第52話
「二人とも、その場から動くな」
僕は
まずは状況を整理しよう。
マスターキーで内側から鍵が掛けられていた水の間を開けたのは23時頃。三人で中に入ると、五秒の停電が起きる。電気がつきベッドを確認すると、まりあは胸から血を流して何者かに殺されていた。
つまりこれは、密室殺人ということになる。
僕はポケットからスマホを取り出して、警察に連絡する。それから、スマホのライトを元と結麻に向ける。
「……
「警察が到着するまでまだ時間がある。それまでにまた停電が起きて、証拠を消されたんでは困るんでね」
「まさか、私たちの中に犯人がいるとでも言うつもり?」
「その通り。犯人は塊原か元のどちらかだ」
「そんな……!?」
結麻は信じられないものでも見るみたいに大きく目を見開いた。
「……本気で言ってる?」
「ああ、二人のどちらかが犯人なら色々と説明がつくことが多い。君は火の間で脅迫状を見つけた元を疑っていたようだけど、よく考えれば館の持ち主である塊原にも脅迫状をマントルピースに仕込むことは可能だ」
「待って、まりあが水の間に入ってから私と哲平君は常に一緒だったじゃない。それなのに、どうやって私がまりあを殺せるの?」
「ああ、普通に考えれば塊原にはアリバイが成立していることになる。一方、元は鰤岡を介抱しながら一緒に水の間へ入って行った。鰤岡を殺す時間は充分あっただろう」
「待てよ。水の間は内側から鍵が掛けられていたんだぞ。俺が鰤岡を殺したって言うなら、どうやって密室を作ったって言うんだよ?」
元が納得がいかないと言った様子で
「……確かにな。
つまり、どちらが犯人だとしても謎は残るということだ。
――犯人はアリバイトリックを使ったのか?
――それとも、密室トリックを使ったのか?
そのとき、館の中にチャイムが響き渡る。
「どうやら警察が到着したみたいだな」
警察は一階の玄関の前に来ているようだった。
「二人とも、スマホでお互いを動画撮影しろ。もし不審な動きをしたら、そっちが犯人だ。後で確認する」
僕はそう言い残して、水の間を出て一階へ移動する。
玄関のドアを開けると、男女の二人組が立っていた。
しかし、どう見ても刑事という感じには見えない。男の方は黒の革ジャンを着た背の高いヒョロリとした青年で、女の方はベリー・ショートの髪の中学生くらいの少女だ。
「……どうも、夜分遅くにすみません」
男の方が頭を搔きながら申し訳なさそうに言う。
「あのゥ、よかったらトイレを貸して戴けないでしょうか?」
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