第46話、『あいつら』の侵略。(その4)
それというのも、本作において何度も何度も述べてきたが、現代日本のネット上で異世界転生系のWeb小説が作成されるごとに、それとまったく同じ世界観を持った本物の異世界が、実際に存在することが確定してしまうからして、何とその世界においては、小説のストーリー通りに異世界転生が行われて、現代日本から転生してきた『主人公』が、異世界人たちの迷惑をまったく顧みずに、イキリ倒し続けるなんて非常識なことが、本当に起こり得るのだ。
そんなことが何度も何度も現実化してしまっては堪ったものじゃない異世界側は、同じように『ナロタロ系絶賛アンチ小説』を大量に作成することによって、集合的無意識を介して現代日本のネットジャンキーたちを洗脳して、『ナロタロ系』作品に対するガチの『アンチ勢』に仕立て上げて、ネット上であることないこといちゃもんつけさせて、『ナロタロ系』作品を撲滅させようとしているわけなのである。
更に、『
これも同様に集団的無意識を介して、反乱部隊のメンバーを一人一人洗脳するわけだが、こちらは単なる『アンチ勢』のような捨て駒ではなく、事実上異世界転生をさせる形で『帝国騎士』として目覚めさせて、あくまでも自覚的に自分と同じ自衛隊員と戦わせるのだ。
──そう、すべては、たかがWeb小説のために、本当に自分たちの世界をむちゃくちゃにされてしまった、異世界人たちによる、『復讐』であったのだ。
……これでは、いかにも馬鹿げた『メタ小説』にしか、見えないだろう。
しかし、これほど恐ろしい『ホラー小説』も、他には無かった。
だって、一番軽い症状でも、異世界の思想に洗脳されて、自分ではあくまでも己の意志として、ネット上で何の意味も無いアンチ活動をし始めて、人の恨みを買うばかりか、人生の貴重な時間を散々無駄にしてしまうんだよ?
しかしそれでも、『異世界転生』モドキに、見舞われるよりもましであった。
仮にこれが、周辺諸国のスパイによる、工作活動でしかなかったら、まだ救いがあったろう。
なぜなら、警察官や自衛隊員は、徹底的に身元調査が行われるので、外国勢力やその影響下にある人間が潜入することは、ほぼ不可能なのであるが、
──それが異世界転生による、事実上の異世界人化では、話が大きく違ってきた。
何せ、自分の周囲の人間が、まったく何の予兆もなく、突然異世界人となって、危害を加えてくるかも知れないのだ。
それは、警察官でも、自衛官でも、変わりは無かった。
つまり、たとえ大事故が起こったり、テロが起こったり、武装蜂起が起こったりしても、それを取り締まる者も、一般民衆を助ける者も、誰一人いなくなるし、
そして何よりも、たった今までも味方と思っていた者が、何の前触れもなく敵になるかも知れないのだ。
しかも何と、その騒動のために傷ついて病院に収容されたとしても、状況は何ら好転しなかった。
だって、警察官や自衛官が異世界人になってしまうのなら、医者や看護婦がそうならないとは、限らないではないか?
──そうなると、もはやこの世は、地獄以外の、何物でも無かった。
それもすべては、異世界人の立場を何ら考慮に入れず、ただただ『現代日本人マンセー』な、『ナロタロ系』の作品ばかりを大量生産してきたことの、報いなのだ。
そもそも、剣と魔法のファンタジーワールドである異世界の住人たちに、少々変わったスキルを手に入れただけの現代日本人ごときでは、勝ち目はなかったのだ。
よって、すべてのWeb小説家は、この現代日本そのものを『ホラー小説』にしてしまわないように、ちゃんと異世界人の立場も考慮した、真に現実的で理想的な異世界転生系のWeb作品の実現こそに、全力を尽くしていくべきであろう。
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