こういうのって初めて?」


俺は山場さんに尋ねた


「はい、ちょっと慣れなくて、」

少し下を向きながらそう呟く姿から虚しさというか暗いオーラが少し出てる


「そっか、俺もだよ、結構緊張しちゃってさ、鏡の前でずっと洋服の着せ比べしててさ、ぐちゃぐちゃかも」


「あ、私も久しぶりに外出するから、結構ぐちゃぐちゃ」


そう山場さんは微笑む


「良かった笑ってくれて、元気なさそうだったから」


「え?」


自分でも意識してなかったようで、少し驚いてる


「笑ったら山場さんって結構可愛いんだね、」

「ええそうかな...」

頬に手を当てて、少し赤くなっている


「うん、可愛い可愛い、」


俺は誤魔化すようにコーヒーを飲んだ


「ヒゲできてるよ?」


「え?」


俺は慌てて口元を触る


「本当だわ、」


「そっちの方が可愛いじゃん!」


「え?、俺がか?」

人生で初めて可愛いと言われた、今まで言われる機会がなかったからだろうか、内心驚いた


「うんうん」

山場さんはそう頷く


「ねえ、このあとってなんか決めてる?」


「いや決めてないけど、」


「じゃあさ、私とこれから…」



ポップな効果音と共にFINISHとロゴが画面に表示されている

キャラが車に乗っている映像がその後流れる。


「やったー!」

軽快な声がゲーセンに響く


「クッソー」


俺は目の前のハンドルに頭をぶつけた、ゲームだからと舐めていた


「弱すぎ、マリカやったことないの?」

ノリノリの笑顔で俺を煽る


「ないな、人生で初だ」


「マジ?!」


「うん」

隣の席同士腰に掛けて山場さんと話してるが、さっきと比べて余程楽しそうだ、俺はずっと最下位だが…


「じゃあさ、次!」




俺は山場さんに釣られるまま、いつの間にか行列に並んでいた、若者がずらりと大量にまるで地元の文化祭みたいだった

「でさ、この並びって?」

「あれだよ!」

山場さんが指さしてそういうのはこの前朝のニュース番組で紹介されたクレープ屋さんだった。

「ここのクレープ屋さんって蜂蜜がかけてあって、それがおいしくて…」

山場さんが熱弁している


「な、なるほどな。」

俺はあまりの熱弁振りに圧倒されるばかりだった。


「とにかくおいしいから、ほら」



「おお、実物で見ると凄いな」

バナナチョコホイップにはちみつとキャラメルが交互に混ざり合って、正に糖質の塊って感じだ。


「美味しい~!」

彼女がほっぺを擦る


パク

「本当だ!甘さと甘さが掛け合って、絶妙なハーモニーだぞ、これ!」

パクパク


「分かってるじゃん!」


「悪いな、ちゃんと聞いてなくて」


口が止まらない、この甘さに溺れたい


「いいの、分かってくれたら!」


思ったより無邪気なやつだった。口周りのホイップが可愛らしい


「髭できてるぞ」


「え!」


「俺より可愛いぜ」


「えええ~」



その後は公園で少し散歩した。日の出も落ちて、すっかり綺麗な夜空になっていた。


「星綺麗~!」


「そうだなぁ」


他愛もない会話を繰り返し、彼女は終始楽しんでいた。そうこの距離感でいい、俺は山場さんのことは好きじゃない、居て楽しいとは思うがそれだけだ。


「腹減った、なあこの後居酒屋どうだ?」


「お、いいね~!」


今思えばあの時待ち合わせていた居酒屋は彼女と一緒に行ったところだった。



「「乾杯!」」

グラスとグラスがぶつかる、俺らは二人、生ビールを飲んでいる


「ぷはぁ」

実にいい飲みっぷりだ、まさに酒豪って感じで、俺も飲むか


「それでさ、…」

「ああ、分かるわ、単位とる時…」


それからも他愛もない会話を繰り返し、気づけば深夜0時を過ぎていた。


「すみません、お会計お願いします」


「はーい!」


俺は支払いを済ませたあと、山場さんと共に店を出た


「なあ、飲みすぎたけど、終電大丈夫か?」


「ん、ええ、あっち行こ!」


「おい」


俺は手を引っ張られて…



程よい間接照明に、豪華ベットが一台、テレビが家電屋さんの一押しと同じくらいでかく、洋風な雰囲気と日本独自の雰囲気が織り混ざっている。


「おい、俺ゴム持ってないぞ」

ベットに座りながら俺は言う。


「大丈夫、私持ってるから」

彼女は横になりながらそういう


「だからさ、しよ」


彼女は手を差し伸べる、俺は指と指の間に手を、体を重ねた。




「ふう、楽しかった」

満面の笑みで彼女はそう呟いた


「かもな」


俺達はバスローブを身にまといながらベットで横たわっている


「ねえさ、気になったんだけど、童貞だった?」


「うん、初だわ」


少し照れながら、俺は彼女の散らかった服を探す。


「やっぱり、おどけなかったし、紳士的だし、ゴム付けるの手間取ってたし」


「不満だったか?」


俺は意地悪な顔で、そう呟きながら山場さんの服を畳んだ。


「いや、気持ちよかったよ!って何してんの?」


「服畳んでんだよ、ぐちゃぐちゃになってたからさ」


「そっかありがとう」


「何だよ笑」

お互い微笑んだ


「テレビでも見ようぜ」

俺は深夜に流れてるおかしな通販ショッピング番組を二人で見ながら過ごした




「すん、ふん」

突然彼女が泣き始める、大きな雫が垂れる。


「どうした?」

彼女は泣きながら答える


「いやさ、実は元カレとの思い出だったの今日のこと、忘れられるかなって本気で思って、でも…」


彼女の心情が嫌でも伝わってくる


「寂しかったの、凄く、埋めたくて、けどどうにもできなくて、自分の弱さが嫌にんって」


彼女の手が震えている


「弱い事の何が駄目なんだよ」


「え?」


彼女が俺の方を見る


「だって、好きだった訳だろ、本気で大事なものがさ、無くなったらさ、俺達は弱い者同士群れて生きてるんだから、弱くなってもいいんじゃない?」


「そう、?」


「なんていうか、上手く言えないけど、ゆっくりでいいんじゃない、少しづつでいい、俺は弱さが分からない人間だなんて嫌だな、君のままでいいと思う、今は泣いていい、泣くことは悪いことじゃないから」


俺も弱いからな、独りで泣くくらいにはさ


「ありがとう、」


「あんた、馬鹿だね」

彼女は涙を拭いながら、笑っていた


「馬鹿ってお前なぁ」

俺も釣られて笑う


「ねえさ、私のことあだ名で呼んでよ♪」

笑顔になった彼女がそう言う


「え、じゃあばーやま」


「え、ばーやま⁉」


「うんばーやま」


「う~ん、分かった!」


彼女は渋々納得した。俺には訳が分からなかった


「なあ、一服していいか?」

俺は彼女に尋ねる。


「いいけど~」


「サンキュー」


俺は持ち合わせの紙タバコにライターで火をつけ、吹かした


「ねえさ?なんでタバコ吸ってるの」

彼女が疑問そうに俺に聞く


「大人になりたいから、かな?」

少しドヤついて、俺は言った


「何それ」

少しにやにやしながら俺の方をじっと見る


「ロマンってやつだよ、まあ不安とかを吐き出せるようでさ安心するんだわ」


「へぇ~不思議だね」

物珍しそうに彼女が見てる







私は彼が不思議だった、何かと安心する。彼にとってのタバコに私はなりたいって変だけどそう思ったんだ、私は彼に見惚れて、一日を過ごした











俺はこの夜の中で、一日色んなことを経験した、ただ何処か罪悪感を憶えながら、俺は誤魔化すように吸った、この煙がきっと俺の道を教えてくれるんじゃないかって


「俺は弱いさ、ばーやまより、責任がない俺にはな」

俺は彼女の寝顔を見てそう思った。俺より強いものを彼女は持っている

俺も

「強くなりたいさ」

窓の外の月は満月で満ちていた。

ばーやまと同じように



第7話へ続く





















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