新しいパーティに




 宝物を仕分けし、山分けした後、ライラは不安げにたずねた。


「ところで、私は合格でしょうか?」


 コルヴォ達はあっけにとられた表情を浮かべたが、すぐ全員笑い出した。

「え、え?」

「不合格などあるものか、合格だ。これから宜しく頼む」

「や、やったー! ありがとうございます!!」

 ライラは嬉しそうに飛び跳ねた。


「他の売らない方がいいアイテムの管理をお願いできるかな?」

「はい! 喜んで!」


 ライラは嬉々として販売しないアイテムを魔法袋へと入れていった。


「……いいわねぇ」

「何がだレイナ」

「ライラちゃん、可愛くってすっごいいい! 素直だし!」

 レイナがにこにこと笑っているとにやけづらのグレイも近寄ってきた。

「そうそう、今まで俺等のダンジョン案内人は人種で差別してきたのに、あの子はそれがねぇな」

「ふふーん、つまり一番下だった僕に後輩ができたってことだな!」

「「いや、それはない」」

「なんで否定するのー!」

 グランの言葉に、レイナとグレイは顔を見合わせて。

「だって、」

「なぁ」

「「経験値はあっちの方が上すぎるだろ(でしょう)」」

「そ、そういえば!」

 グランが頭を抱えたのを見て、レイナとグレイは笑い合った。



「今日は久々に稼げた、と言う事で──」


「「「「乾杯!」」」」

「か、かんぱーい……」

 食堂で、ルナティックの全員が嬉々として酒や果実水を飲んでる中、ライラは居心地わるそうにしていた。

「ライラ、もしかして君は宴にも呼ばれなかったのか?」

「は、はい」

「……今日からは君もいれて盛大に祝うぞ」

「ほらほら、食べて食べて──」

「わわわ」

 盛大に祝われて、ライラは驚きながらも嬉しそうに食事をした。





「ここが俺達の家だ」

 宴が終わり、ルナティックのホームにライラは案内された。

「わー……!」

 屋敷というには少し狭めの家に招かれ、ライラは周囲を見渡しうずうずとしはじめた。

「な、何か?」

「あの、少し改良しても良いですか?」

「構わないが……」

「ひゃっほーい!」

 ライラはそう声を上げて台所へと向かっていった。


 台所の器具を魔法袋から取り出して改良魔術を使う。

 すると、つまみをひねると火がつく台所に、綺麗な水が出る水道に、まぁ、色々と早変わり。


 風呂場もスイッチを押すとちょうどいい温度のお湯が出てくる使用に早変わり。


 貯水タンクも常に綺麗な水をため込んでいる状態。


 各部屋も一カ所を除いて薄暗い部屋が明るい部屋へと変わっていった。


「すごい! 案内人ってこんなこともできるの?」

「いえ、多分私だけかと。案内人の主な仕事はダンジョン案内ですから」

「ところで、何でリーダーの部屋だけ手をつけなかったんだ?」

「あ、その……リーダーですし、どこまで手をつけたらいいか話し合って相談したほうがいいかなって」

「分かった、じゃあ部屋へ来てくれ」

「はい」

 ライラはコルヴォの部屋へと向かった。


 小綺麗な部屋だが、分厚いカーテンで覆われ、棺桶がそこにあった。


「ふむ、じゃあ月の光を明かりにした方がいいですね」


 ライラは魔法袋から、月の形をした明かりを取り出し、天井につるした。

 そしてカーテンも、太陽光が一切入らない物へと変更し、棺桶の位置も調節した。

「こんな感じでいいですか」

「ああ、助かる。……初めてだ、こんな明るいのに苦しくないのは」

「ブレスレッドの効果と、この明かりの効果がありますからねー」

「この明かり消す場合は」

「ああ、『明かりを消して』」

 ライラがそう言うと明かりが消えた。

「『明かりをつけて』」

 続けて言うと明かりがついた。

「これでいいです、他の所も似たような感じなので連絡しますね」

「ああ、助かるよ」

「では」

 ライラはそう言うと出て行った。





 ライラがいなくなると、コルヴォは椅子に腰掛け机の上で腕を組む。

「とんでもない少女だな……それを追放する……いや馬鹿にし、無下に扱うとは愚か者が……」

 呆れと怒り交じりの声で呟いた。





「ライラちゃーん♪」

「はひ?!」

 レイナはにこりと笑って部屋でごそごそと何かをしているライラに声をかけた。

「お、脅かさないでくださいよぉ」

「ごめんなさいね、ノックしても返事が無かったから……何をしているの?」

「ダンジョンに入る準備をしているんです。『ダンジョン案内人は命綱だ、だから何が起きても大丈夫なようにしておけ』と、師匠に言われてたんです」

「……真面目なのね」

「皆さんの期待を裏切りたくないんですよ」

「ううん、もう十分貴方は私達の期待に応えているよ」

 レイナはライラを抱きしめた。

「そ、そんな事ないですよ」

「あーあ、貴方の事悪く言った連中、私直々にぶちのめしたいわ」

「い、いいんですよ! もう、関わりたくないですし……」

「本当にいい子ね……」

 レイナは少し悲しげにライラの頭を撫でた。





「はーい、皆さん、朝食ですー!」

 翌朝、お玉をカンカンと鳴らしながら、リーダーであるコルヴォ以外の部屋に入って起床を促す。

「うーん……まだ眠い……ん? いい匂い」

「美味そうな匂いがするなぁ」

「もしかして、ライラちゃん?」

「はい!」

 ライラはにっこりと笑って言った。

「冒険者さんは体が資本! ちゃんと食べてくださいね?」

 テーブルの上の朝食を見せてライラは笑った。


「このベーコン最高!」

「ちょっと! そのサラダと果物とスープは、私の!」

「いーじゃんかちょっとくらいー」

「まだまだありますから、喧嘩しないでください!」


「ずいぶん騒がしいな……」


「あ、リーダーごめんよ」

「コルヴォごめんなさい」

「わりぃなコルヴォ起こしちまって」

「いや、構わない」

「コルヴォさん食事は?」

「済ませてある、ライラ。君は?」

「皆さんが終わったら食べますよ、残った物を」

「それはいけないわ!」

 レイナが動き、椅子に座らせる。

「同じ仲間なんだから一緒に食事をしましょう、今日からは」

「は、はい……!」

 レイナの言葉にライラは嬉しそうに笑った。





「コルヴォ、あの子の扱いなんだけど」

「何だ?」

 部屋にこもっているコルヴォに、レイナが声をかけた。

「前のパーティ『サンダーソード』だっけ? そこで本当扱いが悪かったんじゃないかしら」

「俺もそう思う」

「だから、あの子が連れ去られないよう注意しないと」

「分かっている。グレイを護衛につけよう」

「私も護衛になるわ」

「助かる」

 レイナはふぅと息を吐いた。

「それにしても、あの子相当不遇な扱いを受けてたんじゃ無いかしら」

「だろうな」

「あのこレベルなら国宝級の存在よ、国が調べる時に派遣する位のスキルと経験の持ち主だわ」

「経験以上に才能だな」

「ええ、ダンジョンに入って一瞬であそこまで把握するんだもの、普通の案内人なら自分の周囲半径500メラ位か、最大四フロア位しか把握できないって聞いたわ」

「それを考えると、足を踏み入れただけでその階層と、どちらに行くのが正解か、正解行動は何かを知る彼女は飛び抜けすぎているな」

「ええ、取りあえず今は屋敷にいるから、買い物に出るときは一人で出ないように行ってくるわ」

「そうしてくれ」

 レイナはそう言って、コルヴォの部屋から離れた。






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