対 藤枝中央女学園のミーティング

清雅との試合が終わり、午後から始まる別ブロックの試合を観戦した。

その後、学校に皆で戻り、空き教室でミーティングを始める。


「次の対戦校は藤枝中央女学園だ。 3回戦の草薙南との試合で10対0の圧倒的の点差コールドゲームで勝利した」

「5回までに10点を叩き出した打撃力。さすが、全国大会に出場するほどの強豪校ね」

「ああ。だが、明日は私たちが勝つ。 そのためには明日はメンバーを少し変更する。 水瀬麗菜を左翼手レフトで使いたい」

「私ですか?」

「ああ。打撃力があるから攻撃面の強化になるが、一番の理由は別だ。 明日の試合は一年の投手である二人を登板するつもりだ。華恋はリリーフとして二人を支えてほしい」

「はい!」

「明日は試合に出れるんだねっ!楽しみだね、レイちゃん!」

「ふふっ、そうだね」

「ちょっ、はしゃがないでくれる?」

「綺羅を登板するにあたって、捕手は水瀬がやるんだろ?」

「そうですね」

「なら外野手を頼めるか?」

「分かりました。セイちゃんのためですから、外野手の練習をします」

「助かる。チームとしては、彩希の打撃力は必須だからな。 それと、高橋」

「は、はいデス!」

「高橋には、練習や試合でも水瀬のフォローを頼みたい」

「任せてくださいデス!」

「次は明日の登板についてだ。 明日の先発は七草、5回から綺羅で行こうと思うがどうだ?」

「綺羅じゃなく、ウチが先発でいいんですか?」

「たしかに二人共先発としての適性があるが、後半での抑えとして決め球となりえる綺羅のスプリットを使いたい。 それに七草はスタミナと制球力コントロールが高く安定しているからな」

「分かりました。ウチ、めいいっぱい頑張ります!」

「私も先発なりかったなぁ」

「ねぇ、セイちゃん」

「ん?」

抑え投手クローザーや守護神って呼ばれるのも響きとしていいんじゃない?」

「守護神……!? 何か、カッコイイね!」

「だそうですよ、浅野先輩」

「う、うむ。助かった」


メンバー変更が終わり、次に打順の発表が始まる。


1番 三塁手サード 市森 夏美

2番 左翼手レフト 水瀬 麗菜

3番 一塁手ファースト 神園 渚沙

4番 捕手キャッチャー 芝井 彩希

5番 中堅手センター 高橋 ヴィクトリア

6番 遊撃手ショート 草野 晴菜

7番 右翼手ライト 片桐 由圭

8番 二塁手セカンド 岩原 莉恵

9番 投手ピッチャー 七草 奈菜


水瀬を2番に置いて、上位打者にする。

2番だった草野は6番に置いて、片桐が7番という結果になった。


「という打順だ」

「あぁ、私が6番になっちゃった。水瀬ちゃんの打撃力を見れば納得だけど……」

「草野先輩が務めていた分、頑張りますね」

「頼んだよ」


草野が水瀬の肩に手を置いて、意思を感じさせる。

どうやら、二人は納得したような感じだ。


「次は藤枝中央女学園の対策だな。といっても、静岡4強と呼ばれる強豪校だ、対策は難しい」

「一ついいでしょうか?」

「何だ、水瀬?」

「静岡4強?と呼ばれる高校と藤枝の注意する選手とかいますか?」

「注意するべき選手はこれから言おうと思ったが、その様子だとほかの高校を知らないみたいだな」

「そうですね、中学生のころも特に興味がなかったもので」

「それはまたすごいな……。 分かった、高校について教える」


そう言い、浅野は各校名を白板に書き出す。


「まず私たちがいるのは、中部地区だ。 中部地区では静岡4強の中の2校がある、先ほど言った藤枝中央女学園と梅ヶ島北農業高校だ。 次に西部は浜松西工業高校、最後は東部の伊豆東海竜高校だ」

「中部は激戦区だね……」

「他県に比べれば楽な方だと思うよ」

「まぁ、毎年各四校のいずれかが全国に行ってる。去年の私たちはその2校に敗れたからな」

「浅野先輩が居ても、敗れるんですね」

「そりゃ、私一人いても強豪校には、野球に自信があるやつが入ってくるからな。結局はチームの熟練度の差で負けるのさ。 だがしかし、今年こそ私たちが全国に行く。 今年のチームは去年よりもさらに強くなった、私含めてね」

「来年は私達も強豪校って呼ばれているかもね!」

「強豪校と呼ばれるには、何年も実績を積まないとね」

「まぁ注目はされるだろうな」


浅野と会話をしていると、芝井が資料を持って各部員に配布をする。


「まずは投手陣だな。3年生エースの白滝と2年生2番投手の薔薇ヶ咲だ。エースの白滝はフォーク系の下向きに変化する球を多様している感じだ」

「次は2年生の薔薇ヶ咲ね。本格的に起用し始めたのが秋季大会からで、変化球はストレート系?だと思うわ。 どれも球の軌道がストレートに似ているから、見極めは困難ね」

「二人共、とても強そうデス!」

「それぞれ異名持ちの投手だ。上位打者たちは、攻略を頼むぞ」

「異名? 何それ?」

「まぁ、選手たちの間で知られる有名選手だな。 異名持っていれば、対戦するとして最も注意するべき選手だと分かりやすくするためだな」

「因みに美香も異名持ちよ」

「おい、それは言わなくてもいいだろ……」

「なになに、聞きたい!」

「こういう時、ウチは綺羅のこと尊敬するわ」

「何でも興味津々で可愛いでしょ?」

「……」

「美香の異名は”強戦士バーサーカー”よ。勝負を楽しんで投球する様を見て付けられたみたいよ」

「くっ……」


二人の異名を紹介する。

3年生エース、白滝舞の異名は”流星”。

多彩な下方向の変化球で空振りを取る様で付けられた。

2年生投手、薔薇ヶ咲千歳の異名は”支配者ドミネーター”。

ほとんど1,2球の投球でアウトを取る様で付けられた。


「次に打者だ。このチームは全員レベルが高く、毎回レギュラーメンバーが入れ替わるほど競争率が高い」

「その中でも上位打者はかなり危険ね、4,5番は去年の秋からは不動で打順の入れ替わりがないほど実績と信頼があるみたい」

「特に5番の打者は危険だ。長打持ちで去年は6本も本塁打ホームランを決めているし、安打ヒット数も高い異名持ち打者だ」

「どうやら、5番打者は多少だけどインコースが弱いみたいね」

「なるべく、ゾーンに外れてもいいからギリギリを攻めるようにリードをしよう」

「そうね。華恋と七草は大丈夫だと思うけど、綺羅は……」

「難しいですね……」

「ひどいっ!私も制球力には自信ないけど、そこまでじゃないもんっ! 制球力もあること照明してあげるっ!」

「明日は試合だ、練習するなら10から20球までにしろ。水瀬、その管理を任せたぞ」

「分かりました」


他にも、注意するべき選手と苦手なコースだと思われる情報を話しながらミーティングが終わる。

明日は試合のため、軽く練習をする。

水瀬は外野手の練習で高橋が付き添い、片桐と外狩が外野フライや左中間にレフト前とランダムに球を飛ばす。


投手陣は綺羅が筋トレやタオルを持って投球練習シャドーピッチングを行い、芝井と七草はサイン合わせと軽く投球練習。

浅野は内野守備練習や内野陣の打者に球を投げるバッティングピッチャーを行う。


こうして、それぞれ明日の試合のために準備をした。

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