手紙と放課後

 四月二日


 

 太陽が元気に顔を出している中、開始二時間もしないうちに学院が終わり、僕たちは帰ることになった。



 日本の高校に通っていた僕は、ほんの少しだけ違和感を覚えながら、昨日同様…今日もみんなで仲良く帰るのかなって思い、ゆっくりと帰宅準備をしていた。



 ——やけに…慌ただしく扉を開閉する音とそれに付き従う足音が聞こえてくるのは気のせいだろうか?




 そんな若干の内心の不安を抱えながらも、りっちゃん先生に配られた資料を鞄に入れ終え、周囲を見渡すと、教室には誰もいなくなっていた。



 厳密にいえば違う…。僕の足元に沢山の小さな手紙が落ちていたのだ。首を傾げながらも、一つ一つの手紙を開いて読むために自分の椅子へと座る。

 


『愛する穂花へ

明日、テスト終われば、デートへ行きましょう!!なんなら、あたしの家で泊まろう!!』

 ——これは、よーちゃんだね。うん。



『私の穂花へ

明日…テスト終わったら…美味しいスイーツ屋さんに…いきませんか?…あ、あと…私の家、若干…古風な感じだけど、良ければ泊まって行きませんか?…………』

 ——これは、玲緒奈だね…。うん。そういえば…彼女自身は強いけど、普通の女の子に設定しているので、スイーツが好きなのも当たり前だね。




『黄泉穂花さんへ

明日テストが終わり次第、穂花さんの家へとお邪魔していいですか?是非、恋バナを咲かせましょう。もちろん…大切なお二人も交えてですよ?あ、それとも…梓をご指名ならば…喜んで』

 ——僕達の関係を分かってて書いてるだけに、すごく助かるなぁ…。



『黄泉穂花へ

 …ふんっ!!なんか、お前に手紙を差し出すのがこのクラスの風習らしいな。お前がここのボスか?』

 ——わざわざ、空気読んでくれてありがとう?それと僕はボスではないよ…? ううん。例えボスだとしても、悪いボスじゃないよ…!!



『黄泉穂花さんへ

可愛い女の子知りませんか?』

 ——僕のよーちゃんから、直ぐに乗換するような男に紹介する女の子はいない!!…にしても、山田君の設定はただのモブだったはずなのに、いつの間にチャラくなってしまったんだろうね…。うん。



『すげ〜可愛いな〜へ

一緒に街の中のすげ〜をみに行きませんか?』

 ——少しだけ気になったけど、遠慮するね?




『女の子大好きへ

呑まなきゃやってらんねぇ!!』

 ——否定できないのが悔しい…!!



「なんでわざわざ、全員手紙を残していくのぉ!!最初の三人まではわかるよ?うん。でも、他の四人はいらないでしょ!!……少し寂しいじゃん」




 僕が叫んだのと同時に…斜め横から教室の扉を開く音がしたので、思わず振り返る。




「あら…黄泉さん、残ってらっしゃったんですね? ちょうど二人きりですし、お話しませんか?」




 放課後の見回りにきたりっちゃん先生と手紙を全て読んでしまったせいで、かなり時間が経ってしまっていたのか、鉢合わせてしまった。




 彼女は何故か…教室を照らしていた太陽にカーテンをする事で隠した後、その足で僕の机の前に来た。




 りっちゃん先生は、色々仕事をやってきたのか汗をかいており…それが少し色っぽくて目を逸らす。




 ——お、男だから、仕方ないよね!!生理現象…

『む…今時、胸で興奮する男のが珍しいのじゃ。主は紛れもなく…童帝じゃ』

 ——なんか字が違う気がするけど…後でいいや!!




「ふふふ…黄泉さんは、大人の女性でもいけますか?生徒の前では、舐められてはいけないので、貴方を叱ったり、保護者に連絡したんですけど、もし、あれが——私情のまま動いてたら、貴方は私をどう思いますか?」





『主よ…!!このりっちゃん先生とやらを堕とすチャンスじゃ。妾の勘じゃが…恐らく、主が彼女を入学式初日の時に、折れたチョークを使って、彼女の失態を笑顔で払拭したときじゃ。妾でも、あんな失態をした後に、安心と笑顔を届けられれば、キュンときてしまうのじゃ』

 ——アフロディーテのデレとか誰得…

『妾と戦争をしたいみたいじゃの?』

 ——ほぉ、僕に勝てるとでも?

『妾の姿を見れば、勝てるとも…!!じゃ…じゃが、今日は少し腰が痛むのでな…主も精進するのじゃ』



 相変わらず、アフロディーテとの時間は、話が弾むせいか…時を忘れてしまっていけないなぁ。



 僕は、不安そうしているりっちゃん先生の表情を確認した後、優しい口調で彼女へと語りかけた。



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 誤字脱字がございましたら、即時訂正いたします。フォロー、レビューを頂けますと、モチベーションにつながります。アフロディーテの語尾が忘れていたので修正を加えました。

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