第66話

 ――深夜2時。


 辺りを注意深く警戒しながら、何者かが蝋燭ろうそく小屋の引き戸をそっと開く。


 密室の謎が破られて更に被疑者が逮捕されたことで、事件現場の封鎖は解かれ、見張りの警官の姿も今はない。


 犯人が証拠隠滅を図るなら、この機を逃す筈がなかった。


「そこまでだ!」


 暗い小屋の中で息を潜めて隠れていた小林こばやしこえが、何者かに懐中電灯を向ける。


 そこには眩しそうに目を細める日浦ひうらわたるの姿があった。


「……お、お前たち、ここで何をしている!?」


「それはこっちのセリフですよ、日浦亙さん。貴方はまんまと私が仕掛けた罠にかかったのです」


 入口から桶狭間おけはざま警部と雨宮あまみや老人が現れる。


「なッ!?」


「まァ、そういうことです。日浦さん、事件解決の為一芝居打たせて貰いましたぞ」


「……これは一体どういうことだ!?」

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