第14話
「どうした
「……いや、どうしたっていうか」
どうして小林さんが理科準備室の鍵を持ち歩いているのか?
そんな疑問を抱きつつ、私は言われた通り中に入って扉を閉める。
棚には実験で使う道具や薬品が整然と並べられている。人体模型に、教師のものであろう白衣が掛けられているのがシュールだった。
「あの、この場所は?」
「これまでに殆ど話したことがない
「……はァ」
もはやどこから突っ込めばいいのかわからない。
前々から思っていたが、小林さんは少し変わっている。
「もしかして、愛の告白の方だったか? それならばここでは
「わーッ! 違う違うからッ!」
「……ふむ、そうか」
小林さんは私が慌てふためいている間も終始平然としていた。
前言撤回。
少しではない。かなり変わっている。
私は咳払いをしてから、いよいよ本題に入る。
「……今朝、図書室の窓から裏庭の
畑の様子は、それはもう凄惨なものだった。丸々と実っていた西瓜が、一つ残らず破壊し尽くされていたのである。
「それで小林さんに相談したいんだけど、犯人はどうしてそんなことをしたんだと思う?」
「さてな。ただの
「……うん。そうだよね」
それはそうだ。学校で育てていた西瓜が壊されていても、悪戯か嫌がらせと考えるのが普通だ。
しかし、私は言いようのない不安を感じていた。
「ところで何故そんなことが気になるんだ? 壊されていた西瓜は大崎にとって、何か思い入れがあったのか?」
「別に、そういうわけじゃないんだけど……」
静寂。
「ごめん、やっぱりこの話は忘れて……」
私が言いかけたとき、小林さんはスマホでどこかに電話をかけていた。
「
小林さんはそれだけ言うと、一方的に通話を切ってしまう。
「……えっと、今のって?」
「私の仲間だ。うだつの上がらない奴だが、少しは役に立つ」
「…………」
確か、小林さんは有名な探偵の元で助手をしているという話だった。ということは、さっき電話していた相手は……。
「小林さん、私そんなにお金なんて払えないけど……」
「初回お試しキャンペーン中につき、今回の料金はまけといてやる。それより大崎、一度現場を見ておきたい。畑まで案内してくれ」
そして私たちは薄暗い理科準備室を出て、裏庭の西瓜畑へと向かった。
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