一日一編集『蝉は諦めるが蚯蚓が出張る。でも彼らは干からびた』

朶骸なくす

一番綺麗な私を

浜辺を歩きたいと言われて、江ノ島電鉄から観光名所を回り由比ガ浜を歩こうと提案した。

「やってみたいことがあるの」

白のワンピースと

少し高めのヒールで

「ヒールはダメだよ」と口に出す。

砂は沈む。上手く歩けなくなると言うと、

目を伏せてどうするか考えているようだった。

「こう、憧れって分かる?

 白のワンピースで少し高めのヒール。

 服の裾を広げて歩くの、貴方の前を歩いて

 少し背の高い私を見てもらいたいの」

「でも転んだら砂まみれだよ」

ありがたくも砂浜沿いには店が多いし、

頼めば砂まみれの服をどうにかしてくれるのは知っていた。それでも怪我は嫌だし、転ぶだけで台無しになる。

「今の私を見てもらいたいの、

 きっと一番綺麗な私だよ」

君は笑った。笑顔が綺麗だよ、言葉は飲み込んで砂浜の君に

「そうだね」と返した。

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